【投資戦略2014】楽天証券経研、日本株は1万7200円が限界

  楽天証券経済研究所マネージャー シニアマーケットアナリストの土信田雅之氏は、「2014年の日本株は慎重にみる必要があり、日経平均株価の高値は1万7200円程度だろう」と見通す。2013年に世界でもっとも値上がりした日本株が、一段と高値に買い上げられる材料が足りないという理由だ。また、2014年1月からスタートした「JPX日経400」の登場によって企業の実力がストレートに反映する株式市場に変貌するとみている。 ――2014年の日本株の見通しは?   2013年に日本株は年初から50%近く値上がりし、米国やドイツも史上最高値を更新するほどに値上がりして世界的な株高になりました。来年は、この買い上げられた水準から、さらに一段と値上がりする材料があるだろうかと、慎重に考えた方が良い局面が訪れると考えています。   特に年末にかけての株高は、世界経済の底入れ、回復に加え、先進国の金融緩和によって押し上げられたと考えられます。2014年になっても世界経済は拡大を続け、金融緩和の状態も維持されるので、全体的な株価が堅調に推移するとは考えられます。   大きな下押し懸念はない一方で、もっとも大きく値上がりした日本株が、来年も引き続き上昇する材料が出てくるのか? この点は、しっかり考えたいところです。 ――日経平均株価の予想は?   高値は1万7200円で4月-5月頃に付けると予想しますが、その後は下げに転じて、7月頃には1万4000円程度まで下落すると思います。その後は、企業業績を見極めようとする相場になって、もみ合いになるでしょう。   これまで日本株を押し上げてきたアベノミクスについては、デフレ脱却や、それに伴う企業業績の改善などの期待感で1万6000円近くにまで株高になりました。これからは、2年目を迎えて、アベノミクス効果を見極める段階です。規制緩和や構造改革の実行力が問われているといえるでしょう。   もっとも、年初は消費増税を控えて、金融追加緩和期待や、経済対策への期待感が高まって堅調に推移すると思います。4月下旬から5月にかけて発表される企業業績を評価する段階になって、株価の熱狂が冷めていくと見ます。   高値1万7200円は、2015年3月期の日経平均EPSを1100円程度で想定し、ここにPER15.5倍で算出しました。2014年3月期のEPSを970円と見て、来期14%程度の増益を見込んでいます。これが、20%を超える増益となり、30-40%増益になるような見通しが立てば、日経平均株価は1万8000円や2万円という強気の見通しが立てられますが、それほどの成長は期待できないと分析しています。 ――強気になれない理由は?   まず、米国経済が牽引している世界経済の見通しですが、米国は2013年12月にテーパリング(量的緩和の縮小)を開始することを決定し、これまでの金融緩和に押し上げられた経済から、実態を伴った経済への移行期を迎えます。この移行がスムーズに進むのかどうかは慎重に見極める必要があります。景気回復はゆるやかに続いていますので、決定的な下げ要因はないのですが、全体感としてはもみ合い相場が続くでしょう。   一方、日本のアベノミクスについて、これまでは株高によって歓迎されてきましたが、実際の生活においては、円安による輸入物価の上昇でガソリン価格が値上がりし、小麦粉の価格上昇からうどんが値上がりするなど、生活を圧迫するようなことが起きてきています。生活実感としてメリットが感じられなくなれば、アベノミクスへの支持率が下がることにつながるでしょう。また、法人税の実効税率の引き下げや規制緩和、構造改革などに踏み込めなければ、2014年は、アベノミクスへの見方が期待から失望へと変わる可能性があり、危惧する点です。 ――その中で、注目される銘柄は?   2014年1月から発表される「JPX日経400」が、株価の見方を大きく変える起爆剤になるのではないかと思っています。これまでは、単なる平均株価として、市場の実勢を表す指数が使われていたのですが、「JPX日経400」はROE(株主資本利益率)を取り入れて、企業の実力を見て採用銘柄を決める仕組みになっています。   しかも、採用銘柄は、東証1部、2部、ジャスダック、東証マザーズなど全市場に上場する銘柄が対象になります。まさに、日本における実力のある企業をピックアップして作る指標になり、上場企業としては採用銘柄に加わるために、株主還元や企業価値向上に真剣に取り組むことになるでしょう。   このことによって、より個別銘柄を選別するということが強く意識されるようになると思います。同じ業種であっても、「JPX日経400」に採用されている銘柄と、そうでない銘柄は、その会社内容の違いを検証されるようになります。同じ業種内でも「勝ち組」「負け組」が分かれるような2極化が進むと考えます。   ネット証券にはスクリーニング機能が提供されていますので、売上高や利益の伸びを調べ、安定的に増益していて、しかも、直近の増益率が大きな銘柄を探し出すことは難しくありません。   2014年は、「評価されるべき会社がきちんと評価される株式市場」の幕開けです。「企業が経営努力する元年」になると思います。(編集担当:徳永浩)
楽天証券経済研究所マネージャー シニアマーケットアナリストの土信田雅之氏は、「2014年の日本株は慎重にみる必要があり、日経平均株価の高値は1万7200円程度だろう」と見通す。2013年に世界でもっとも値上がりした日本株が、一段と高値に買い上げられる材料が足りないという理由だ。(写真は土信田雅之氏。サーチナ撮影)
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2013-12-25 14:45