【投資戦略2014】大和証券、賃金上昇や法人税減税の議論進展がポイント

  大和証券・投資戦略部情報課の高橋卓也副部長は、2014年の日経平均株価の高値を1万7000円から1万9000円とみた。期初から上値を試して1万7000円台を付け、春からは調整。秋頃から中間期の決算を見極めつつ、為替の動きなどを見ながら1万9000円をうかがう年末高の流れを想定しているが、1万9000円を試すには、デフレ脱却に向けた賃金の上昇や、法人税の減税の議論進展がポイントになるとの見方を示している。 ――日経平均株価の動きは?   2014年の日経平均株価の高値は1万7000円超と考えています。これは年末に向けてドル・円が105円台に向かって推移すると想定し、予想PERは15倍として算出しました。為替の水準を110円と更に円安方向へ見直し、予想PER16倍まで買われるとみるならば、1万9000円をうかがうことがあってもおかしくはないとみています。例えば、主要企業200社の過去の平均PERは、リーマン・ショック後の09年やITバブルの01年といった特異な状況を除外すると、15―20倍で推移していました。現状の日経平均のPERはこのレンジの下限で、少なくとも割高ではないといえます。   下値は1万5000円を想定しています。小売業など個人消費関連銘柄を中心に消費税引き上げの反動減が懸念されます。また、4月下旬から3月期決算企業の次期業績予想が発表されます。例年は期初の時点で保守的に予想を見積もる企業が多く、数字自体は投資家の失望を招く恐れもあります。この時期に調整することになりそうです。   為替の動きですが、日米の金融政策の方向性は真逆である点がポイントです。日本では追加の金融緩和が期待されています。来年度明けから消費税引き上げがあるうえ、「黒田バズーカ」とも言われたマネタリーベースの倍増や国債購入の長期化、ETFやREITの購入額の大幅増など、いわゆる異次元緩和を打ち出してから1年ということもあって、来春にも日銀は追加の金融緩和に踏み切るのではないかとの見方が広まっています。   一方の米国は、懸念されていた12月18日のFOMCで量的金融緩和の縮小が決まりました。縮小規模が市場の懸念ほどではなく、5月のようなネガティブな動きは限られましたが、基本的にFRBは金融緩和の出口を模索する段階に差し掛かっています。日米の金融政策の方向性の違いを反映し、両国の10年国債利回りの金利差は今後、拡大していくと考えられます。ドル・円はこの金利差との連動性が非常に高い。日米の金融政策の方向性が変わらない限り、ドルが買われて円が売られやすくなる状況が定着することになるでしょう。 ――日本経済全体の動きは?   成長率でいうと、第1四半期(1―3月)はプラス成長ですが、2014年の懸念材料として第一に挙げられる消費税引き上げで、第2四半期(4―6月)についてはマイナス成長を予想しています。第3四半期以降(7―12月)については、脱デフレへの期待でプラス成長を見込んでいますが、これは賃金の上昇がカギになってくるでしょう。消費者の購買意欲が高まることが脱デフレに繋がります。足元では特別給与(ボーナス)が増加しましたが、肝心なのは所定内給与です。来春以降にベースアップがどれだけ浸透していくかが注目されます。   また、企業の動きですが、来年から新たな指数として加わる「JPX日経インデックス400」が注目です。ROEや流動性の高い銘柄が選ばれており、年金のパッシブ運用のベンチマークもTOPIXではなく、こちらの指数を採用すべきとの見方が広がっています。企業側も国際的に低いとされるROEを意識した経営がされていくだろうと考えています。 ――来年の注目企業は?   注目企業の上場観測が相次いでいます。無料通話・SNSのLINEや、人材情報に係わる各種サービスを展開するリクルートホールディングス、ソニー <6758> 、東芝 <6502> 、日立製作所 <6501> の合弁会社であるジャパンディスプレイなどが上場するのではないかと言われており、これらの関連企業などは物色されやすいのではないかと考えています。また、iPS細胞の実用化関連では、ヘリオス(旧日本網膜研究所)が目の難病(加齢黄斑変性)で臨床実験に着手しており、出資企業などの動きは見ておきたいところです。   このほかでは、国家戦略特区の話も進みつつあります。東京オリンピックとの絡みもあり、不動産関連株、消費活性化関連株、羽田空港関連株なども注目です。カジノ関連は政策マターの側面が強いのでどこまで話が進むか不透明ですが、ひとつのテーマになってくるでしょう。1月から始まる通常国会で審議される予定なので、カジノ関連企業は注目されると思っております。年初でいえば、ソチの冬季五輪がありますし、6月はブラジルのワールドカップ開催がありますので、スポーツ関連株も動いてくるかもしれません。 ――今後の日本の政策の課題は?   現状、アベノミクスの3番目の矢である成長戦略に関しては、目先の材料が出尽しとなっており、アベノミクスの三本の矢では、第一の矢でもある金融緩和に投資家の関心が戻ってきてしまっています。例えば4月に金融緩和を実施したとして、その後はどうするのかというのが課題であり、成長戦略に関心をシフトさせるようなアクションが重要です。もっとも期待されるのは、法人税の引き下げです。話がなかなか進んでいないので、すぐに決まるものではないでしょうが、企業の税負担を軽減させることで、国内の生産増加や、雇用・所得の増加、外国企業の誘致などにつながり、非常に重要な政策でしょう。(編集担当:宮川子平)
大和証券・投資戦略部情報課の高橋卓也副部長は、2014年の日経平均株価の高値を1万7000円から1万9000円とみた。期初から上値を試して1万7000円台を付け、春からは調整。秋頃から中間期の決算を見極めつつ、為替の動きなどを見ながら1万9000円をうかがう年末高の流れを想定している(写真は、高橋卓也氏。サーチナ撮影)
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2013-12-25 14:15