【為替本日の注目点】米6月の雇用統計予想には届かず

ドル円は雇用統計発表前にも下値を試す動きだったが、発表後にドル売りが一段と加速。142円07銭まで売られ約2週間ぶりのドル安を付ける。ドル安が進み、ユーロドルは1.0973まで反発。株式市場では3指数が3日続落。ダウは187ドル売られ、3万3700ドル台に。債券は5日続落。長期金利は一時4.09%台まで上昇。金は大幅に反発し、原油も大幅高。
6月失業率 → 3.6%
6月非農業部門雇用者数 → 20.9万人
6月平均時給 (前月比) → 0.4%
6月平均時給 (前年比) → 4.4%
6月労働参加率 → 62.6%
ドル/円 142.07 ~ 143.40
ユーロ/ドル 1.0875 ~ 1.0973
ユーロ/円 155.28 ~ 156.36
NYダウ -187.38 → 33,734.88ドル
GOLD +17.10 → 1,932.50ドル
WTI +2.06 → 73.86ドル
米10年国債 +0.032 → 4.062%
【本日の注目イベント】
日 5月国際収支・貿易収支
日 6月景気ウオッチャー調査
中 6月消費者物価指数
中 6月生産者物価指数
英 6月消費者物価指数
英 ベイリー・BOE総裁講演
米 5月消費者信用残高
米 バー・FRB副議長、討論会に参加
米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁講演
米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演
米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演
加 5月住宅建設許可件数
6月の雇用統計が市場予想に届かなかったことからドル円は売られ、6月22日以来となる142円07銭までドル売りが進みました。筆者は7日(金)の本稿で、「前日のADP雇用者数を受け2時間足までの短期のチャートでは売りシグナルが出ましたが、急速に戻しています。ただ、日足ではMACDが『デッドクロス』を示現している点には注意していますが、それでもまだプラス圏でのクロスです。一応念のために」というコメントを残しました。また、「ADPは民間部門の雇用統計で、必ずしも今夜の雇用統計とは一致しないケースが多く見られます」とも記述しましたが、結果はADPとは大きく異なっていました。
6月の失業率は「3.6%」と、5月よりも低下していました。ADPでは予想の2倍を超える結果の雇用者数でしたが、非農業部門雇用者数(NFP)は市場予想の「23.0万人」に対して、「20.9万人」でした。さらに5月分も速報値の「33.9万人」から「30.6万人」に下方修正されています。「今回の雇用統計は、高金利と数カ月にわたる消費低迷で景気見通しに対する懸念が生じる中、労働市場が幾分か勢いを失いつつあることを示唆している。ただ労働市場はなお十分健全で、賃金の伸びも底堅く、FOMCは7月会合で利上げを再開する可能性が高そうだ」とブルームバーグは伝えています。筆者も同感で、6月のNFPが市場予想を下回り、前月分も下方修正されたものの、これまでが異常なほど好調だったわけで、これで「巡航速度」に戻ったとも言えます。そのため、労働市場も含めて景気に急ブレイキがかかったとは判断できず、今月のFOMC会合での利上げは動かないと見ています。市場は今後9月以降の会合で追加利上げがあるのかどうかを探ることになります。ただ、ブルームバーグの記事の中で「U6」と呼ばれる不完全雇用率が昨年8月以来の高水準に上昇している点には注目しています。これは、経済的な理由からパートタイムでの仕事を余儀なくされている労働者の数を表しており、「U6」にはフルタイムでの雇用を望みながらもパートタイム職に就いている労働者や、仕事に就きたいとは考えているものの、積極的に職探しをしていない人が含まれているとされています。人手不足がピークを過ぎ、徐々に求人件数の鈍化につながってくるのかどうかといった点が注目されます。
シカゴ連銀のグールズビー総裁はCNBCとのインタビューで、雇用統計について「より持続可能なペースになりつつある。インフレにとってはこうした動きが必要だ」と述べ、「現時点における米金融当局の最優先目標はインフレを押し下げることで、われわれはそれに成功する。リセッションを起さずにそうすることが勝利となる。それは『黄金の道』で、その道を進んでいる感触を私は持っている」との認識を示しています。言うまでもなく、今回の単月の雇用統計の結果だけで、米景気が十分抑制されてきたと判断することはできません。引き続き労働市場の動向と、消費者物価指数の推移を見極める必要があります。
ドル円は142円台前半まで売られたことで、「4時間足」までの短いチャートでは下落傾向を示してきました。「相場の基本」であると考える「日足」がそのような傾向を示すにはさらなる下落が必要ですが、目先は140円台を維持できるかどうかがカギの一つでしょう。「140―145円の水準ではいつ実弾による介入があってもおかしくはない」とも筆者は書きましたが、145円台を一瞬付けてから下落に転じてきた様相は、昨年10月にピークを付けその後ドルが急落した動きを彷彿させます。
本日のドル円は141円50銭~143円30銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は雇用統計発表前にも下値を試す動きだったが、発表後にドル売りが一段と加速。142円07銭まで売られ約2週間ぶりのドル安を付ける。(イメージ写真提供:123RF)
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2023-07-10 10:00