ヤマト運輸、クール宅急便の品質管理の徹底が進捗、中元も万全に

 ヤマト運輸は2014年5月20日、東京・大手町で「クール宅急便の再発防止に向けた取り組みの進捗に関する記者懇談会」を開催した。2013年10月下旬に一部報道によって表面化した「クール宅急便問題(低温宅配便サービスに温度管理などで不適切な取り扱いがあった)」への再発防止策の実情について報告。また、中元繁忙期における「総量管理制度」について説明した。  クール宅急便品質管理対策推進室長の森岡紀之氏は、「クール宅急便の品質に問題が生じてしまった原因は、現場の声が本社に十分に届いていなかったという反省に立って、人の問題、そして、設備の問題の両面から対策を取ってきた」と、これまでの取り組みを振り返った。2013年11月1日に社長直轄の組織として「クール宅急便品質管理対策推進室」を立ち上げて以降、全役員と労働組合の代表が参加する会議を毎月2回のペースで継続して開いているという。  13年12月1日付けで、全国の約4000拠点を巡回する160名の「品質指導長」を配置。現場の相談役として、問題となった早朝作業においても一緒に作業に参加するなど現場レベルでのコミュニケーションを強化した。また、全国1690名のエリア支店長は、全員に食品衛生法に基づく「食品衛生責任者」の資格を取得させることで、クール宅急便の主要な利用案件である食品の安全管理について意識を高めた。  森岡氏は、「品質指導長の配置によって、現場の問題点を洗い出すともに、各現場で行われている工夫などの好事例についても全社的に共有化できる体制ができた。社内イントラには品質指導長が好事例を書き込んで情報を共有化する掲示板も開設し、何十件にも及ぶ好事例が記載されている」と、現場における対話の促進効果を語っていた。  一方、冷蔵/冷凍スペースを変更可能なクール宅急便の新型車両、クールコンテナ、コールドバック・シートなどの設備の増強は、2014年5月20日現在で前年比約150%と、50%程度の能力増強を実現。さらに今年6月末までに全国で57台導入する新型車両は、上期中に164台を増強し、全国221台体制とする。  また、6月末から7月初頭にある中元需要による繁忙期については、独自のビッグデータに基づいた「総量管理制度」を実施。各拠点への翌日の到着量を事前に通知することなどによって、仕分け配送などの作業がスムーズに進む体制を整備。さらに、大手百貨店や流通大手などの大口荷主に対しては、7月初旬に集中する物量を平準化するために「出荷のピークシフト」を依頼することで、通常月の3倍の物量が集中する繁忙期にも、クール宅急便等の業務品質が落ちることがないようにする。   記者懇談会に出席したヤマト運輸の常務執行役員、長尾裕氏は、「各拠点のキャパシティの“見える化”と、キャパシティの拡大に努めてきた。この夏の中元時期については、大口荷主様に出荷とお届けの調整をお願いするとともに、荷物を容積で把握するため、実サイズでの計上をお願いしている。シミュレーションでは前年比10%超の物量増にも耐えうる体制ができた」とこの夏の配送に万全を期すと語った。  さらに、大口荷主先等の法人を対象に進めている運賃の適正化に向けた交渉について、「交渉がまとまった荷主様から順次、新料金での取り扱いを始めている。時間をかけて丁寧に交渉していきたい」と語っていた。(取材・編集担当:徳永浩)
ヤマト運輸は2014年5月20日、東京・大手町で「クール宅急便の再発防止に向けた取り組みの進捗に関する記者懇談会」を開催した。
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2014-05-20 15:45