グローバル化時代の異文化交流

日本経営管理教育協会が見る中国 第286回--有元舜治(日本経営管理教育協会監査役) ● 「ありがとう」もケンカの種に 日中文化・習慣の違い   中国語のラジオ講座で興味深い話題がとりあげられた。     日本に留学している中国人女子学生が、日本人男子学生の彼にパソコンの購入に同行してもらった。機種の選択に迷った彼女は機種の選択を依頼し、おまけに中国では当たり前に行われているが、日本では当たり前ではない値引き交渉まで彼に押しつけた。しぶしぶ引き受けた彼は値引き交渉に成功。   彼が「値引きはうまくいったよ。ありがとうぐらい言ったら?」と軽い気持ちで言うと・・・   彼女:「こんなちっぽけなことで感謝しなきゃいけないの?」   彼:「ぼくが手伝ってあげたのに、ありがとうの一言も言わないのか?」   彼女:「私がありがとうと言うのを聞きたいの?」   彼:「それは当然のことではないかな?」 と言い合いになり、せっかくのデートなのに彼女は腹を立てて帰ってしまった。   彼女は帰宅して同居の先輩から「日本人は中国人の私たちと違って、たとえ家族でもありがとうと言うのが当たり前なのよ」となだめられ、「家族でもありがとうと言わなければならないの?なんてよそよそしいんだろう」と思った。   その後、彼女が買ったにもかかわらず持ち帰らなかったパソコンを彼が持ってきてくれたので・・・   彼女:「お手数をおかけしました」   彼:「どういたしまして(不用謝)」   彼女:「ありがとうと言わせようとしたり、(不用謝)=感謝しなくていいと言ったり、わたしはどうしたらいいの?ありがとうとかごめんなさいなんてセリフは耳にするとよそよそしい感じがするのよ」   彼:「そういうことだったのか!これからは言わないことにしよう」 と仲直りする。 ● 「菜根譚」には   処世の書といわれる中国の古典「菜根譚」にはこんな記述がある。    「親は子をいつくしみ、子は親に孝養をつくす。兄は弟をいたわり、弟は兄を敬う。これは肉親としてきわめて当然の情愛である。どんなに理想的に言ったとしても、感謝したり感謝されたりする筋合いのものではない。もし、そのことで恩着せがましい態度をとったり、施しを受けたような気持になるならば、それはもはや他人同士の関係となり、商人の取引と変わりがない」(守屋洋 決定版菜根譚 PHP研究所刊)   最初この文章を読んだとき、当たり前のことが書いてあると思ったが、中国人の当たり前と、日本人の当たり前には大きな違いがあるようだ。この文章をちゃんと読めば家族の間で「ありがとう」とか「ありがとうくらい言ったらどうだ」などと言うのは、他人同士の関係、商人の取引ということになる。 ● 日本の常識は世界の非常識?   家族でも、友達でも何か頼んでやってもらったら「ありがとう」の一言は家族関係、友達関係の潤滑油として日本人として当然だと思うし、郷に入れば郷に従えで、日本では日本流でいいのではないかと思うが。   訪中の際、日本に長期間滞在した中国人同士の夫婦に聞いてみると「中国人は家族間ではありがとうは言わない。我が家は日本流でやっています」と。飲食店を経営している日本に数年間滞在した中国人の友人に聞くと、「日本にいたときの習慣で従業員にありがとうと言うと、やめてくれと言われる」そうだ。日本で暮らした経験があると日本流のほうが居心地がいいという。   このような日本での常識は、他国の人にとっては非常識かも知れず、外国人との付き合いには相手の習慣や考え方を知ることが大切だ。(執筆者:有元舜治・日本経営管理教育協会監査役 編集担当:水野陽子)    
中国語のラジオ講座で興味深い話題がとりあげられた。日本に留学している中国人女子学生が、日本人男子学生の彼にパソコンの購入に同行してもらった。機種の選択に迷った彼女は機種の選択を依頼し、おまけに中国では当たり前に行われているが、日本では当たり前ではない値引き交渉まで彼に押しつけた。しぶしぶ引き受けた彼は値引き交渉に成功。
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2013-12-25 14:00