米国が「クシャミ」をすると東京市場では業績予想のサプライズ銘柄に独自人気が還流=浅妻昭治

<マーケットセンサー>   東京市場は、ニューヨーク(NY)市場の「写真相場」、「コピー相場」と久しく言われ続けてきた。そこには売買材料も独自性がなく、株式需給面でも外国人投資家頼りの東京市場の現実がある。だから「米国がクシャミをすると日本がカゼを引く」と自ら卑下せざるを得ないような相場シーンが、幾度となく繰り返されてきた。   その米国市場が、また「クシャミ」をしたようである。史上最高値を更新してきたダウ工業株30種平均(NYダウ)が、一転して5月14日に101ドル安、15日に167ドル安と大幅続落したのである。前週末16日は44ドル高と反発したものの、米国市場に急に「リスクオフ」ムードが漂い始めたのである。これを端的に反映したのが、米国の長期金利の低下で、「リスクオン」の債券売り・株式買いが、「リスクオフ」の株式売り・債券買いに逆転したのではないか、この「グレート・ローテーション」の巻き戻しは、先行きの米国景気のピークアウトを示唆しているのではないかとの懸念を強めた。   もともと東京市場は、NYダウが連日、最高値を更新しているにもかかわらず日経平均株価が、1万4000円台を試す安値圏で推移し、東証第1部の売買代金も、2兆円を割る閑散商状を続けてきた。この不安全燃焼は、まさに米国市場の「逆写真相場」で、これについては東京市場の固有要因が指摘されてきた。4月1日からの消費税増税に伴う想定を上回る景気下ぶれ不安や「アベノミクス」の賞味期限切れなどである。そこに米国市場の「クシャミ」である。日本は、「カゼ」どころか、「肺炎」への重症化まで心配しなくてはならなくなる。   しかしである。この日米相場のギャップを少し視点を変えて見直してみると、違う相場シーンが浮かび上がってくる。東京市場が、米国市場の「レントゲン相場」を演じたと牽強付会してみるのである。「相場は相場に聞け」の相場格言通りに、東京市場の低迷をNYダウの連日の最高値更新の裏に潜んでいた「リスクオフ」のカゲをレントゲン写真のように的確に先読みして映し出していたとするのだ。そうであれば、東京市場は、すでに米国市場の「クシャミ」を織り込み済みということになるはずである。   この東京市場の「レントゲン相場」仮説が、当たらずとも遠からずであるとすれば、ここからの相場スタンスとしては、慌てて日本株を売り急ぐ必要はない。仮に米国市場が調整色を濃くしたとしても、これを横目にむしろ絶好のチャンスとして下値買いを優先して間違いないはずである。もちろん、この時の投資ターゲットは、米国市場の影響を受け難い東京市場の独自材料を買い材料とし、独自セクターに狙いを定めることは、必要最低条件にはなる。   そこで注目したいのが、決算発表が終わって、今3月期予想業績にサプライズがあった銘柄である。今後の決算内容の分析、証券各社の投資判断の引き上げなどで株価評価がアップする可能性があるからである。もともと今3月期業績は、消費税増税の駆け込み需要の反動減で慎重な業績見通しが相次ぐとみられていた。それが意外にも業績続伸を見込む銘柄、セクターが散見され、業績的にサプライズとなっていた。決算発表の進行とともに目立ったサプライズ・セクターを上げると、海運株を筆頭に航空測量株、ニッケル市況関連のステンレス株、消費者金融株、家電量販株、再生エネルギー関連株、それにこれをセクターといっていいのかどうか難しいが、例の小保方晴子ユニットリーダーの論文ねつ造問題がなお尾を引く理化学研究所のグループ会社などと続いた。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)
東京市場は、ニューヨーク(NY)市場の「写真相場」、「コピー相場」と久しく言われ続けてきた。そこには売買材料も独自性がなく、株式需給面でも外国人投資家頼りの東京市場の現実がある。
economic
2014-05-19 11:30