星野リゾート・リート投資法人:星野リゾートがスポンサーのホテル特化型REIT

 星野リゾート・リート投資法人 <3287> は星野リゾート(長野県北佐久郡)をスポンサーとし、星野リゾート・アセットマネジメント(東京都中央区)が運用するJ-REIT(上場不動産投資信託)。政府が「観光立国」を掲げる中で、ホテル、旅館および付帯施設に対する投資を行うホテル特化型REITとして注目度が高い。積極的な物件取得により、資産規模は2013年の上場時から15倍以上に成長している。星野リゾート・リート投資法人の特徴や見通しについて、星野リゾート・アセットマネジメントの秋本憲二社長に聞いた。  ――星野リゾート・リート投資法人の組成の経緯について教えてください。  「星野リゾートの星野佳路は1991年に家業を承継し代表に就任しました。就任時から、長期にわたり競争力を維持し続ける自律した組織を目指し、ホテルや旅館の『所有』と『運営』の分離を考えていました。就任後の最初の10年間は本拠地軽井沢でホテル運営会社として外に出ていく体制の基礎固めを行いました。次の10年間では、『星のや』『リゾナーレ』『界』と矢継ぎ早に独創的なホテルブランドを展開してきました。また、この期間に、大規模リゾートの再生と旅館再生に関して、着実に実績を積み重ねていきました。さらに、次の10年間では新たなチャレンジとして、都市観光ホテルブランド『OMO(おも)』を開業しています。その後、長年の目標であった『所有』と『運営』の分離に取りかかりました。もともと所有と運営の両方の機能を持っていたホテル事業会社である星野リゾートを2つに分けて、所有の役割を担う当投資法人(星野リゾート・リート投資法人)が2013年に上場し、所有と運営の役割分担を明確にしたわけです。この所有と運営の分離は、運営会社である星野リゾートと、所有者である当投資法人のそれぞれの強みを生かし、相乗効果を発揮する手法となります。当投資法人は、星野リゾートと協力することで、永続的な成長と、安定的分配および分配金の増加を目指しています」  ――星野リゾート・リート投資法人の魅力は何ですか。  「星野リゾートは観光産業において豊富な知識とブランド力を持ち、人の来ていないところに宿泊需要を作り出すノウハウも保持する、競争優位性のあるホテル運営会社です。当投資法人は星野リゾートと共存共栄の関係にあり、長期的に持続可能な体制を構築しています。具体的には、当投資法人が施設の所有を通じて、星野リゾートに対し運営施設数の増加による事業規模拡大の機会を提供します。これにより、星野リゾートをスケールメリットが享受できる、さらに強いホテルオペレーターに育て上げていきます。星野リゾートが事業規模を拡大すると、運営力はより強化され、その運営力をフル活用する当投資法人の業績も向上します。この『競争力強化のサイクル』を通じて、当投資法人と星野リゾートは相互に安定的・長期的に成長できるし、当投資法人は投資主価値の向上・最大化を図ることができます」  ――どういった形で投資対象の物件を選定していますか。  「当投資法人は、他に類のない景観美と文化こそ日本の有する資源で、世界に冠たるパワーであり、これを生かした観光立国を力強く推し進めることが日本の繁栄につながると考えています。私たちは日本の観光のより一層の振興を図り、観光先進国を作り上げていくことに少しでも貢献したいと常日頃から願っています。こうした観点から、ホテル・旅館および各地域の長期的な発展に強い関心を持って、投資対象の物件を選定しています。具体的には、星野リゾートグループ運営物件などの物件情報を積極的に入手し、長期的、安定的なキャッシュ・フローを確保できることを重視して取得を決定します。そのため、まずは『星のや』『リゾナーレ』『界』など、星野リゾートグループのブランドを中心に投資し、最適なポートフォリオ構築を図ります。観光には大別して『リゾート観光』『温泉観光』『都市観光』の3タイプがあり、当初は『リゾート観光』『温泉観光』を中心に投資してきましたが、近年は都市観光ブランド『OMO』の取得にも力を入れはじめました」  ――再生ではなく、新たに開発するケースはありますか。  「実は、ホテル事業は所有・運営・開発の3つの重要な機能によって成り立っています。