コムジェストが「安全保障」と「日本株戦略」をテーマにセミナーを開催、国内の成長株投資にさまざまな可能性

フランスの独立系運用会社コムジェスト・アセットマネジメント株式会社は9月4日、東京・日本橋で「安全保障&日本株セミナー2025」を開催した。セミナーでは、第36代航空幕僚長、元空将の井筒俊司氏が「日本の安全保障と組織マネジメント」をテーマにした講演の後、コムジェスト日本株式運用チームによる「日本株式戦略の見通し」の発表があった。セミナーの冒頭であいさつに立った同社代表取締役社長の高橋庸介氏(写真)は、「日本の安全保障は国内の資産運用業に直接的、かつ、甚大な影響を及ぼす。安全保障問題に運用会社も投資家もより強い関心を持つべき」と、当セミナーの狙いを語った。
◆国家安全保障について真正面から向き合う
井筒氏は、「日本の安全保障はきわめて厳しい環境にある」と現状の認識を語った。日本は周辺国にウクライナに戦争をしかけたロシア、独裁政権である北朝鮮、共産党の単独支配が続く中国という3カ国があり、極めて不安定な地域に立地しているとした。そして、南北に長い地形は、防空の意味でも極めて負担が大きいと語った。たとえば、領空侵犯を未然に防ぐための航空自衛隊のスクランブル発進は、毎年700回~800回に及んでおり、これは、欧州のNATO加盟11カ国の合計スクランブル回数(年400件以上)よりもはるかに多い回数になっている。国が定める「国家安全保障戦略」などで使われている「戦後最も厳しく、複雑な安全保障環境」という現実を真剣に受け止める必要があると強調していた。
最後に、「国家安全保障とは、『DIME(外交=Diplomacy、情報=Inteligence、軍事=Military、経済=Economy)』といわれるが、軍事の前に決着がつくようなこともある。国家としての『強さ』はどこにあるのか、総合的に考えていく必要がある」と現在の安全保障に対する考え方を示した。そして、きわめて厳しい安全保障環境にある中にあって国の防衛予算は年々増大し、その財源の確保が課題になっていることに対して「一人ひとりの国民が健康な暮らしを心がけ、医療費等の社会保障費の増大につながらないように心がけること。また、65歳を超えても健康であれば働いて税金を納める生活をするなど、『タックス・ペイヤー』であり続けることを国民がめざすような価値観が浸透することも大事ではないか」と語っていた。国防や国家の安全保障は決して政府や自衛隊だけの問題ではなく、国民一人ひとりが当事者であると語っていた。
◆日本株のクオリティグロース戦略は有効か?
日本株投資戦略について日本株運用チームの共同リーダーであるリチャード・ケイ氏は「日本株は過小評価されていると考えているが、その日本株の物色のトレンドは現状のように『バリュー(割安株)』を高く評価する流れで本当に良いのかということは疑問だ」と問題提起した。国内株については東証のPBR(純資産倍率)1倍割れの企業に対する是正要請などによってガバナンス改善や増配など株主還元の強化などに取り組む企業が評価されやすい環境になっている。このため、コムジェストの日本株運用チームが追求している中長期に2ケタの利益成長が可能な企業に厳選投資するような「クオリティグロース(成長株)戦略」はTOPIX(東証株価指数)と比較しても、ここ数年の運用成績で高いパフォーマンスをあげることが難しくなっている。「2009年6月に現チームでスタートした運用戦略を過去16年にわたって振り返れば、十分にTOPIXを上回る成績になっているが2023年1月に東証が『資本コストや株価を意識した経営の実現』の提言を行った前後からの成績ではバリュー優位となり、グロース戦略は厳しい結果になっている」と現状を報告。しかし、日本には高い成長が可能な企業があり、「グロース戦略を維持することが重要」と語った。
成長する日本企業の代表例として、アナリストの日向惇三郎氏は担当するエンターテインメント企業の現状を紹介した。「アニメ・コンテンツ産業の海外売上高は過去10年、年率20%の成長を続けている」として業界の注目ポイントを語った。その中で「2013年頃に動画配信サービスが始まって、それまで日本のアニメにふれる機会がなかった海外のユーザーにもアニメ体験が広がったことが成長のきっかけと考えられる。そして、2020年のコロナ・ショックで映画の制作がストップしてしまい過去作に目が向いたことがブースターとなって日本のコンテンツが注目された」と近年のゲーム・アニメブームについて解説した。そして、「既に日本のコンテンツ産業は、鉄鋼業や半導体産業と肩を並べるほどの市場規模になっており、もっと国内産業として高く評価されていい」と語っていた。
また、ヘアン・ピン氏は担当する消費関連企業を取り上げ、「日本がデフレからインフレへの転換を遂げたことで、優良企業とそうではない企業との差が明確になり始めた。インフレ経済で値上げを行っても、その金額に納得感のある品質を提供できる優良企業は値上げでも商品の売れ行きが落ちないが、品質が悪い商品しか作れない企業は選ばれなくなってしまう」と、これから優良企業の価値が一段と高まる環境であると語った。そして、春田かすみ氏は担当するヘルスケア企業を取り上げ、「肥満薬は2030年に世界で15億人に必要とされ20兆円の市場になることが期待される大型薬に成長する期待がある」と、「GLP-1受容体作動薬」が経口投与できるようになる将来の見通しを語った。「この関連薬の開発に携わる日本企業などヘルスケア分野には成長期待が強い企業が少なくない」と語っていた。
フランスの独立系運用会社コムジェスト・アセットマネジメントは9月4日、東京・日本橋で「安全保障&日本株セミナー2025」を開催した。(写真は同社代表取締役社長の高橋庸介氏)
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2025-09-09 10:15