【為替本日の注目点】米CPIを受けドル円138円17銭まで下落

ドル円は大きく下落。米6月のCPIが予想を下回ったことで米金利が急低下。ドル円は139円台前半から138円17銭近辺まで急落。ドルが売られたことでユーロドルも急伸。一時は1.1141までユーロ高が進み、2022年3月以来となる高水準を記録。株式市場はCPIの低下を受け3指数が3日続伸。債券は大幅高。長期金利は3.85%台まで低下。金は大幅に続伸。原油も続伸し約5週間ぶりに75ドル台に。
6月消費者物価指数 → 3.0%(前年比)
ドル/円 138.17 ~ 139.64
ユーロ/ドル 1.1015 ~ 1.1141
ユーロ/円 153.22 ~ 154.28
NYダウ +86.01 → 34,347.34ドル
GOLD +24.60 → 1,961.70ドル
WTI +0.92 → 75.75ドル
米10年国債 -0.113 → 3.857%
【本日の注目イベント】
中 中国 6月貿易収支
欧 ユーロ圏5月鉱工業生産
欧 ECB議事要旨(6月会合分)
欧 日EU首脳協議(ブリュッセル)
中東 OPEC月報
英 英5月鉱工業生産
英 英5月貿易収支
米 新規失業保険申請件数
米 6月生産者物価指数
米 6月財政収支
米 ウォラー・FRB理事講演
米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、CNBCのインタビュー
6月の米消費者物価指数(CPI)は事前に予想されていたように大きく低下していました。CPIの下振れを受け139円台前半で推移していたドル円は急落し、一時は138円17銭前後までドル安が進んでいます。昨日の東京市場でも円安と株高の修正が大きく進み、これまでの流れが一変しています。NYでもCPIの低下を受けリスク資産の株だけではなく、安全資産の債券も大きく買われ、さらに金も買われています。中国景気の減速懸念を背景に5月には63ドル台まで売られたWTI原油価格も、昨日は75ドル台まで上昇しています。インフレ率の低下で景気抑制的な政策は終焉を迎えるといった見立ての様です。
6月の総合CPIは市場予想の「3.1%」を若干下回る「3.0%」(前月は4%)。コアCPIも市場予想の「5%」に対して「4.8%」(前月5.3%)と、いずれも低下しています。米インフレのピークは昨年6月の「9.1%」でした。FRBは昨年3月から急激な引き締め政策に舵を切り直しインフレとの闘いを続けてきましたが、ちょうど1年で3分の1まで低下してきたことになります。FRBの目標である2%まであと1%ということになりましたが、それでも今月25-26日のFOMC会合での利上げは動かないところでしょう。
6月のCPIの結果を受け、リッチモンド連銀のバーキン総裁は、「インフレ率は高過ぎる。われわれの目標は2%だ」と述べ、「手を引くのが早すぎればインフレが再び強まり、そうなれば米金融当局はさらなる行動が必要になる」と発言し、ここで手綱を緩めることはないとの認識を示しました。またブレイナード米国家経済会議(NEC)委員長は12日、エコノミック・クラブ・オブ・ニューヨークでの講演で、「リセッションがすぐそこまで来ているとの予想が繰り返されているが、米国の景気回復は堅調で、インフレ率は低下している」と語り、その上で、「著しい雇用破壊が伴わなければインフレ率は下がらないとの予測が覆されている」と発言しています。この講演はCPI発表の数時間後に行われたもので、ブレイナード氏は、「これらの経済的利益は偶然に生じたものではなく、熟慮された戦略がなければ維持することはできない」(ブルームバーグ)と述べており、FRB副議長だった時の発言よりもやや、政権寄りの発言になってきたという印象です。
ドル円は140円の節目を何の抵抗もなく下抜けし、昨日のこの欄で触れた138円33銭の重要なサポートも抜けていますが、この直ぐ下に日足の一目均衡表の「雲の入口」が控えているため、138円17銭前後では一旦下げ止まっています。これで6月30日の145円07銭からは6円90銭も急激に円高が進んだことになります。昨日の結果に一番喜んでいるのはパウエル議長で、2番目に喜んでいるのが神田財務官かもしれません。
さて、足元では一気に「ドル安・円高」局面に変わってきましたが、この先の下値のメドですが、先ずは137円85銭近辺で、これは日足の120日移動平均線(EMA)がある値位置になります。その下では137円30銭前後に「週足の雲の入口」があることから、この辺りがサポートされそうです。市場のセンチメントも大きく円高方向に傾いています。今後の展開では以下の2つが重要なカギになります。1つは25-26日のFOMC会合で0.25ポイントの利上げを行った後のパウエル議長の発言です。パウエル議長は先月22日に行われた議会証言で、「政策金利が適切に景気抑制的な水準に既に引き上げられていたとしても、経済がほぼ予想通り推移するならば、政策当局は年内に再び、恐らく2回の利上げを行うことが適切になると感じている」と述べています。また、前日の証言では利上げについては、「年末までに幾分(somewhat)」といった表現でしたが、22日には「Perhaps twice」(おそらく2回)といった言葉を使い、より具体的な回数に言及していました。CPIの低下を受け、議長が依然として同じような認識を維持しているのかどうかが焦点になります。7月会合で利上げを行い、その後その効果を見守るといった姿勢を示すようだと、ドル円は135円方向を目指す可能性が高いと予想されます。もう一つは言うまでもなく27-28日の日銀金融政策決定会合で何らかの動きが
あるのかどうかです。今回の急激な円高は、日銀が修正に動く可能性があるという観測が大きな理由になっています。昨日の債券市場では10年債がさらに売られ、長期金利は0.475%前後まで上昇し、日銀の動きを織り込む形となっています。逆に言えば、「政策据え置き」が決定されればドルが大きく値を戻し、日経平均も大きく上昇すると予想されます。結局は今後日米金利差が縮小するのかどうかがカギになります。7月もまだまだ「暑い夏」は続きそうです。
本日のドル円は137円30銭~139円50銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は大きく下落。米6月のCPIが予想を下回ったことで米金利が急低下。ドル円は139円台前半から138円17銭近辺まで急落。(イメージ写真提供:123RF)
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2023-07-13 10:00