【為替本日の注目点】WTI原油価格9カ月ぶりの高値に

 ドル円は東京時間の午後には143円を割り込む場面もあったが、NYではドルが買われ143円75銭近辺まで上昇。米金利も低下し、ドル円が買われる材料は乏しかったものの、改めて日銀の金融緩和政策解除には時間がかかるといった見方がドルをサポート。ユーロドルは大きな動きもなく1.09台半ばから後半で推移。株式市場は3指数が揃って続落。ナスダックの下げが大きく、前日比162ポイント安で引ける。債券は小動きながら若干買われる。長期金利は4.0%台で推移。金は続落。一方原油は続伸し、およそ9カ月ぶりに84ドル台に。 ドル/円 143.25 ~ 143.75 ユーロ/ドル 1.0965 ~ 1.0995 ユーロ/円 157.26 ~ 157.90 NYダウ -191.13 → 35,123.36ドル GOLD -9.30 → 1,950.60ドル WTI +1.48 → 84.40ドル 米10年国債 -0.014 → 4.008% 【本日の注目イベント】 中東 OPEC月報 欧 ECB経済報告 米 7月消費者物価指数 米 新規失業保険申請件数 米 7月財政収支 米 ボスティック・アトランタ連銀総、イベントで挨拶 米 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁講演  米7月の消費者物価指数(CPI)の発表を控えている割には、ドル円の「軽快な動き」は続いています。ドル円はNYで米金利がやや低下しましたが143円75銭前後まで買われ底堅い動きでした。  今夜21時半に発表される7月のCPIは、総合で前月比「0.2%上昇」と、6月と同率。前年比では「3.3%上昇」と6月の「3.2%上昇」からはやや加速すると見られています。ただ、コア指数では前年比「4.7%上昇」と、6月の「4.8%上昇」からやや減速していると予想されています。従って、仮に予想通りの結果であったとしても、FRBが9月会合で追加利上げを実施するという論拠にはならないだろうというのが、現時点での市場のコンセンサスのようです。ただ、為替市場ではドルが買われ、株式市場では金利高に弱いナスダックが大きく続落しています。また、原油先物市場ではWTI原油価格が続伸しています。一時84ドル65セントまで買われ、昨年11月以来およそ9カ月ぶりの高値を付けました。「OPECプラス」の減産政策継続に加えて、ロシアとウクライナの戦闘がエスカレートする可能性があり、米国の備蓄在庫が500万バレル増加していたにもかかわらず上昇しました。さらに商品市況を見ると、欧州の天然ガス先物市場価格が急騰しているのも確認できます。一時は40%ほど急騰する場面もあったようで、乱高下を経て28%高で取引を終えています。こちらは、シェブロンおよびウッドサイド・エナジーのオーストラリア施設で働く労働者がスト実施を決定したことが材料になったようです。何れも、今後のインフレ率を押し上げる要因となることから、今後は商品市況にも目配りが必要になりそうです。  バイデン大統領は大統領令を発表し、一部の中国企業に対する米投資を制限することを決めています。半導体や量子コンピューティング、AI分野の一部の中国企業への米国の投資を規制する大統領令に署名しました。ブルームバーグは、「これは米国の安全保障上の脅威となる恐れがある次世代の軍事・監視技術を中国が開発する能力を規制しようとする取り組みの一環だ」と説明しています。  ロシア中銀は9日、年内いっぱい国内市場での外貨購入を停止すると発表しました。1年4カ月ぶり安値となる1ドル=100ルーブルに接近するなど、下げ止まらないルーブルを下支えする狙いがあるようです。ロシア中銀は発表文で、「この決定は金融市場のボラティリティー抑制が目的だ」と説明しています。ロシアでは長引く戦争の影響もあり、1-7月の経常黒字が252億ドルと急激に縮小(前年同期は1654億ドル)したことで通貨安が続いています。ルーブルは年初来、対米ドルで24%下落しています。欧州への天然ガスの供給停止など、対外貿易環境の悪化によるエネルギー収入の減少と、ロシア市民が外国の口座に資金を移す動きが続いていることなどが要因と見られています。  9月のFOMC会合で利上げを見送るかどうかは、基本的には本日のCPIを含めた今後のデータ次第ですが、上でも述べたように、市場の見方は「9月は、利上げはないだろう」との観測がやや優勢のようです。そんな中でもドル円は底堅い動きを見せていることから、仮に市場予想を超える結果が出た場合、ドルが145円方向を目指す可能性もあるかもしれません。商品市況を見れば、今後再び世界的にインフレ率が上昇するかもしれない「火種」はあります。これまで米国を中心に主要中銀は急激な利上げを行うことでインフレを徐々に減速させ、あと一歩というところまで成功させてきました。インフレが再燃すれば、さらに利上げを継続し、景気を「オーバーキル」させる状況にまで持っていく必要があるのかしれません。  本日のドル円は142円30銭~144円80銭程度と予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は東京時間の午後には143円を割り込む場面もあったが、NYではドルが買われ143円75銭近辺まで上昇。(イメージ写真提供:123RF)
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2023-08-10 10:15