世界で需要拡大が期待される「AI」と「原子力発電」にフォーカスしたETF、7月25日に東証にそろって上場

 グローバルXジャパンが設定・運用する2本のETF、「グローバルX AI&ビッグデータ ETF(223A)」と「グローバルX ウラニウムビジネス ETF(224A)」が7月25日、東証に上場した。グローバルXジャパンの営業第一部長の長谷川誠氏とアシスタント・ディレクターの宮本将圭氏に、新しいETFの特徴と魅力について聞いた。 ――「グローバルX AI&ビッグデータ ETF(223A)」の特徴と設定の狙いは? 長谷川 世界的に注目を集めるAI(人工知能)およびビッグデータ分析関連の事業を行う企業に幅広く投資します。関連事業を「AI開発」「AIベースのビッグデータ活用サービス」「AI関連ハードウエア製造」「量子コンピューター開発」の4つの分野に分類し、これら事業の関連度合いが高い企業を独自のアルゴリズムによって抽出します。そして、AI開発およびビッグデータ関連で60銘柄、AIハードウエアおよび量子コンピューターで25銘柄を選び、合計85銘柄程度でポートフォリオを構築します。  グローバルX(US)のニューヨークにあるリサーチチームは、破壊的なテクノロジー(Disruptive Technology)の将来性や成長率などを常に調査分析しています。新しい技術は「イノベーター」といわれる極初期の段階から、「アーリーアダプター」、「アーリーマジョリティ」、「レイトマジョリティ」、「ラガード」と段階を踏んで、成長ステージを上がるたびに市場規模も大きくなっていくという軌跡があります。たとえば、「水素」や「ブロックチェーン」などは「イノベーター」に位置付けられますが、「AI」は「アーリーマジョリティ」の段階に進んでいると考えており、これから市場が急速に発展するステージに入ったと考えています。  将来の成長が大きく見込まれる分野については、その関連企業をパッケージにしたETFを組成し、積極的に上場してきました。現在のところ、「AI(ティッカー:AIQ)」、「ブロックチェーン(BKCH)」、「ロボティクス(BOTZ)」、「サイバーセキュリティ(BUG)」、「クラウド・コンピューティング(CLOU)」など、テクノロジーに特化したETFを数多く上場させています。日本の投資家の皆様も、東証への上場を待たずにNYで上場しているETFを購入される方が増えています。その中で、日本から注文が多いETFのトップ3に入っているのが「AI」でもあったのです。日本の投資家の方々からの需要が非常に高いということも東証ETFに選定した重要な理由です。 宮本 AIは1956年から開発が始まりました。そのため目新しい技術というわけではありません。ただ、ディープラーニングといわれる機械学習の手法が使われ始めてからAIの学習能力は飛躍的に向上しました。2023年に一般公開された「ChatGPT」は生成AIといわれるように、自ら問いを作ってそれに答えるなど、新しいコンテンツを作り出すことができるようになりました。これによってAIの進化のスピードは加速し、今後10年以内にAIが個々の分野において人間の能力を上回る存在になると言われています。  AIが非常に注目されているのは、社会的ニーズをかなえる技術としての期待が高いからです。先進国で進む少子高齢化による「労働力不足」をAIで補うことが期待されています。また、「生産性の向上」について、たとえば、小売りで天候や前日の売上などのデータを活用して需要予測をし、最適な価格設定や在庫管理をAIが行うことが実際に稼働しています。また、AIによる画像処理を使ってメーカーが製品の不良品検知を行っています。これまで、人間が経験や勘で行ってきたことを膨大なデータを分析することによってAIが人間の代わりに実施しているのです。  また、生成AIの登場によって「新しい製品やサービスの開発」もAIが担うようになっています。そして、「生活の質の向上」を実現するために、たとえば、高齢者の生活補助、個々の能力に応じた学習指導などにもAIが活用されています。さらに、「地球規模の課題解決」といった、たとえば、気候変動のメカニズムの解明、貧困撲滅、エネルギー問題などでAIの学習能力が活用されるなど、様々な分野でAIが活用されているのです。関連産業の大きな成長が期待されています。  ――ETFのパフォーマンスの特徴は?  長谷川 「グローバルX AI&ビッグデータ ETF(223A)」は、現状85銘柄のAI関連企業に幅広く投資しています。AIの発展の可能性が幅広く、どの分野が最も大きな成長を遂げるのか特定ができない状況なので、関連企業に広く網を広げているのです。これに対し、たとえば、「グローバルX 半導体 ETF(2243)」は30銘柄に集中投資しています。