FRONTEO、画期的なAI創薬支援サービスに脚光

 FRONTEO <2158> は自社開発の特化型AI(人工知能)「KIBIT(キビット)」の幅広い利用を推進し、現在はAIソリューション事業のライフサイエンスAI分野において、AI創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory(DDAIF)」に注力している。同サービスを活用すれば、従来は十数年かかるといわれる創薬の期間を劇的に短縮することが可能になる。現在、日本が国策として創薬事業を推している状況にあり、その中で「DDAIF」の利用が広がれば、将来的には創薬事業が日本の代表的な産業として世界的に脚光を浴びることもありそうだ。 創薬力強化の「国策」が追い風  日本はかつて新薬開発の評価が高かったものの、近年は創薬力が低下し、コロナ禍ではワクチンの製造も思うようにできなかった。こうした状況に対し、2024年7月に開催された「創薬エコシステムサミット」で岸田文雄前首相は「医薬品産業を成長産業・基幹産業と位置付ける」と宣言した。さらに、25年に入ってからも、創薬力強化を目的に、基金創設を盛り込んだ改正案や、5年間の「健康・医療戦略」などが閣議決定されるなど、創薬力強化が「国策」となっており、同社にとっては強力な追い風だ。  同社は従来、国際訴訟などで証拠となる電子データの保全と調査・分析を行う「eディスカバリ(電子証拠開示)」「デジタルフォレンジック調査」などを中心に事業展開してきた。当初は大量の電子データを人海戦術でレビューしていたが、自動化を図る中で「KIBIT」を開発。近年は「KIBIT」のより一層の利用拡大に取り組み、中でもライフサイエンスAI事業に注力している。創薬研究の効率化、成功確率向上に貢献する「DDAIF」の情報解析は注目度が高く、将来的にも有望だ。  医薬品開発では最初のプロセスとして、新しい標的分子を探し出し、その作用機序などの情報を裏付ける「仮説生成」を行う。そのプロセスでは、膨大な論文を参照しながら、2万-3万個あるといわれる遺伝子と、それに関連する分子の中から標的分子を見つけ出す必要がある。これには一般的に10年単位の時間がかかる。しかも、標的分子を見つけ出した後も想定通りに進まず、数千億円のコストを掛けながら、医薬品の開発に失敗することも珍しくない。 新薬開発にかかる時間と費用を大幅削減  同社の「DDAIF」は独自の特許技術を用いた高いデータ処理力を持ち、数千、数万もの膨大な文献情報から成功確率の高い標的を科学的・体系的に見つけ、未知の関連性を発見し、新たな見解を導き出すことができる。従来の方法のように、研究者の経験や勘に頼ることはない。そのため、従来は10年かかった標的分子候補の探索が2週間程度で済むという。  それとともに、標的分子候補から作用機序の解析、関連する疾患のゲノム情報や新薬の安全性と、その実験モデル提案まで一貫した仮説を生成し、そのパスウェイマップを作成することも可能だ。パスウェイマップを利用すれば、標的分子の関係性が可視化され、新たな候補の発見も容易になる上、創薬のシミュレーションもできる。従来のように闇雲に標的分子候補を選択するわけでないことから、それだけ創薬の成功確率は高くなる。  一方、24年のノーベル化学賞はグーグル子会社であるディープマインド社のデミス・ハサビスCEO(最高経営責任者)などが受賞した。受賞理由は「計算によるタンパク質の設計、タンパク質の構造予測」で、AI活用により生命科学の発展に貢献したことが評価されたという。創薬プロセスにおいては、「DDAIF」は「計算によるタンパク質の設計、タンパク質の構造予測」の前の段階で、より具体的に創薬にかかわる標的分子候補の探索・選定ができる点が強みだ。さらに、標的分子候補のマッピング、シミュレーションも可能なことから、いわば創薬の設計図を作成できることになる。  「DDAIF」は世界的な学術出版社であるシュプリンガーネイチャーからも高く評価されており、同社はシュプリンガーネイチャーが出版する約600誌、25年分の論文のフルテキストデータ(センテンス数3億5000万)のAIによる活用の契約に至った最初の企業である。1月には「DDAIF」を活用するサービスに関するホワイトペーパー「既知の文献情報から未知の関連性を発見」を公開した。同ホワイトペーパーは両社の協業の一環で、シュプリンガーネイチャーの文献データと、「KIBIT」の自然言語処理技術および解析手法を用いた、First in Class(画期的な医薬品)開発に向けた新たな創薬開発アプローチについて解説したものになっている。  同社の守本正宏社長は「『DDAIF』を利用することで、創薬が確実に強化できる。創薬のスタート地点に当たる標的探索にかかる時間と費用が大幅に削減されるため、これまで経済合理性の理由でできなかった希少疾患に対応する薬もつくれるようになるのではないか。欧米など海外では既に使われている治療薬が日本では利用できないドラッグロスや、医療費高騰の対策としても有効になる」と話した。  また、同社でライフサイエンスAI分野をけん引する豊柴博義取締役・CTO(最高技術責任者)は、論文などを読み込んで創薬の仮説生成を行う作業にAIの利用を考えていたとき、ちょうどFRONTEOがAIによる医薬品開発を志向していたことから、タイミングが合致して入社を決意したという。さらに、豊柴氏は「近年は標的分子の枯渇が問題視されるが、『DDAIF』でパスウェイマップを作成することにより、新たなアプローチで解析を進めれば、創薬にまた大きな可能性が見いだせるだろう」と語った。  現在、AIは化合物の探索や最適化、臨床試験などに活用されるものの、医薬品開発の入口である仮説生成にはほぼ使われておらず、今後は同社の「DDAIF」が独占する公算は大きい。将来、「DDAIF」の活用が広がり、医薬品開発の設計図ともいえる仮説生成に不可欠ということになれば、同社はグローバルな医薬品開発業界の根幹を占めることになり、世界的に存在感を大きくしていくことになりそうだ。
 FRONTEOは自社開発の特化型AI(人工知能)「KIBIT(キビット)」の幅広い利用を推進し、現在はAIソリューション事業のライフサイエンスAI分野において、AI創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory(DDAIF)」に注力している。同サービスを活用すれば、従来は十数年かかるといわれる創薬の期間を劇的に短縮することが可能になる。現在、日本が国策として創薬事業を推している状況にあり、その中で「DDAIF」の利用が広がれば、将来的には創薬事業が日本の代表的な産業として世界的に脚光を浴びることもありそうだ。
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2025-03-26 09:45