プロ投資家の活用で拡大するオルタナティブ投資、オルタナティブ市場の成長を享受する「オルタナゲート」の魅力

 1月23日に新規設定された「東京海上・上場オルタナティブ・アセット・マネージャーズ戦略ファンド(愛称:オルタナゲート)」は、オルタナティブ投資市場の拡大によって恩恵を受ける企業に投資するファンドだ。「オルタナティブ(代替)投資」とは、上場株式や債券といった伝統的な投資資産とは異なる資産への投資を指す。未上場(プライベート)の株式や債券、不動産やインフラ(道路や港湾、空港などの社会基盤となっている施設)などが代表的なオルタナティブ資産だ。一般的に景気の変動を受けやすい上場株式や債券に対し、景気の変動の影響を受けにくい、あるいは、伝統的資産と価格変動の要因が異なるなど、伝統的な資産と併せ持つことで資産全体の変動を抑えて安定させたり、収益をかさ上げする効果などが期待される。近年はオルタナティブ投資市場の拡大が顕著で、同ファンドはオルタナティブ市場の拡大そのものを投資機会と捉えている。同ファンドの設定の背景や運用について東京海上アセットマネジメント執行役員(法人営業本部担当兼投信本部担当)の浅野孝氏(写真)に聞いた。  ――ファンドを設定した経緯は?  オルタナティブ投資資産は毎年着実に拡大しています。今では、プロの投資家である機関投資家の運用資産の中ではオルタナティブ資産がメインの資産になっているといえるようなところもあります。アメリカでは機関投資家だけではなく、個人投資家の間にもオルタナティブ投資が浸透してきました。ところが日本の個人投資家の間では、オルタナティブ投資がなかなか広がっていきません。オルタナティブ商品について投資家の皆さまにより興味を持っていただきたいと考えていたSBI証券の意向を受け、オルタナティブ商品のゲートキーパーとして機関投資家から高い評価を得ている私どもとSBI証券が知恵を出し合って開発したのが「オルタナゲート」です。  オルタナティブ投資が普及しないのは、いくつかの理由があります。たとえば、最低投資金が数百万円と高額なために、個人ではなかなか手が届かない。また、購入の機会が月1回だけ、解約は3カ月に1回などと購入・換金に制限があり、流動性に乏しく不自由なために投資しづらいことが挙げられます。また、既存の投資信託でオルタナティブ資産を組み入れる仕組みがあっても上限組入比率に制約があるなどと限定的で、本格的なオルタナティブ投資にはなっていないケースもあります。  そこで、オルタナティブ資産の成長を公募投信の枠組みでより広く投資家の方々に届けるため、オルタナティブ投資に特化した資産運用会社に投資するファンドを立ち上げました。運用会社の収益は投資資産であるオルタナティブ市場の拡大に伴って成長します。また、オルタナティブ資産には、プライベート・エクイティ、プライベート・デット、インフラや不動産などさまざまな資産がありますが、それぞれの資産の運用を得意とする粒よりの運用会社に投資することで、特定の資産に偏ることなく、オルタナティブ市場全体の成長を広く捉えることができます。公募投信にしたことで、日々の購入・解約が可能となり、SBI証券では100円から購入していただくことができます。  私どもは、このファンドを通じてオルタナティブ投資の魅力や各アセットクラスの魅力などについて積極的に情報発信をしていきます。そのような情報を通じて、オルタナティブ投資への関心が高まっていけば良いと思っています。「オルタナゲート」を通じて、まさにオルタナティブ投資の入り口として個人投資家の方々を豊かなオルタナティブ投資の世界にナビゲートする役割を果たしたいと思っています。  ――オルタナティブ市場の成長率は?  オルタナティブ市場は年々着実に拡大しています。2013年から2023年までの10年間でオルタナティブ投資の運用資産規模は約2.5倍となり、2023年12月末時点の資産規模は16.8兆ドル(約2600兆円)に達しています(1ドル=153.64円で円換算)。このうち、プライベート・エクイティ(未上場株式)だけで5.8兆ドルあり、東京証券取引所を有する日本取引所グループの6.1兆ドルに匹敵する規模になっています。今後、2023年から2029年までの6年間で資産規模は1.7倍に拡大し、市場が引き続き拡大していくと考えられています。2029年末の市場規模の予想は29.2兆ドルです。この市場拡大のスピードは、世界経済の成長スピードを上回ります。  オルタナティブ投資に特化した運用会社は、資産残高に対して一定率の報酬を受け取ります。市場の拡大が収益に直結しているのです。当社は「オルタナゲート」の運用方針に沿ったモデルポートフォリオを作って2013年12月末から2024年10月末までパフォーマンスをシミュレーションしたのですが、2013年12月末をゼロとすると、2024年10月末に先進国株式指数(MSCIコクサイ指数・配当込み・円ベース)が322となるところ、モデルポートフォリオは794と2倍以上の成績になりました。年率リターンに換算すると、先進国株式指数が14.2%に対してモデルポートフォリオは22.4%でした。  ――東京海上アセットマネジメントにおけるオルタナティブ投資の実績について教えてください。  機関投資家向けの運用サービスの提供者として実績があります。たとえば、国内の年金(企業年金など私的年金)の受託残高では国内で3本の指に入る大きな金額を受託しています。長年にわたって機関投資家向けのサービスを行ってきた関係で、オルタナティブ投資についても東京海上グループとしては30年ほど前から投資を開始し、人材育成をはじめオルタナティブ投資に関する知見を深めてきました。その結果、数年前から継続的にオルタナティブ投資に関する機関投資家の満足度調査で第1位の評価を連続していただいています。  オルタナティブ投資に関する評価は数年の経験によってできるものではありません。数値化されたデータだけではなく、運用者の投資哲学や運用を支える調査体制など定性的な側面についても継続的にフォローしているからこそ、運用会社の現状評価や将来展望について的確な判断ができてきたのだと思います。  ――ファンドのパフォーマンスのイメージ、また、活用の仕方のアイデアは?  ファンドのパフォーマンスは、これまでと同様にオルタナティブ市場の拡大に沿って右肩上がりの成長を遂げるものと期待されます。オルタナティブ資産の値動きは伝統的な資産とは異なりますので、「S&P500」や「全世界株式(オール・カントリー)」に連動するインデックスファンドを保有されている方が、資産を分散するための投資対象として「オルタナゲート」に並行して投資するということも方法の1つです。  たとえば、「全世界株式(オール・カントリー)」と「オルタナゲート」を50対50で保有したとすると、2013年12月末から2024年10月末までに合算でのトータルリターンは年率17.60%になります。これは、同期間の「全世界株式(オール・カントリー)」の年率リターン12.63%を上回り、運用の効率性を示すリスク当たりリターン(シャープレシオ)も「全世界株式(オール・カントリー)」の0.82に対して併せ持ちでは0.95に向上します。  新NISAが始まって投資信託のつみたて投資などが広がり、多くの方々が新たに投資を始められました。ただ、ほとんどの方が「米国株式」や「全世界株式(オール・カントリー)」を使った投資をされ、リスク分散・収益機会の分散がなされていない状況です。分散投資の手段はさまざまにありますが、リスク分散を図りシャープレシオを向上させたい方、収益機会の分散先としてインデックスファンド以外にも興味を持ち始めている方など、魅力的な分散投資先の1つとして「オルタナゲート」も検討していただきたいと思います。
「東京海上・上場オルタナティブ・アセット・マネージャーズ戦略ファンド(愛称:オルタナゲート)」の設定の背景や運用について東京海上アセットマネジメント執行役員の浅野孝氏(写真)に聞いた。
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2025-01-30 21:00