高齢化の進む中国・・・桁外れのシニア市場規模

日本経営管理教育協会が見る中国 第307回--大森啓司(日本経営管理教育協会会員)
● 本年度の共同研修テーマ
日本経営管理教育協会は毎年、中国北京市の外郭団体と共同研究を行っており、シンポジウム等を通じて情報交換と交流を実施している。昨年度は「水汚染」をテーマに9月に北京・北海公園で実施されたが、本年度は「高齢者問題」がテーマとなり、この5月13日から会員各位が収集した日本での事例などを、僭越ながら小生が代表として北京に持参することとなった。今回は中国における高齢者問題についての最近の状況について論じてみたい。
● 止められない中国の高齢化
日本では「少子高齢化」に対する理解・取り組みが社会に浸透してかなりの年月が経っているが、中国も高齢化社会への対応を急いでいる。中国での60歳以上の人口は2013年に2億人を突破、1979年に導入した「一人っ子政策」により、2012年から労働力人口が減少に転じるなど、人口構成にゆがみが生じてきている。
中国政府は、2013年末に夫婦のどちらか一方が一人っ子なら第2子の出産を認める緩和策を発表した。しかし、経済成長により物価が上昇していく中、食料や家賃などにかかる生活費も上昇してきており、2人めを産める家庭も限定されているようである。加えて日本と同様、都心部においては核家族化が進み、家庭内での高齢者の介護能力は衰えており、日本と全く同じ課題を抱えている。
● さすが中国!桁外れのシニア市場
先日あるテレビ番組で、中国の民営投資会社が米国投資会社と組んでシニア向けのマンション運営に乗り出すという特集が放映されていた。日本企業にはインフラ面ではなく、介護人材を育成する視点から力を借りたいとのことであった。日本企業が有する健康管理のノウハウへの期待は高く、商機は拡大するとの予測があった。さすが「お・も・て・な・し」の日本、ここでも柔のノウハウが期待されていると痛感した。もうひとつ日本に期待されていることは警備・緊急対策で、大手警備サービス会社セコム等が事業拡大の機会を伺っているようである。
もっとも、この視線の先にあるのは現在40歳~50歳の働き盛りの富裕層のようである。彼らが60歳を超える頃には、年金に加えて投資で得た所得によりかなりの消費力を持つ。彼らは余生を安心してすごせる投資物件を求めると見られており、単に不動産だけではなく、医療・介護といった分野で新たな付加価値のあるサービスを提供して高所得者層の取り込みを狙う。
その市場規模は2050年前後には5兆元(750兆円)になるとのことである。この数字は予測される日本国内の市場規模の10倍以上であり、まさに桁違いである。中国では今後ソフト面でのノウハウを吸収し、新たな分野への投資拡大が行われることは間違いない。(執筆者:大森啓司・日本経営管理教育協会会員 編集担当:水野陽子)
日本経営管理教育協会は毎年、中国北京市の外郭団体と共同研究を行っており、シンポジウム等を通じて情報交換と交流を実施している。昨年度は「水汚染」をテーマに9月に北京・北海公園で実施されたが、本年度は「高齢者問題」がテーマとなり、この5月13日から会員各位が収集した日本での事例などを、僭越ながら小生が代表として北京に持参することとなった。今回は中国における高齢者問題についての最近の状況について論じてみたい。
china,column
2014-05-21 02:00