今こそチャンス・・・日系企業が中国で成功するためのマネジメント

日中を取り巻くニュースを見ると、日本人は中国に対してうんざりしているのではないか? 商船三井の船の差し押さえに対して40億円を支払ったことや、日本軍が行った731部隊による細菌実験、南京大虐殺に関する状況のメモ、日本の東北部への移民等を記したメモが見つかった(人民網、4月25日、吉林省にて)等。ネガティブ情報を探せばたくさん出てくる。
一方で、中国政府も日本政府も水面下で動いている。
汪洋副総理が15日、訪中した河野洋平元衆議院議長と面会。(河野氏は国際貿易促進協会会長として訪中)。その前に、胡躍邦氏の息子である胡徳平氏が訪日して安倍首相とも会談。これらは明らかに、中国国内問題を解決するために、日本に送っているシグナルと間違いない。中国国内問題とは、環境問題、格差問題、中所得の罠の問題、政治改革などだ。中国政府は日本の技術をのどから手が出るほど欲しいのだが、表だってはなかなか言えない。
世界情勢は混とんとし、ウクライナ情勢、シリア問題、イスラエル問題を取ってみても日本はどの立場をとるか微妙な状況だ。中国との関係も微妙だ。少なくとも中国と経済関係を強くすることが日本経済の活性化につながることは間違いない。
日本の政治の状況を踏まえ、経済活動中心の人らは、問題を最小限にする必要があります。特に中国については気を使う必要がある。
マスコミの情報に流されるべきではない。中国の現地法人で行うべきことは、特別なことではない。当たり前のことを当たり前のように行うことで、中国人社員からの信頼感をつかめると確信している。中国は法治国家ではなく、人治国家であるためであるので、「業績と人」という点に焦点を当ててマネジメントをする必要がある。重点は下記の3点である。
■1.経営方針の明確化による多様性マネジメント実践
日本ではかつて、高度経済成長が続いた。成長が当たり前の国だった。そんな時代の日本戯行は、確固たる経営方針がなくてもある程度の実績を積むことができた。中国ではまだ高い経済成長であるが、「なんとなく」は全く通用しない。「会社人間」が当たり前だった日本とは異なり、中国人にとって「会社がすべて」ではない。中国人の考え方は多様だ。中国人は「異分子の集まり」といってよい。
だからこそ中国における日系企業にとって、経営方針の明確化による社員の一体化促進が絶対に必要だ。
中国企業のレベルはどんどん上がっている。経営者も英語は当たり前のようにでき、マイケル・ポーター、フィリップ・コトラー、デイビット・アーカーらの戦略論、マーケティング論、ブランディング論の考えを習得した者が多い。日系企業も経営方針をしっかりと分析し、立案した方針を社員に説明できるよう、努力してほしい。
さきほど、中国人を「異分子の集まり」と書いた。日本人と中国人の違いがあるだけではない。中国人の間にも世代(80年代、90年代生まれなど)、出身地(上海、北京、広州、成都等)、戸籍(農民戸籍・非農民戸籍)、留学経験別などによって大きな違いがある。「中国人」というくくりだけでは、対処できない面が出てくる。このことが、が中国における多様性マネジメントの実践につながる。
■2.評価基準の明確化と実践
自分がどのように評価されているのか? 中国人社員にとっては、非常に気になることだ。中国では、社員がお互いの給料を見せ合う文化がまだ残っている。不公平と感じれば、上司や会社側にすぐに文句を言いだすというリスクが存在する。経営方針が明確化されていれば、会社が個々の社員に「求めている成果」もはっきりする。つまり、他の社員と待遇が違った場合でも、納得しやすいわけだ。
階層別では3つのスキル(テクニカルスキル、コンセプチャルスキル、ヒューマンスキル)をベースに成果を評定したり、会社によっては、バランススコアカードによる4つの視点「財務の視点、顧客の視点、業務プロセス、学習と成長」での評価もよいだろう。各要素を職務記述書(Job Description)に落とし込み、評価して徹底実践させるわけだ。
日系企業は、本社でもこの評価基準の明確化ができていないことが多い。したがって、作成などにあたっては外部企業の支援を得ることが必要になると思われる。
■3.非金銭的な報酬を与えること
中国はやはり、人で繋がっている社会だ。給与は上げられない場合でも、上司が部下を食事に招待するなどで、個人的な関係を構築することが求められる。理想を言えば、「部下を食事に誘う必要もある」という事情を考慮して、日本人総経理(現地法人社長)などの給与はやや高額に設定しておくべきかもしれない。というのは、部下との食事代を会社の経費で落とすと部下にとって“ありがたみ”は大きく損なわれ、「人間関係を構築する効果」は半分以下になってしまうからだ。
アメリカの成果主義は個人主義の国であるから成立するのであって、アジアのような家族・集団主義の国では、評価体系の客観化と同様に人のつながりは重要な視点である。食事の機会を通じて「この上司からは学ぶものがある」と実感させるわけだ。
現在の中国は、最低賃金が上昇していると言っても、大卒レベルの人材は余っている状態だ。あまり高い給与を出さなくても、大卒レベルの優秀な人材が入社していくる。しかし、それに甘えて「人の面でいい加減」なことをしてはならない。「人材」は「人財」、つまり企業にとっての財産だ。「材料」や「駒」にすぎないなどと考えてはならない。
日中間に吹き荒れてきた「逆風」もいずれはやむだろう。その時になれば、地道な経営努力を続けてきた企業が「政治気象の大きな追い風」の恩恵にあずかれると確信している。
日本の人事部向けに発行されている雑誌にも掲載しているので、ご興味があればご覧頂きたい。(The HR Agenda Magazine)(執筆者:廣田(李) 廣達 提供:中国ビジネスヘッドライン)
日中を取り巻くニュースを見ると、日本人は中国に対してうんざりしているのではないか? 商船三井の船の差し押さえに対して40億円を支払ったことや、日本軍が行った731部隊による細菌実験、南京大虐殺に関する状況のメモ、日本の東北部への移民等を記したメモが見つかった(人民網、4月25日、吉林省にて)等。ネガティブ情報を探せばたくさん出てくる。
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2014-05-15 11:00