【為替本日の注目点】米中貿易戦争懸念からトリプル安

 前日148円台前半まで上昇したドル円は、東京時間から上値が重く、NYでは「米中貿易戦争」の激化懸念から大きく下落。前日の上昇分を帳消しにする144円前後まで売られる。ドルが売られたことでユーロドルも大きく上昇。ユーロは2023年7月以来となる1.1241まで急伸。株式市場は再び大幅安に。ダウは1000ドルを超える下落で、ナスダックも4%を超える大幅安。債券は続落。長期金利は4.42%台に上昇。金は続伸し、最高値近辺まで買われる。原油は反落。 新規失業保険申請件数 → 22.3万件 3月消費者物価指数 → -0.1% 3月財政収支  → -160.5b ドル/円 144.00 ~ 145.99 ユーロ/ドル 1.1068 ~ 1.1241 ユーロ/円 161.01 ~ 162.58 NYダウ -1014.79 → 39,593.66 GOLD +98.10 → 3,177.50ドル WTI -2.28 → 60.07ドル 米10年国債 +0.093 → 4.425% 【本日の注目イベント】 独 独3月消費者物価指数(速報値) 英 英2月鉱工業生産 英 英2月貿易収支 米 3月生産者物価指数 米 4月ミシガン大学消費者マインド(速報値) 米 ムサレム・セントルイス連銀総裁講演 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演 米 決算発表 → ウェルズファーゴ、JPモルガン、ブラックロック、モルガンスタンレー  リスク回避が一旦収まり、昨日の東京株式市場は2894円高と、過去2番目の上昇を見せました。ただ、株高が進みリスク回避の流れが後退したわりにはドル円が上昇せず、やや意外感は残りました。  一夜明けて、NYでは再び市場が大きく揺れ動きました。対中国との「貿易戦争」の可能性がさらに高まり、ドルと株と債券が売られる「トリプル安」が加速しました。ホワイトハウスは、中国からの輸入品に対して賦課している関税は合計で少なくとも「145%」に上昇すると発表しました。これは、米中貿易に壊滅的な打撃を与え得ると考えられている水準をはるかに超えているレベルと伝えられています。これに対する中国側の対応が再び注目されますが現時点では、中国が米国映画の輸入を減らすといった「小技」にとどまっています。トランプ氏は、中国を除く貿易相手国に90日間の猶予を与えましたが、これに付いては「早期に合意できるだろう」と、楽観的な見方を示していますが、一方で、今後3カ月間で満足いく合意が得られなければ、相当な上乗せ関税を課すと強調し、貿易収支が黒字の国・地域に対しても非関税障壁の撤廃を求める意向を示しています。  前日148円台前半まで買われたドル円は昨日のNYでは144円近辺まで再び売られ、まるでエレベーターのような動きを見せています。「トリプル安」で反応した市場はトランプ政権の通商政策に対して明らかに「ノー」を突き付けています。さすがの厚顔無恥なトランプ氏も、市場の厳しい拒否反応には内心不安を感じているものと思われます。前日、それまでは強硬に「相互関税」の発動を決めたトランプ氏が、発動からわずか13時間後に「90日間の延期を」を決めたのもその表れで、その際、記者団からその理由を尋ねられ、トランプ氏は「Flexibility(柔軟さ)が必要だからだ」と答えていました。ただ、上でも述べたようにトランプ氏は、株式市場と債券市場の動向を非常に気にしていることは分かっており、9日には「債券市場は非常に厄介だ。だが、今は美しい」、あるいは「This is a great time to buy!!!(最高の買い場だ)」と述べていたことでも明らかです。  「トランプ関税劇場」が相場を動かしていることで、米経済指標の存在感も薄れてきましたが、昨日は「3月の消費者物価指数(CPI)」が発表されました。総合で「-0.1%」、コアで「0.1%」(いずれも前月比)また、前年同月比では、総合が「2.4%」で、コアは「2.8%」でした。いずれも市場予想を下回っており、関税引き上げ前の段階では、インフレ懸念が後退しています。これがドル円を144円前後まで押し下げた側面もありました。本来ならこの結果がFRBの追加利下げを促す材料になりますが、昨日の多くのFOMCメンバーの口からは、むしろ利下げを急がないといったスタンスが目立っていました。  ダラス連銀のローガン総裁は「当局の2大目標の両方を持続的に達成するには、関税に関連する価格上昇が根強いインフレになるのを防ぐことが重要になる」と述べ、カンザスシティ連銀のシュミッド総裁は、「金融政策の決定に当たり、FRBは成長及び雇用を巡る懸念と、インフレ・リスクとの間でバランスを取らなければならない可能性が高まっている。このバランスを考慮する際、私はインフレ見通しをしっかり注視していくつもりだ」と話していました。さらにボストン連銀のコリンズ総裁も、「再び物価上昇圧力が強まれば、政策の正常化がさらに遅れる可能性がある。関税がインフレ期待を不安定化させないという確信が必要だ」と述べ、3総裁とも申し合わせたかのように、「関税によるインフレ」を注視する姿勢を明らかにしていました。「景気後退とインフレ」という、2つの相対する経済現象には真逆の金融政策で対処する必要がありますが、そのような状況下でもインフレ抑制が優先されると、筆者はこれらの発言から感じ取りました。  目まぐるしい相場展開が続いており、ポジションを一方には傾けにくい状況です。全てはトランプ関税がどこで落ち着くのかにかかっています。貿易相手国との交渉責任者であるハセット国家経済会議(NEC)委員長は、「関税を巡る貿易相手国との交渉はすでにかなり進んでおり、先週時点でほぼ合意に達しているものもある」と述べています。ハセット氏は具体的な国名は明かさず、「非常によく進んだ交渉が数件ある」とも話しており、関税賦課の一時停止については、「中国を除外するという決定は、大統領が選んだ」と述べています。日本については、赤沢経済財政・再生担当大臣が来週には訪米し、ベッセント財務長官と交渉にあたる予定です。同長官は日本に対する関税については、やや楽観的な発言を行っていました。  連日荒っぽい相場展開が続いており、ポジションを一方に傾けにくい状況です。「トランプ関税が」どこで落ち着くのかということに尽きますが、すでにドル円は今年のドルの最安値を下抜けしています。今夜のNYでは142円辺りで下げ止まるのか、という状況で、140円という大きな節目も意識されます。 (執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
前日148円台前半まで上昇したドル円は、東京時間から上値が重く、NYでは「米中貿易戦争」の激化懸念から大きく下落。(イメージ写真提供:123RF)
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2025-04-11 11:15