【為替本日の注目点】クリーブランド連銀総裁、「明日開催なら利下げに反対」

ドル円は反発し再び148円台を回復。FOMCメンバーのタカ派発言で米金利が上昇しドルを押し上げる。ドル円は148円40銭まで買われる。ドルが買われたことでユーロは売られたが、依然として1.16台を維持。株式市場は3指数が揃って下落。S&P500は25ポイント下げ、今年最長となる5日続落。債券は売られ長期金利は4.32%台に上昇。金は反落。原油は続伸。
8月フィラデルフィア連銀景況指数 → -0.3%
8月S&Pグローバル製造業PMI(速報値) → 53.3
8月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値) → 55.4
8月S&Pグローバル総合PMI(速報値) → 55.4
7月景気先行総合指数 → -0.1%
新規失業保険申請件数 → 23.5万件
7月中古住宅販売件数 → 401万件
ドル/円 147.59~ 148.40
ユーロ/ドル 1.1601 ~ 1.1656
ユーロ/円 171.49 ~ 172.27
NYダウ -72.55 → 44,785.50
GOLD -6.90 → 3,381.60ドル
WTI +0.81 → 63.52
米10年国債 +0.037 → 4.328%
【本日の注目イベント】
日 7月消費者物価指数
独 独4-6月期GDP(改定値)
英 英7月小売売上高
加 カナダ6月小売売上高
「労働市場の鈍化は利下げを正当化するが、インフレリスクは依然高い。従って、今後のデータを慎重に分析することが適切だろう・・・・。」
いよいよ今夜、日本時間23時からジャクソンホールでのパウエル議長の講演があります。筆者は、上記のようなニュアンスの発言があると予想していますが、どうでしょう。8月は主要中銀の政策決定会合がないことから、例年この「ジャクソンホール会議」でのFRB議長の講演内容は注目されますが、今年は特に注目度が高いように思います。それもそのはず、2022年からの急激なインフレの進行で出遅れたFRBが急激に政策金利の引き上げを迫られ、2023年7月には同金利は5.25%~5.5%まで達しました。実に22年ぶりのことでした。その後は急速な引き締め効果が出て、消費者物価指数(CPI)は順調に低下し、当局目標の2%が視野に入る水準まで来ましたが、今年1月、トランプ氏が大統領に返り咲き、トランプ関税を強硬に推し進めたことで、再び物価が上昇気配を見せたことはご存じの通りです。運悪く、同時に労働市場の鈍化が見られ、教科書的に言えば利下げを行うところですか、台頭したインフレ懸念を前にFRBは金融政策の舵取りが極めて難しい局面に直面している状況です。
米司法当局はパウエル議長に書簡を送り、住宅ローンを巡る不正疑惑でクック理事への調査を開始する意向を示唆するとともに、理事に辞任を促すよう要求しました。トランプ大統領はクック理事が自発的に辞任するか、パウエル議長によって解任されることを望むと、さらに圧力をかけています。しかし、ブルームバーグは、「パウエル議長にクック理事を解任する権限はない。解任できるのは大統領のみで、その場合にも『正当な理由』が必要とされる」と説明しています。仮にクック氏が退任した場合、FRB理事7席のうち4席をトランプ氏の指名者が占めることになり、トランプ氏が大統領にとどまる限り、FRBに圧力をかけ、金利を「自分好み」に操作することが可能になるかもしれません。実際にはそのようなことは不可能かとは思いますが、金融政策に介入しやすくなるのは事実でしょう。FRBでエコノミストを務めたこともあるサーム氏は、「これは政権がFRBに対する支配を強化しようとする新たな試みだ。その支配を得るために、あらゆる手段を駆使している」(ブルームバーグ)と述べていました。
昨日のNYでは米金利が上昇しドル円は再び148円台に乗せ、148円40銭まで買われました。金利上昇を嫌気してNY株式市場では3指数が揃って下落しています。今朝のコメントで最初に述べたように、今夜のパウエル議長の発言は、ややタカ派寄りではないかといった見方が幾分勢いを増したようです。その背景となったのがFOMCメンバーの発言でした。「年内利下げは1回」を、なお支持しているアトランタ連銀のポスティック総裁は、「労働市場の動向は気掛かりな要因となり得る」としながらも、「現時点でも基本的には同じ考えだ」と6月時点の予測に言及して発言。「ただ、足元の環境においては、あらゆる見通しや予測に幅広い不確実性が伴う」とし、「特定の見通しに固執しているわけではない」とも述べています。さらにタカ派的だったのは、クリーブランド連銀のハマック総裁でした。総裁は、明日22日に開催されると仮定して、自身は利下げを支持しないだろうと述べました。「米国のインフレは高過ぎる上、過去1年を通じて上昇基調にある」と21日、ワイオミング州ジャクソンホールでヤフー・ファイナンスのインタビューに答えていました。「もし政策会合が明日開催されるとして、現時点の情報に基づけば、利下げの論拠は見当たらない」と、これまでのメンバーの中ではもっともタカ派寄りの発言でした。一方で、セントルイス連銀の前総裁で、FRB議長候補とされるジェームズ・ブラード氏は21日、フォックス・ビジネスに出演し、「金利は現時点でやや高過ぎる。2026年に向けて100bp程度の引き下げが可能だと考える。それは9月の会合での利下げから始まり、恐らく年内に追加利下げがあるだろう」と語っていました。現在、パデュー大学ビジネススクールの学部長を務めるブラード氏は、FRB議長候補として、ベッセント財務長官と接触していることを明らかにし、9月1日のレーバーデー以降に面談する機会を探っているとしています。ブラード氏は2022年から始まったインフレに対して、早くから大幅利上げの必要性を訴えていました。結局FRBの利上げは後手に回り、それがその後の高インフレにつながったと検証されています。個人的にはブラード氏は状況判断が的確で、慧眼の持ち主だと思っています。またブラード氏は、来年の追加利下げについては、経済指標の動向次第だとし、ドルの基軸通貨としての地位を守る必要性にも触れていました。
いずれにせよ、全てはパウエル議長待ちです。
本日のドル円は147円~149円50銭程度を予想します。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は反発し再び148円台を回復。(イメージ写真提供:123RF)
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2025-08-22 10:15