オルタナティブ戦略やプライベート資産などで運用の高度化に貢献=マン・グループ・ジャパン

 マン・グループ・ジャパン・リミテッドは7月15日、東京・赤坂の同社東京支店においてメディア向け説明会を開催した。在日代表兼東京支店長の島津明朗氏(写真)は、「現在の資産運用業界は、伝統資産といわれる国内外の株式・債券を使った運用だけでは不十分となり、プライベート・アセットやヘッジファンドの運用手法を活用するなど、運用の高度化が求められている。ヘッジファンドの目利きとしてもさまざまな運用手法に精通しているマン・グループが日本の資産運用に対してできることは多くあるはず」と語り、同社の運用商品の紹介のみならず、国内の運用会社との連携などを進めるとともに積極的な情報発信に努め、日本国内の運用の高度化に貢献していく考えであると語った。  英国ロンドンに本社を置き、世界の主要都市に拠点を構えるマン・グループは、高度なクオンツ(定量分析)運用を駆使した絶対収益戦略などヘッジファンド運用で知られる。国内では2001年から住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)と提携し、国内の企業年金向けにヘッジファンド戦略を提供してきたほか、野村アセットマネジメントが2018年11月に設定した絶対収益型のファンド「ダブル・ブレイン」の実質的な運用を担うなど、公募投信の分野でもサブ・アドバイザーとして運用戦略を提供してきた。  また、2023年7月にSBIホールディングスと「国内の個人投資家に手軽に投資できるオルタナティブ投資戦略を提供する(オルタナティブ投資の民主化)」ことを目的とした合弁会社を設立することで合意。提携第1弾としてSBIアセットマネジメントがマンAHLのトレンド・フォロー戦略を使った「SBI-Man リキッド・トレンド・ファンド」を2024年8月に設定している。そして、2025年2月に明治安田生命保険とプライベート・アセット投資における戦略的パートナーシップを締結。明治安田生命の運用資産についてプライベート・アセット投資の多様化・拡大を通じて資産運用の高度化を協働してめざしている。  在日代表の島津氏は、マン・グループは「タレントとテクノロジーへの継続的な投資によってアルファを追求してきた」と語り、さまざまな運用者によるアクティブなロングオンリー戦略を多数保有し、かつ、クオンツ・リサーチとテクノロジストを約670名も抱えてAI(人工知能)等も活用したシステマティックな運用において多くの資金を運用していると語った。同社の運用資産残高は約1726億ドル(約26兆円)だが、うち、システマティックなトップダウン型のクオンツ運用の代表戦略として「マンAHL」で約9兆円、独自の個別銘柄評価モデルを活用したボトムアップ型株式クオンツ運用の「マン・ニューメリック」で約7兆円を運用している。そして、3名から6名程度のチームで固有のスキルを活かしたマネジャーの投資判断によって運用するディスクレショナリー(自由裁量に任された運用)で約8兆円を運用している。その他は、外部のヘッジファンドや収益源の異なる運用戦略を組み合わせたソリューション型の運用サービスになっている。  島津氏は、マン・グループが樽の製造メーカーとして1783年に創業し、その後、砂糖の仲買業者を経て、1983年に資産運用部門を設立し、先物ブローカレッジ事業やオルタナティブ運用事業に進出して以来、様々な運用マネジャーを統合することによって多様な運用戦略を拡充してきた歴史を紹介した。「通常は運用会社が他の運用会社を買収すると、持ち株会社を作ってその傘下に買収した運用会社を配置するという経営体制を作りがちだが、マン・グループは1つの運用会社になるよう、買収した運用会社を統合することを繰り返してきた。トップダウン型の『AHL』は学者など研究肌の人材で構成されていたが、そこにブローカー出身で定性判断による運用を行っている『GLG』を統合しようとすると水と油のように交じり合わないものだが、そこに、ヘッジファンドの目利きをやっていた『FRM』やボトムアップ型のクオンツ運用の『ニューメリック』を加えることで水と油のような両社を融合させるというようなことをやってきた。その結果としてどんな運用環境においても絶対リターンを追求できるような多様な運用戦略を揃えることができた」という。  そして、2007年に英オックスフォード大学と共同でクオンツ・ファイナンスの研究を行う「オックスフォード・マン定量ファイナンス研究所」を設立。最先端の研究成果を運用戦略に応用することも実施している。また、2023年には米コロンビア大学サステナブル投資研究所と共同で脱炭素化のためのクライメート・アロケーション・コンパス・フレームワークを開発し、実体経済の脱炭素化に必要な投資と実際の投資との間のギャップを埋めることの研究を進めている。このような学術機関との協働によって最新の知見を運用に取り入れることも積極的に取り組んでいる。  島津氏は、国内の資産運用業界にあってもオルタナティブ戦略やプライベート・アセット投資を通じた投資戦略の多様化は大きな課題として意識されてきているとし、「マン・グループの揃えている多様な投資戦略だけでなく、マン・グループがヘッジファンドの運用等で重ねてきた経験が、国内の運用会社や投資家の方々に必ず貢献できる」とし、積極的な情報発信を行っていきたいと語っていた。
マン・グループ・ジャパン・リミテッド在日代表兼東京支店長の島津明朗氏(写真)は「マン・グループが日本の資産運用に対してできることは多くあるはず」と語った。
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2025-07-16 10:30