アベノミクス正念場・・・様子見続く5月相場=外為オンライン・佐藤氏

 このところ世界の為替市場は、米国経済の強さが目立ち、その影響を受けて市場はなぜかやや停滞の状況が続いている。連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が示唆した金利引き上げのタイミングも不透明になりつつあるが、そんな状況の中で5月相場はアベノミクスの第3の矢である成長戦力の概要が徐々に明らかになると予想されている。正式には6月発表といわれるアベノミクスがいよいよ正念場を迎えつつあるわけだ。ウクライナ情勢に揺れるユーロ市場も含めて、5月はどんな相場展開になるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏にその動向を伺った。(写真はサーチナ撮影) ――米国の雇用統計は予想を超える好結果でした。その影響は?  非農業部門の新規雇用者数が28万8000人も増加するなど、米国景気が予想を上回る好調さを示しました。さらに、3月、4月の雇用者数も大幅な上方修正となり、米国景気は順調さを取り戻しています。  さらに、失業率も6.3%にまで下落。FRBが金融緩和開始のガイドラインとして示していた「6.5%台」をすでにクリアしています。しかし、金利引き上げのタイミングは長期失業者が多い、消費者物価指数が上がらない、といった懸念材料があるとして不透明になりつつあります。  テーパリングもすでに450億ドルまで進んでおり、米国の金融緩和は着実に進んでいるのは事実ですが、現在の米国の長期金利は2.6%程度。長期金利の下落が世界的なドル売りにつながっており、株高は続いているものの米国経済の先行きはまだ不透明な部分があるということです。 ――ドル円の予想レンジは?  ドル円のレンジを決めるのは、今月は米国というよりも、むしろ日本の事情かもしれません。TPPの交渉がどうなるのか、GPIFは日本株の購入枠を拡大するのか。そして、アベノミクスへの期待の原動力となっている成長戦略の行方はどうなるのか、といったところがキーになりそうです。  日銀による追加緩和への期待も徐々に遠ざかっており、そういう意味では5月相場は米国経済以上に日本経済の動向に注目する必要があると思います。  ドル円のレンジは、1ドル=100円-104円とみています。100円割れの可能性は低いと思いますが、状況次第ではこれまでの壁となっていた101円を割り込んで100円台まで円高が進む可能性はあるかもしれません。 ――ウクライナの不安定化でユーロはどうなりますか?  ユーロについては、5月8日の記者会見でECBのドラギ総裁が、「次回会合で行動することもやぶさかではない」と明言したこともあり、今後は政策金利の引き下げ、あるいはマイナス金利への移行といった手を打ってくることが予想されます。  この背景には、1%を下回っているユーロ圏の低いインフレ率があり、何らかの刺激策が必要であることは市場関係者も意見が一致しているようです。何とかユーロの水準を引き下げて、域内の経済活性化につなげたいと考えているわけです。  問題はウクライナ情勢ですが、ロシアの強硬姿勢もしたたかなプーチン大統領の演出ではないかと考えられており、地政学リスクが現実のものになる可能性は低いのではないでしょうか。ロシア経済に決定的な影響を及ぼすような経済制裁は、ロシアにとっても、そしてEUにとっても大きな打撃になるはずです。  そう考えると、5月のユーロ相場も比較的堅調になることが予想され、ユーロ円は1ユーロ=137円-142円、ユーロドルは1ユーロ=1.35ドル-1.41ドルというところでしょうか。 ――豪ドルの見通しは?  豪ドルは対米ドルに対して強くなっていますが、これは「豪ドルが強い」というよりも「米ドルが弱い」とみていいのではないかと思います。ただ、オーストラリアの場合、すでに金融緩和は終わったのではないか、という考え方が市場関係者の間でも出てきています。すでにニュージーランドは金融緩和から引き締め策へ転じており、金利を上げました。  中国経済が相変わらず不透明という事情はありますが、豪ドルも金利の引き上げといった変化があるかもしれません。5月の豪ドル円のレンジは、1豪ドル=93円-97円と予想します。 ――そのほかに注目する通貨ペアは?  クロス円では、「ポンド」と「ニュージーランドドル」がおもしろいと思います。ポンドは前回の金融政策委員会では見送られましたが、次回は利上げが期待されています。利上げとなれば、ポンドが買われることになります。  ニュージーランドドルは、すでに政策金利が2度も引き上げられて、年3.00%になっています。ニュージーランドドルを介したキャリートレードもすでに行われている状況といえます。 ――5月相場のポイントと注意点は?  問題が山積している日本国内の政治の動き、そしてクロス円がポイントになると思います。ただ、マーケット自体はボラティリティの低い、あまり値動きのない相場が続く可能性があります。実際に3か月間の変動率を見ても、過去3か月では6.9%の変動率でした。ちょっと前まで常時10%を超えていたことを考えると、市場が動いていないことがよくわかります。  とはいえ、油断していると大きく動くのもマーケットではよくあること。特に5月は「Sell in May(セルインメイ)」といわれ、米国株が下落しやすい市場でもあります。1日1度はパソコンを開いて値動きを見たほうがいいかもしれません。(取材・文責:サーチナ・メディア編集部)
このところ世界の為替市場は、米国経済の強さが目立ち、その影響を受けて市場はなぜかやや停滞の状況が続いている。ウクライナ情勢に揺れるユーロ市場も含めて、5月はどんな相場展開になるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏にその動向を伺った。(写真はサーチナ撮影)
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2014-05-12 10:45