レンジ相場の中で「逆張り戦略」に活路を=外為どっとコム総研

日米欧に当面は大きな金融政策の変更が期待されない中、為替市場にこう着感が強まっている。外為どっとコム総研の調査部研究員、石川久美子氏は、当面の外為市場について「ドル/円をはじめ、主要な通貨ペアはレンジ相場に入って大きなトレンドが狙いづらくなっている」と見通し、有効な投資戦略として「方向感が出てくるまでは逆張りで小刻みな利益を重ねていく姿勢が大切」と語った。(写真はサーチナ撮影)
――4月30日の日銀の政策決定会合で、当面の金融政策に変更がないということが決まり、一部で期待されていた日銀の追加緩和が見送られたという失望感もあるようですが、今後のドル/円相場の行方は?
日銀の黒田総裁は4月8日の会見で、「現時点では金融政策の変更は考えていない」ということを明言されていました。また、その後の経済指標でも目立って弱い内容のものもありませんでしたから、今回の追加利下げはないということが市場関係者のコンセンサスでした。株式市場関係者からは、株高につながる追加緩和待望論があったのかもしれませんが、株価が緩和期待で事前に大きく値上がりすることもなかったので、何もなかったからといって失望するほど強い期待があったということでもないと思います。
4月30日の会合後の記者会見で、黒田日銀総裁は景気について「増税の振れを伴うも、基調的には緩やかな回復を続けている」、「(物価上昇率の)2%達成時期が後ずれしているということはない」などと述べており、前回からの見方を変えた様子はありませんでした。つまり、よほど景気の下振れリスクが強く意識される状況にならない限り、追加緩和はなさそうです。
一方で、米国の金融政策についても、毎月の資産購入額を100億ドルずつ縮小していくという取り組みが、粛々と行われています。利上げに転じる時期を巡る表現を巡って、イエレンFRB議長が「(資産購入を終了後)およそ6カ月後」と発言したことで、一時は「2015年春にも利上げか」との見方も拡がりましたが、後に発表されたFOMC議事録において、メンバー内で「およそ6カ月」がコンセンサスであったわけではない、ということが明らかになりました。
こうした流れを経て、足元では「利上げは2015年半ば」ということが、市場のコンセンサスになっています。この時期を前倒す必要があるほどに経済が急速に回復し、インフレ懸念が台頭するようなことがない限りは、米国の金融政策についての思惑の変化もゆっくりとしたものになると見られます。
つまり日米ともに、金融政策の変更について、目先は経済指標の結果を1つ1つ確認するしかない、という状況にあります。日本では、まず消費増税の影響が想定以上に大きく出ていないか見極めるため、8月に発表される4月-6月期のGDPを確認する必要があります。しかも、4-6月期の経済が消費増税によってある程度圧迫されることは日銀の想定内ですので、多少のことでは追加緩和は行わず、「基調的に緩やかな回復を続けている」という状況に変化がないか、7-9月期のGDPを見る必要が出てきます。これは11月の発表になります。
例えば、株価が暴落し、GDPを確認する間も惜しいくらい日本経済に深刻な悪影響が見込まれるような「余程の事態」にならない限り、追加緩和は今年年末以降になると見ています。
このように、金融政策の変更を積極的に織り込みに行くのが難しい中では、株価の上げ下げを手掛かりに、狭いレンジでの取引が続くことになると思います。
ただ、米国の格言に「Sell in May(and go away)」という言葉があります。これは1月から5月にかけて株価は上昇基調にあり、6月に下げる傾向があることから、5月には株を売って、一旦様子を見た方が良い、という意味ですが、ここ数年、5月に急落する場面が散見されています。今年もそのような株の暴落が起こった際には、ドル/円も大きく下落するため、注意が必要です。反対に、目立ったリスク要因がない中で株高が進んでいけば、ドルが円に対して買われるという展開になると考えます。
――当面のドル/円の予想レンジは?
1ドル=101円-103円台を中心にしたレンジ相場がメインシナリオになると思います。米国の雇用統計が市場予想を大幅に上回る好結果となり、さらに、小売り売上高も好調といったようなことが続けば、104円台乗せもあるかもしれません。ただ、ウクライナ情勢などが時折株価の頭を抑えるような場面もあるため、一方向に走り続ける相場は想定しにくいです。上昇するにしても、ゆっくりとしたものになりそうです。
――豪ドル/円は、3月下旬に1豪ドル=90円台から95円台に値上がりした後、95円台前半でもみ合っています。今後の見通しは?
豪ドルの巻き返しは、3月に豪大手銀行の著名なエコノミストが追加利下げの見通しを取り下げたことがきっかけになりました。その前に、豪中銀から頻繁に出ていた豪ドル高牽制文言についても「不快」というきつめの表現が削除されており、豪ドルの買い戻しが進みました。
ただ、買い戻し一服後後は、一段と買い進めるには材料不足感があります。世界の株価がどんどん値上がりするような環境であれば、リスクカレンシーとして豪ドルは100円を目指して上昇することも期待できるですが、株価もそれほど好調ではありません。
当面は、1豪ドル=95円を挟んだもみ合い相場となり、トレンドは出てきにくいと思います。
――注目の通貨ペアは?
全般的に、大きな動きが期待できる通貨ペアが見いだせない環境になっています。その中で、比較的わかりやすい値動きをしているのが、ユーロです。
このところ、ユーロには月末になると「追加緩和期待」が高まってユーロ安が進み、月が替わり、ECB理事会で政策が据え置かれるとユーロが買い戻される、ということが繰り返されています。現在、ユーロ圏では、ECBが導入した新たな国債買入れプログラムOMT(Outright Monetary Transaction)がEU条項に抵触するのでは、ともめている最中です。マイナス金利に関しても、ユーロ圏要人の中で意見が分かれているところです。
ユーロ圏の経済指標もここ最近は悪いものばかり、というわけではなく、追加緩和の必要性が喫緊のものか、微妙なところです、この状況が月末・月初の「ユーロ安→ユーロ高」の背景にあると見られますFX取引をする上では、この流れに乗って取引するのは十分に有効かと見ています。
足元の主要な通貨ペアは、総じて方向感が出ていない状況です。順張りのタイミングを待つのも一案ですが、各国の金融政策にしばらく変更期待が高まりにくいことを考慮すると、待ち時間がかなり長くなってしまう可能性があります。そういう環境ですので、足元のレンジ内で逆張りで取引する方法も十分有効だと考えられます。(編集担当:徳永浩)
日米欧に当面は大きな金融政策の変更が期待されない中、為替市場にこう着感が強まっている。外為どっとコム総研の調査部研究員、石川久美子氏は、当面の外為市場について「ドル/円をはじめ、主要な通貨ペアはレンジ相場に入って大きなトレンドが狙いづらくなっている」と見通し、有効な投資戦略として「方向感が出てくるまでは逆張りで小刻みな利益を重ねていく姿勢が大切」と語った。(写真はサーチナ撮影)
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2014-05-02 09:30