米国最大のアクティブETFに投資するファンド、SBI岡三アセットが米国株投資の新しい手段を提供

 米国最大規模のアクティブETFに投資できる投資信託が誕生した。SBI岡三アセットマネジメントが7月5日に設定した「米国株カバードコール戦略ファンド/JPモルガン・米国株式・プレミアム・インカムETF」は、米J.P.モルガン・インベストメント・マネージメント・インクが設定運用する「JPモルガン・米国株式・プレミアム・インカムETF(JEPI)」を主要投資対象とした投資信託だ。米国でアクティブ運用を見直す動きが強まる中、安定的なパフォーマンスを記録する「JEPI」への注目度が高まり、設定からわずか3年間でアクティブ運用のETFの中で最大の資産残高を誇るETFに成長した。SBI岡三アセットマネジメントのマルチアセット運用部ポートフォリオ・マネージャーの石野莉奈氏(写真)に、新ファンドの特徴と魅力について聞いた。  ――新ファンドの運用の特徴は?  「米国株カバードコール戦略ファンド/JPモルガン・米国株式・プレミアム・インカムETF」は、残高が4兆円程度に上る米国最大のアクティブETFである「JPモルガン・米国株式・プレミアム・インカムETF(JEPI)」を高位に組み入れることによって、「JEPI」と同程度の運用効果が期待できます。米国で人気の高い「JEPI」に円建てで手軽に投資することができます。  「JEPI」は2020年5月に設定された比較的新しいETFですが、ディフェンシブな銘柄を中心としたポートフォリオで安定的な運用を行いつつ、コールオプションを売る「カバードコール戦略」によってインカム収益を上乗せします。株価上昇に一定程度追随しつつ、高いインカムゲインを得られるということで、投資家の注目を集めています。  特に、2022年の米国政策金利の急速な引き上げとその後の大きな株価の下落によって、今後の米国株式市場の行方に強気になりきれないと考える方には、「JEPI」のような相対的に下落局面に強いポートフォリオが好まれるのだと思います。  ――「JEPI」のパフォーマンスについて教えてください。  「JEPI」は2020年5月に設定されましたが、2020年末までに18.59%上昇しました。同じ期間に米「S&P500」は28.70%の上昇率でした。そして、2021年には「S&P500」が28.71%上昇する中で「JEPI」は21.50%の上昇になりました。2020年のコロナ・ショック以降、2021年末までGAFAM(グーグル/アマゾン/フェイスブック/アップル/マイクロソフト)といわれたIT大型株が急速に値上がりするような市場では、「カバードコール戦略」によって株式の値上がり益を一部放棄している「JEPI」は、上昇率では「S&P500」を下回ることになりました。  一方で、2022年のような株価が大きく下落する展開になると「JEPI」の特性が発揮されます。2022年は、「S&P500」が18.11%下落したにもかかわらず、「JEPI」は3.52%の下落にとどまりました。「JEPI」の運用戦略は株価の下落局面では、その下落率を小さくする効果があります。  このような結果、足元にかけて設定来約3年間のトータルリターン(米ドル建て)は、「S&P500」が約59%の上昇率に対し、「JEPI」は約47%の上昇率になっています。上昇力という魅力を保ちながら、相対的に下落に強い運用を行うことによって、安定的に優れた運用成績を得ることができました。  ――「JEPI」の現物株式は、ディフェンシブな銘柄を中心に組み入れるアクティブ運用を行うということですが、具体的な銘柄選定の手法は?  米国最大級の規模と歴史のあるJPモルガン・チュース・アンド・カンパニーの運用会社であるJ.P.モルガン・アセット・マネジメントが銘柄を選別しています。具体的には、同社のアナリストによる投資対象銘柄(原則としてS&P500種指数構成銘柄となります)のリサーチに基づき、業種ごとにバリュエーション・ランキング(株価の割高・割安評価の順位)を作成します。それを活用し、銘柄の比率や業種の比率に制限を設けつつ、3~5年程度の相場サイクルにおいてボラティリティ(価格変動率)が低くなる銘柄の組み合わせを作ります。このように現物株式への投資にあたってはアクティブに銘柄を選別しています。「S&P500」のコールオプションを売却するカバードコール戦略を組み合わせても、ETFの運用コスト(経費率)は、年0.35%に抑えられています。  ――現物株式を保有しつつコールオプションを売るというカバードコール戦略を組み合わせることで、どのようなメリットがあるのですか?  