【投資戦略2014】野村證券、日本株はグローバルでトップの魅力

野村證券エクイティ・リサーチ部チーフ・ストラテジストの田村浩道氏は、「2014年は日本株がグローバル株式の中で最優先される市場になる」という。2014年の株式市場は、企業のEPS(1株当たり利益)成長を評価する局面となり、成長率が一番大きいのが日本という考え方だ。業績の変化率から、電機・精密、機械を注目業種にあげた。
――2014年の日本株の投資判断は?
2014年のグローバルな株式市場の株価パフォーマンスは、グローバルリスクプレミアムが2011年-12年に2シグマレベルという高い水準から0.4シグマ水準に低下してきていることから、「PER(株価収益率)の拡大による株価上昇」ではなく「EPSの成長をドライバーとした株価上昇」になると見通しています。
そこで、2014年の企業業績を市場別に検証すると、世界平均のEPS成長率が10%で期待される中、日本は19%成長が期待され、世界でもっとも値上がりする市場になりそうです。次いで、アジアの新興国市場(16%成長)、英国を含むヨーロッパ(14%成長)という順です。EPS成長率からみると、米国は6%成長しか見込まれず、魅力に乏しい市場ということができます。
――日経平均株価の見通しは?
四半期ごとの日経平均株価のターゲットは、2014年3月末が1万6000円、6月末が1万5000円に調整し、9月末に1万6000円を回復。12月末のターゲットは1万8000円と見通しています。1万8000円の根拠は、2016年3月期のTOPIXのEPSを97.5円と予測し、PER=15倍で計算すると、TOPIXは1500ポイント。NT倍率を12倍で計算すると、1万8000円となります。
1月-3月は海外機関投資家の買い越し額が目立って多くなる時期にあたり、また、1月にスタートする少額投資非課税制度(NISA)も意外と大きな押し上げ効果になりそうなので、現在想定している3月末1万6000円を超えて値上がりすることもあり得ると思います。
4月-6月で株価が下がると予想しているのは、消費増税の影響を勘案しました。増税によって負担が増大する部分は、政府による政策パッケージ5.5兆円で相殺されるので、実質的な悪影響はないとは見ていますが、センチメントの部分でネガティブな反応を予測します。
たとえば、日銀の異次元金融緩和第2弾を4月にも実施されるという期待感は高まっていますが、実際の発動は7月頃にズレ込むことが予想されます。日銀は消費増税の影響が経済指標で確認した後になるでしょう。また、金融緩和の内容についても、すでに日本株ETFを1兆円くらい買い上げるなどと言われるほどに強烈な緩和策の期待が膨らんでいるので、実際に出る緩和策が市場を驚かせるほど大きな内容になるとは考えにくくなっています。
したがって、日銀の緩和策に対する期待感がある間は、株価は盛り上がるでしょうが、実際に緩和策が実行されれば、センチメントは低下し、株価も下落すると思います。年後半になると、企業業績の向上を評価して徐々に株価が値上がりする展開になるでしょう。
なお、当社の為替に関するハウスビューは、2014年6月末が1ドル=106円、1ユーロ=138円。12月末は1ドル=110円、1ユーロ=132円です。ただし、日本株の見通し前提は1ドル=100円と置いています。100円より円安に動いた場合は上方修正余地があるでしょう。また、日本株は、リスクオフによる世界株安、また、円高に対しては脆弱な市場になっていますので、為替が想定を超えた動きをした場合は、現在の株価見通しは再考する必要があります。
――為替以外に、現在の想定シナリオが崩れるリスクはありますか?
実際に海外も含めた機関投資家と対話をしていると、「リスクは何?」ということは、よくでてくる話題です。世界景気の見通しに不透明要素が後退し、想定しうるリスクが顕在化する確率は小さくなっていると思います。
ただ、環境に安心しきってしまっていることが、リスクにはなり得ます。過度な楽観視をしてしまうことなく、米国や中国の経済指標などを注意深く見て、世界の経済が安定的に拡大していることを確認していくことが重要です。
――そのような市場見通しの中で、注目の業種は?
企業業績を株価が評価することを考えると、2014年度業績変化率が大きな電機・精密、機械などの業種がピックアップされます。
電機については、悲観から戻ってきたといえます。円と韓国ウォンとの為替レートも、急激なウォン安で日本企業の輸出競争力が阻害されていた部分も円安修正されてきているため、国際競争力も回復する見通しです。民生用エレクトロニクスには依然と厳しい見方が必要ですが、日立 <6501> 、東芝 <6502> 、富士電機 <6504> など産業用エレクトロニクスは、今・来期ともに力強い業績伸長が見込まれ注目しています。
また、機械は、国内の設備投資が増大してきている恩恵をストレートに受けます。アベノミクス相場の核といえる業種です。新興国に大きく事業シフトしたところの苦戦は続きそうですが、国内で高いシェアとブランド力のあるアマダ <6113> 、SMC <6273> など。また、米国で好調なクボタ <6326> などが注目されるところです。(編集担当:徳永浩)
野村證券エクイティ・リサーチ部チーフ・ストラテジストの田村浩道氏は、「2014年は日本株がグローバル株式の中で最優先される市場になる」という。2014年の株式市場は、企業のEPS(1株当たり利益)成長を評価する局面となり、成長率が一番大きいのが日本という考え方だ。(写真は、田村浩道氏。サーチナ撮影)
japan,economic
2013-12-25 13:45