割安な水準のリートはゴールドに匹敵するインフレ耐性、フィデリティ投信がリートの魅力を強調

 フィデリティ投信は4月23日、メディア向けに「インフレ耐性で注目の『リート(不動産投資信託)』の魅力」をテーマにした説明会を開催した。「フィデリティ・Jリート・アクティブ・ファンド」の運用を担当するフィデリティ投信のポートフォリオ・マネジャーである村井晶彦氏(写真:左)は、「供給量が限られている現物不動産を保有しているリートは、ゴールド(金)などと同じようにインフレから資産を守る重要な資産クラスといえる。現在の投信市場ではJリートファンドの評価は低いが、もっと高く評価されていい」と語った。  フィデリティ投信のアソシエイト・インベストメント・ディレクターの今井菜穂子氏(写真:右)は、2025年の年初来3月末までにTOPIX(配当込み)がマイナス3.4%だったことに対し、東証REIT指数(配当込み)はプラス3.8%だった実績を示し、「このようにJリート市場が株式を上回るパフォーマンスになっているのは、Jリート市場が割安な水準にあるため」と説明した。たとえば、投資口価格を1口当たり純資産額で割って求める「NAV倍率」は過去約20年(2003年12月末~2025年3月末)の平均である1.13に対し、25年3月末時点は0.81という水準にある。また、Jリートの配当利回りは約4.8%で、これは日本10年国債利回りが1.5%程度に上昇した現在でも、その水準を約3.4%も上回っている。  一方で、Jリートが保有する実物不動産は用途を問わず空室率が低下傾向にあり、賃料が安定的に推移している。「不動産のファンダメンタルズ(基礎的条件)は良好」(今井氏)とする。それでもJリート価格は、過去1年間(25年3月末時点)で「オフィス」はプラス4.1%と比較的堅調だったものの、「住宅」はマイナス9.4%、「商業・物流等」はマイナス3.2%となり、「東証REIT指数(配当込み)」はマイナス1.0%とさえない動きになった。業種別に騰落率に差が出た背景について今井氏は、「『オフィス』はコロナ後のオフィス回帰の動きもあってファンダメンタルズが良好なことに加え、現在のJリートの買いの主体である海外投資家などがまとまった資金を投資する先として比較的大型銘柄が多い『オフィス』を好む傾向がある」と解説した。「住宅」は人件費や建設資材の価格高騰によって利益率が低下していること、「商業施設・物流等」についても個別に業績が良くない銘柄等がマイナス要因になっている。  村井氏は、「ファンダメンタルズが良いにもかかわらず、割安な水準に放置されているのが現在のJリートだ。Jリートが評価されない理由としてインフレや金利上昇によってJリートの業績がマイナスの影響を受けるということがいわれるが、インフレはJリートにとってマイナスとばかりいえない。公示地価が上昇しているように資産としての価値は上がり、インフレによって給与等が上がれば賃料を引き上げることが容易になる。また、金利は長期金利が上昇しているものの短期金利の水準はそれほど大きくは動いていない。市場の頭を押さえつけ続けられるほど悪い条件があるわけではない」と語り、現在のJリートは見直されることになるだろうとした。  そして、運用する「フィデリティ・Jリート・アクティブ・ファンド」については、ファンダメンタルズを評価して目標と考える投資口価格よりも過度に割安になっている銘柄にしっかり投資することが肝心と強調した。現在は物流セクターなどが割安になっているが、それらは「さまざまな条件を前提において消極的に評価し過ぎている」という見方をしていた。「現状のJリート市場はNAV倍率や配当利回りの水準などからも非常に魅力的な投資対象になっている。いつがベストな投資タイミングであるということは難しいが、魅力的な投資対象であることは間違いない」と語った。  その上で、「長期で考えれば、ニクソン・ショック以降に各国の中央銀行の判断で自由に通貨が発行できる状態となってからは、通貨の量は拡大し続けて通貨の価値は下がり続けている。通貨への信認が低下する局面では株式も債券も大きな危機を迎えることになる。近年はゴールドが希少な実物資産として評価が高まってきているが、都心にある品質の高い不動産もそこにしかない希少で有限な実物資産だ。その希少な優良不動産を保有しているリートは、もっと高く評価されるようになるだろう。資産を守ることを念頭におけばリートも保有しておくべき貴重な資産だ」と強調していた。
「フィデリティ・Jリート・アクティブ・ファンド」の運用を担当するフィデリティ投信の村井晶彦氏(写真:左)は、「リートはもっと高く評価されていい」と語った。
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2025-04-24 08:45