「グローバルX USテック・トップ20 ETF(2244)」は時価総額が大きな20銘柄という成功している企業のみに集中投資しているのです。集中投資するのと、広く分散投資するのとでは、当然、パフォーマンスの出方に違いがありますが、AIのようにこれから大きく伸びる産業に投資するのであれば、広く網を張って株価が何倍にもなるような成長銘柄をいくつ獲得できるかという投資の楽しみに適うのではないかと思います。  現在、投信市場では、全世界株式インデックスである「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」に連動するインデックスファンドに人気が集中していますが、全世界の株式に幅広く投資すれば、当然、成長力の衰えた企業などもポートフォリオに入ってきます。世界経済全体の成長に投資するという考えは、いわゆる「コア・サテライト戦略」のコアの投資として重要ですが、サテライトの部分で、強烈な成長が期待される「AI」に関連する企業に投資するというようなETFも併せて持っていただくことで、投資に楽しみや豊かさが増えるのではないでしょうか。  ――「グローバルX ウラニウムビジネス ETF(224A)」の特徴は? 長谷川 地球温暖化が世界的な関心を高める中、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出が比較的少ない電力源として期待される原子力発電と、その燃料となるウランに関連する企業に投資するETFです。現在のポートフォリオは、ウランおよび原子力関連のビジネスを行う企業48銘柄で構成されています。  原子力発電による二酸化炭素排出量は化石燃料による発電と比較すると極端に少なく、太陽光発電や地熱発電、水力発電より少ない水準です。しかも、風力や太陽光など自然の条件によって発電量が左右される電源と比較して電力を安定的に供給できるという大きなメリットがあります。「核のゴミ」の問題などがあって、将来的には見直される発電方法かもしれませんが、当面は脱炭素を進める地球規模の課題解決手段として原子力発電の新設は大きな動きになると期待されています。  現在、世界全体では運転可能な原子炉が439基あり、建設中の原子炉が61基あります。また、従来の大型原子炉と比較して安全性が高いと考えられている小型モジュール炉(SMR)が注目され、現在、アルゼンチン、カナダ、中国、ロシア、韓国、米国で50基以上のSMRが建設中、または、認可段階にあります。2023年12月にドバイで開催されたCOP28(第28回気候変動枠組条約締約国会議)において、日本、米国、フランス、英国などを含む23カ国が「2050年までに2020年比で世界全体の原子力発電容量を3倍にする」旨の共同宣言を発表しています。世界的な原子力発電需要の拡大の背景になっています。  ――パフォーマンスに特徴はありますか?  長谷川 エネルギー関連産業であるため、景気が良い方が関連銘柄への評価は高まりやすいという側面はありますが、それよりも、ウラン価格の動向に連動しやすいという傾向が強いです。ウラン価格はウクライナやイスラエルでの紛争などといった地政学的リスクの高まりなどを受けて、価格上昇トレンドにはいっているようです。今後も世界的な原子力発電所の新設計画などによってウラン需要の拡大を背景として価格の上昇が見込まれます。  国内でウランに手軽に投資できる手段がないので、ウランの採掘企業から、原子力関連部品の製造を行う企業まで幅広く投資する当ETFにはユニークな価値があると思います。  ――組み合わせ投資などで相性の良いETF等は? 長谷川 先に紹介した「グローバルX AI&ビッグデータ ETF(223A)」が着目するAI産業は、莫大な電力を消費する産業としても知られます。AI産業が発展するほどに電力需要が増大し、原子力発電のニーズも拡大するという関係にあります。社会的なニーズを適えるという点では、AIも原子力発電も、それぞれに今の社会的ニーズに合致していますので、中長期的に力強い成長が期待できると思います。「グローバルX AI&ビッグデータ ETF(223A)」と「グローバルX ウラニウムビジネス ETF(224A)」がコア投資に組み合わせるサテライト資産として投資家の投資の一助となれば幸いです。(図版は、グローバルXジャパンから提供を受けたETFのイメージ)
グローバルXジャパンが設定・運用する「グローバルX AI&ビッグデータ ETF」と「グローバルX ウラニウムビジネス ETF」が7月25日、東証に上場した。(図版は、グローバルXジャパンから提供を受けたETFのイメージ)
economic,company
2024-07-25 00:30