現物株式の価格変動に関係なく、コールオプションを売ることによって得られるオプションプレミアムというインカム収益を得ることができます。たとえば、2023年4月末現在で「S&P500」の配当利回りが1.7%のところ、「JEPI」のインカム(配当金およびオプションプレミアムの合計)収益率は9.4%になります。これは、同じ時点の米国10年国債利回り3.4%や世界投資適格社債の4.9%を大幅に上回る他、新興国国債の6.5%や米国ハイ・イールド債の利回り8.4%をも上回ります。非常に魅力的なインカム収益力だと思います。このインカム収益が株価下落時にはクッションの役割をして相対的に下落率を低いものにしています。  もちろん、コールオプションを売ることによって、権利行使価格以上の株価の値上がりを放棄することになります。このため、想定を超えて株価が大きく値上がりした場合などは、その株価の値上がり分のすべてを収益に取り込むことができません。インカム収益力を高める代わりに甘受しなければならないデメリットになります。  ――「JEPI」が魅力的な投資対象であることはわかりますが、SBI証券などでは直接ETFとして「JEPI」を購入することもできます。投資信託として買うメリットはあるのでしょうか?  「JEPI」はニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場していて、米国現地の取引価格によって時価で購入することが可能です。これを投資信託にすることによって、刻一刻と変動する株価ではなく、1日1本の価格で購入することができます。タイミングを見て時価で買いたいという方もいらっしゃるでしょうが、毎日、基準価額でシンプルに取引ができることにメリットを感じる方は少なくないと思います。  また、米国ETFを購入するには、円から米ドルに交換して米ドルで購入する必要があります。その交換のタイミングによっても通貨の価値が変わってきますので、それを管理していくのは面倒な作業です。その点、この投資信託は円建て商品ですので、為替取引の面倒がありません。しかも、100円以上1円単位で購入・売却ができます。つみたて投資で定時定額でコツコツと資産を積み上げていくような運用には、ETFを直接購入するよりも、投資信託で購入することの方がメリットが大きいと思います。  また、ETFは毎月分配を出す仕組みになっていますが、当ファンドではその分配金を再投資することにしています。分配金を複利で運用するような仕組みによって長期的にトータルリターンを押し上げる効果が期待できます。  もちろん、投資信託にすることによってETFよりもコストは高くなります。当ファンドの信託報酬率は、「JEPI」の運用コスト(年0.35%)込みで当初1年間は年0.5348%(税込み)です。2024年6月11日以降は年0.6998%になります。ややコストが上乗せされているとは言え、米株のアクティブファンドの運用コストとして他と比較していただければ、かなり魅力的な手数料水準でご提供できていると思います。  また、SBI岡三アセットとしてファンドのモニタリングを実施し、日本語で運用報告のレポートを出します。日本の投資家の皆様にわかりやすい運用状況の報告を行っていきます。  ――どのような投資家に相応しいファンドでしょうか?  株式投資のリターンを求めつつ、あまり大きな価格変動は困るという方には、当ファンドのパフォーマンスは魅力的なものと感じていただけるのではないでしょうか。世界経済の中心的な存在として米国株式市場は、今後も豊かな成長が期待できる市場だと思います。その市場に相対的にリスクを抑えて投資する手段として当ファンドをご検討いただきたいと思います。  また、当社では、このファンドを第1弾として、海外のアクティブETFを組み入れた投資信託を「海外アクティブETFシリーズ」としてお届けする計画です。「低コストアクティブシリーズ」、「成功報酬型シリーズ」に加えて、この「海外アクティブETFシリーズ」も当社の看板商品として育てていきたいと考えています。ぜひ、当社が今後設定していきます新しいファンドにも注目していただきたいと思います。
SBI岡三アセットマネジメントの石野莉奈氏(写真)に、「米国株カバードコール戦略ファンド/JPモルガン・米国株式・プレミアム・インカムETF」の特徴と魅力について聞いた。
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2023-07-19 09:15