債券には株式に勝る収益期待、私募も含めた債券アクティブ運用に大きな魅力=PIMCOの市場展望

 債券のアクティブ運用会社として世界的な大手であるPIMCOのコア戦略担当CIO(最高投資責任者)のモヒト・ミッタル氏(写真:左)とポートフォリオ・マネージャーのラッセル・ガナウェイ氏(写真:右)が来日し、2月14日に東京・虎ノ門の日本オフィスでメディア向けの説明会を開催した。ミッタル氏は現在の投資環境について同社の最新の短期経済展望のタイトルである「不確実性の中の、確かな投資機会」を引き合いに出して「不確実性の中で、確実なことは不確実であるということだ」とし、その中にあって「債券は株式に勝る魅力がある。また、債券市場に多くの投資機会がある」と強調した。特に、「日本の市場では新NISAのスタート以来、株式や株式類似の金融商品に資金が大量に向かっているが、ほとんど注目されていない債券市場に今、大きな魅力があることを知ってほしい」と語っていた。  ミッタル氏は、米カリフォルニア州のニューポートビーチを拠点とするコア戦略担当のCIOであり、インベストメント・コミッティ(IC)のメンバーでもある。金利、および、クレジット全体を網羅する債券マルチセクター・ポートフォリオを担当するポートフォリオ・マネージャーを務めている。ミッタル氏は「不確実性が存在する」と言い切る大きな要因は、「米国の新政権」とした。「関税を含め、今後どんな政策が出てくるのか予測ができず、インフレの見通しも不透明になった。また、米国の経済成長率についても予測が難しくなった」と語った。ただ、「予測が困難なために、市場には様々な見方や立場があり、そのような不確実性によってより多くの投資機会が生まれている」とアクティブ運用者にとっては、非常に面白い局面を迎えているという。  そして、現在の金利水準をスタート台として経済見通しやインフレ率の見通しなどを合わせて考えると「債券のパッシブ運用でも向こう3~5年で年率5%程度の運用成績が期待できる。アクティブ運用者はパッシブ運用に対して1.0%~1.5%程度の上乗せをめざすため、年率6.0%~6.5%程度のリターンが可能だ。この水準は、これからの米国株式の期待できるリターンである年率3.0%~5.0%を上回る」という分析結果を紹介した。「債券の中でも米国債のような質の高い債券に魅力が強い。ただ、米国の財政に対する懸念があるため、10年を超える長期の債券にはやや慎重な見方が必要だ。5年~10年の中期債を選好する」と語っていた。  ガナウェイ氏は、ニューヨークオフィスを拠点とするポートフォリオ・マネージャー。タクニカル・オポチュニティー・ポートフォリオ管理チームのシニア・メンバーであり、PIMCOの不動産およびオルタナティブ・クレジット・プラットフォームにおける様々なインベスト・コミッティーのメンバーでもある。今回は私募ファンド市場の現状について主に語った。「米国ではシリコンバレー銀行が経営破たんした2023年3月以降に、地方銀行を中心に融資を絞る動きが続き、企業らが必要とする資金調達に応えるために私募証券市場が拡大している」と語った。私募証券市場は公募市場と比較して流動性や信用力に劣り、運用者の運用力をはかる手段も限られているものの、公募に対して1.0%~2.0%程度上乗せしたリターンを得ることも可能な市場になっている。  市場の拡大とともに、有望な投資機会も広がっている中にあって、消費者関連の私募証券市場に魅力があると語っていた。家計の債務比率はパンデミック前の水準に戻ったものの金融危機当時の水準よりも低く、特に住宅ローンは低金利時代に長期固定金利でローンを組んでいたために歴史的な低水準にあり個人のバランスシートが大幅に改善しているとした。消費者関連の私募証券市場で「ABF(アセットバックドファイナンス)」市場が20兆円規模で存在し、魅力的な投資対象になっていると語っていた。ABFには消費者系(クレジットカード・ローン、自動車ローン、学生ローンなど)、住宅ローン系(非適格住宅ローン、リフォーム、賃貸用戸建て住宅など)、非消費者系(訴訟ファイナンス、航空機、データ・インフラなど)があり、多くの場合は実物資産やキャッシュフローの創出を伴う分散された担保プールで裏付けられ、リスクの性格もそれぞれに異なる資産が担保になっているため、魅力的な投資機会があるとした。
PIMCOのコア戦略担当CIO(最高投資責任者)のモヒト・ミッタル氏(写真:左)とポートフォリオ・マネージャーのラッセル・ガナウェイ氏(写真:右)が来日し、2月14日にメディア向けの説明会を開催した。
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2025-02-17 10:15