所有と運営についてはここまでに述べてきましたが、『開発』についても星野リゾートは日本政策投資銀行(DBJ)と共同ファンドを組成しており、この開発ファンドから当投資法人は物件を取得できます。つまり、星野リゾートが主体的に開発に関わり、市場が求める場所に、ニーズに合ったブランド・施設を新築できているのです。この開発ファンドからの取得が本格的に始まったのは2020年頃からです。直近では昨年6月に『OMO7大阪』、今年1月に『界 ポロト』を取得し、同ファンドからの取得実績は7物件613億円となりました。今後も中・長期にわたり外部成長のメインのパイプラインとして期待できます。当投資法人が『所有』、星野リゾートが『運営』、そして開発ファンドが『開発』を担うことで、それぞれの競争優位性を高めるストラクチャーが構築できてきたのです」 <資産規模は世界最小から15倍以上に大きく拡大>  ――上場時から資産規模は大きく拡大していますね。  「2013年の上場時、資産規模は150億円(6物件)で、当時世界最小のREITでした。まずはREITとしての競争力を獲得するために資産規模の拡大を目指し、公募増資を実施しながら、星野リゾート以外の物件も積極的に取得しました。その結果、2019年に資産規模が約10倍の1500億円(59物件)規模になりました。その後、コロナ禍もあって一時停滞しましたが、2022年から改めて拡大し、2025年1月に資産規模は上場時から15倍以上の約2300億円(70物件)になりました。星野リゾート以外の物件も積極的に取得した時期があったことから、所有物件における現在の星野リゾートの運営比率は約50%です。今後、投資口価格を早く戻し、改めて資産規模3000億円を目指す中で、DBJ開発ファンドからの取得が進むことにより、星野リゾートの運営比率は60%程度に高まっていくとみています」  ――海外展開についてはどう考えていますか。  「星野リゾートは企業ビジョンである『Globally Competitive Hotel Management Company』を目指して、長い時間をかけて北米進出の準備を進めてきました。そして、いよいよ2028年に、米国初の本格的な温泉旅館をニューヨーク州シャロン・スプリングスに開業する予定です。また、すでにハワイ、グアム、バリ、台湾などで星野リゾートは施設を運営していますが、当投資法人としてはこれら海外物件の取得については現段階では考えておりません」  ――SDGs(持続可能な開発目標)についての考えを教えてください。  「例えば、『星のや軽井沢』では、自然との共生を尊重し、創業当初からの活動を引き継ぎ、豊かな自然環境の上に成り立つリゾートとして、自然への負荷を最小限に抑えるため、『EIMY(Energy in my yard)』という独自のエコシステムを採用しています。具体的には、水力発電、地中熱利用システムなどです。『EIMY』により、利用する電気の約70%を自身でまかなってきました。また、各物件では以前から、廃棄物の排出を可能な限りゼロに近づけるゼロエミッションを推進しています。加えて、広いバックスペースを設置するなど、従業員が働きやすいよう、さまざまな試みも実施しています。こうした施策に加えて、近年はSDGsが重視されるようになっていることから、環境・社会課題に対応しながら、競争優位を保つ施策をさらに実施し、今後もサステナブル・ビジネス・モデルの構築に取り組んでいきます」
 星野リゾート・リート投資法人 <3287> は星野リゾート(長野県北佐久郡)をスポンサーとし、星野リゾート・アセットマネジメント(東京都中央区)が運用するJ-REIT(上場不動産投資信託)。政府が「観光立国」を掲げる中で、ホテル、旅館および付帯施設に対する投資を行うホテル特化型REITとして注目度が高い。積極的な物件取得により、資産規模は2013年の上場時から15倍以上に成長している。星野リゾート・リート投資法人の特徴や見通しについて、星野リゾート・アセットマネジメントの秋本憲二社長に聞いた。
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2025-05-12 09:15