米国先端の技術で日本の確定拠出年金をブラッシュアップ=アセットマネジメントOneがティー・ロウ・プライスと協働

アセットマネジメントOneは、ティー・ロウ・プライス・ジャパンと連携してリタイアメントビジネスの進化、発展に積極的に取り組むと発表した。3月下旬に共同で記者発表会を開催し、アセットマネジメントOne代表取締役社長の杉原規之氏(写真:中央)は、「新NISAのスタートをはじめ、DC(確定拠出年金)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の制度改訂の議論も進み、資産運用立国の実現に向け大きく動きだした。ただ、日本で年金制度や資産形成に対する理解が進んでいるとはいいがたいと感じている。国内でインフレが進んでいるにもかかわらず確定拠出年金の分野で元本確保型商品のみで運用している人が2割を超えていること。また、一部ではマーケットの変動に合わせて短期的な売買を行う動きも見られる。DC市場の拡大に期待している私どもでは、一段と踏み込んだサポートが必要だと考えた」と日本の20年先を行っているといわれる米国DC市場で活躍するティー・ロウ・プライスと協働する意義を強調した。ティー・ロウ・プライス・ジャパン代表取締役社長兼最高経営責任者の本田直之氏(写真:中央右)も「米国で最新の運用商品や情報提供の仕組みを日本の皆さまに提供したい。ティー・ロウ・プライスは、リタイアメント事業に1984年から40年以上にわたって取り組み、運用資産250兆円のうち4分の3を年金関連資産が占める。中でもターゲット・イヤーファンドは資産の30%を占める主力商品だ。アセットマネジメントOneが提供する新型ターゲット・イヤーファンドは米国で提供している最先端の商品設計の考え方を導入した」と語っていた。
アセットマネジメントOneとティー・ロウ・プライス・ジャパンは、協働の第一弾としてアセットマネジメントOneが設定・運用するターゲット・イヤーファンド「未来のわたし」シリーズに、ティー・ロウ・プライスが最新のグライドパス(ターゲットイヤーまでの時間とともに変化するリスク量の経路)の生成エンジンを日本向けにカスタマイズして提供する。ファンドは11資産クラスに投資し、パッシブ運用とアクティブ運用を含む20運用戦略を組み合わせたバランス型ファンドになる。各ファンドの信託報酬率は税込0.8865%~0.936%程度の水準。商品を共同で運用することをきっかけとして、今後、教育ツールの提供などにおいても協働を進めていきたいと展望した。
アセットマネジメントOneで個人の資産形成や金融経済教育の分野における啓発・普及活動に取り組んでいる社内組織である「未来をはぐくむ研究所」は2024年3月、ティー・ロウ・プライス・ジャパンと年金シニアプラン総合研究機構と連携して「資産形成を社会実装するための長期研究チーム」を発足させた。この頃から、アセットマネジメントOneとティー・ロウ・プライスはDCを軸にした協働の可能性を探り始めている。そして、長期研究チームでは2024年8月に「職域における資産形成・金融経済教育等に関する調査」を実施した。調査対象は企業型DC、iDeCoに加入する5000人。ティー・ロウ・プライスの協力を得て、アメリカのDC加入者に実施している調査内容を取り入れて日米比較ができるようにしたことが調査の大きな特徴になっている。
調査結果を分析した未来をはぐくむ研究所長の伊藤雅子氏(写真:左端)は「日米のDC加入者の意識調査では、米国においてはDC運営管理機関や企業を通じてDC加入者に提供している教育ツールなどが『非常に役に立つ』と積極的に支持され活用されていることに対し、日本の加入者はSNSやYoutubeなどを頼りに自己学習をしている。これは日本の教育ツールなどが汎用(はんよう)的で一般的な学習内容にとどまっていることに対し、米国ではより個人向けにカスタマイズされたツールの提供や情報提供が行われていることからくる違いと考えられる」と考察している。日本において「無関心層」や「保守派」といわれる加入者は元本確保を優先し、運用商品を積極的に活用しない傾向にあるが、「DCの運用について自分事として意識できるような情報提供の工夫が必要」とした。
DCとDB(確定給付企業年金)を一体的に担当しているアセットマネジメントOne常務執行役員 機関投資家フィデューシャリー・マネジメント本部長の三木威氏(写真:左から2人目)は、新NISAが契機となってDCへの資金流入が活発化している現状を紹介。2024年の資金流入額は過去5年平均の1.5倍、海外株式ファンドに限ると2.4倍という大幅増を記録した。また、次期DC法改正によって掛金限度額の引き上げや加入者のための運用の見える化などが検討されて一段とDC市場が活性化する方向にあるとしつつ、DCを巡る課題として「加入者はDB、DCを含む自身の退職金制度全体への理解が十分ではない可能性が高い。また、若い世代は投資に積極的ながらSNSなどを主な情報源として体系的な学習ができていない、職種によっては業務でPCを使わない人たちはオンラインコンテンツが十分に活用されていないなど金融経済教育機会に差がある」として国内のDC市場には一段のサポートが必要との見方を示した。そして、今後、ティー・ロウ・プライスとの協働を通じて米国で提供されているさまざまなツール等と同様なものを国内のDC加入者が活用できるようにしていきたいと展望した。
ティー・ロウ・プライス・ジャパンの機関投資家ビジネス統括責任者である宮島靖郎氏(写真:右端)は、「日本と異なり、米国ではターゲット・イヤーファンドが圧倒的に普及し、適格デフォルト商品の91%がターゲット・イヤーファンドになっている」と米国の実情を紹介。そして近年のターゲット・イヤーファンドのグライドパスは、経済成長率やインフレ、資産クラスのリターンの見通しなど経済シナリオの長期見通しに基づいた配分比率の変更のみならず、社会保障制度や賃金の状況、年金・退職金制度などによる加入者の行動シナリオを予測し、さらに、退職直前の実質生活費に近い水準を老後年金額で終身達成する可能性が高いという効用満足モデルをみたす設計が必要と解説した。今回の「未来のわたし」シリーズで採用するグライドパスは、米国の最新のモデルを使って、日本固有の制度や日本のDC加入者のデータを入れ込んで日本向けのグライドパスを作り上げたと解説した。
アセットマネジメントOneは、ティー・ロウ・プライス・ジャパンと連携してリタイアメントビジネスの進化、発展に積極的に取り組むと発表した。
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2025-03-31 10:00