【為替本日の注目点】5月のADP雇用者数は3.7万人

ドル円はNYの朝方の142円台前半を高値に急落。ADP雇用者数が2年ぶりの低水準だったことや、ISM非製造業景況指数も下振れしたことで利下げ観測が強まり、144円60銭までドルが下落。ユーロドルは再び1.13台から1.1434まで反発。株式市場はまちまち。ナスダックは買われたがダウは4日ぶりに反落。低水準の経済指標を受け債券は買われた。長期金利は4.35%台へと急低下。金は反発し、原油は反落。
5月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 53.7
5月S&Pグローバル総合PMI(改定値) → 53.0
5月ADP雇用者数 → 3.7万人
5月ISM非製造業景況指数 → 49.9
ドル/円 142.60 ~ 144.28
ユーロ/ドル 1.1380 ~ 1.1434
ユーロ/円 162.90 ~ 164.21
NYダウ -91.90 → 42,427.74
GOLD +22.10 → 3,399.20ドル
WTI -0.56 → 62.85ドル
米10年国債 -0.099 → 4.355%
【本日の注目イベント】
豪 豪4月貿易収支
中 5月財新サービス業PMI
中 5月財新総合PMI
独 独4月製造業新規受注
欧 ユーロ圏4月卸売物価指数
欧 ECB政策金利発表
欧 ラガルド・ECB総裁記者会見
米 4月貿易収支
米 新規失業保険申請件数
米 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁講演
米 クーグラー・FRB理事講演
加 カナダ4月貿易収支
トランプ大統領はロシアのプーチン大統領と電話で話したことを明らかにしました。トランプ氏は、最近のウクライナによるドローン攻撃にロシアは報復すると、プーチン氏から警告を受けたと述べ、「良い会話はできたが、直ちに和平につながるようなものではなかった」とSNSに投稿しました。会話は1時間15分ほど続いたようですが、プーチン氏はウクライナによるドローン攻撃には相当いらだっていたようです。
「5月のADP雇用者数」には正直驚きました。市場予想の「11.4万人」に対して「3.7万人」と、2年ぶりの低水準でした。さらに4月分も「6.2万人」から「6.0万人」に下方修正されています。ビジネスサービスや教育・保険サービスなど一部の分野で雇用が減少していました。ADPの担当者は、「年初は力強いスタートだったが、雇用は勢いを失いつつある」とコメントしていました。これで、9月の利下げ観測が強まり米金利が低下。ドル売りが加速しましたが、追い打ちをかけたのが、「5月のISM非製造業景況指数」の発表でした。同指数は「49.9」と、好不況の境目である「50」を割り込み、こちらは1年ぶりの縮小圏に沈みました。また、ベージュブックでは「景気および政策に関する不確実性が高いと全ての地区が報告した」とあり、「それが企業や家計の意思決定における消極姿勢や慎重な動きにつながった」と報告されており、こちらも景気後退懸念から利下げ観測を後押ししています。
トランプ氏はこれらの指標発表を受け、「ADPの数字が出た!!!『遅すぎる』パウエルは今すぐ金利を引き下げなければならない。彼は信じられない!!!欧州はすでに9回も利下げしている」と、自身のSNSに投稿しました。トランプ氏がFRBに対して利下げ圧力を強め、パウエル議長を非難することには今更驚きませんが、トランプ氏が同指標の発表された米東部時間8時15分直後に投稿したことに驚きました。筆者が知っている限り、米大統領が最も重要なイベントであるFOMCや、最重要指標である「雇用統計」に反応するのは分かりますが、民間の雇用指標である「ADP雇用者数」までもチェックしていることに驚きました。このように「マメ」な大統領であれば、当然日々のNYダウやS&P500指数などには注意深く目配せしていると考えることは、想像に難くありません。考えてみれば、NYダウが大きく下げ、米中関税協議が合意する前「今が株の絶好の買い時だ」と投稿したことも記憶に新しいところです。ひょっとしたら、トランプ大統領は歴代大統領の中でも最も経済通なのかもしれません。だからこそ、「金利については、パウエル氏よりも私の方が詳しい」などといった発言も出て来るのでしょう。まるでトレーダーのようです。あなどれません・・・・。
赤沢経済再生相は、今日から8日の日程で訪米し米国との第5回目の閣僚協議に臨みます。昨日の説明では、15-17日にカナダで開催される「G7首脳会議」に合わせた日米首脳会談への同行は、現時点では考えていないと、赤沢氏は述べていました。
FRBが5月のFOMC会合で、3会合連続の政策金利据え置きを決めたのは、「トランプ関税」の影響に不確実性がありインフレ懸念が残るからですが、同時にFRBの2大責務のもう一方の雇用が堅調に推移していたことも挙げられます。昨日のADPの減速が、今後の米労働市場の鈍化を示唆しているのかがポイントになります。言うまでもなく、明日の「5月の雇用統計」と昨日の「ADP雇用者数」には、過去のデータからすれば強い相関関係は見られません。従って、明日の本番で強い数字が出る可能性もありますが、一方仮に弱い数字であった場合、トランプ氏の圧力とは別に利下げ観測がさらに強まることも予想されます。先ずは、このところ底堅い水準である142円。そして大きな節目である140円が維持できるかどうかが極めて重要です。
本日のドル円は141円50銭~143円50銭程度を予想します。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円はNYの朝方の142円台前半を高値に急落。(イメージ写真提供:123RF)
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2025-06-05 10:15