カゴメが「かけトマ」で攻勢・・・<うれしい想定外>の大人気

 カゴメ(本社・東京都中央区)が2013年2月に発売した「かけるトマト(かけトマ)」が好調だ。角切りにした完熟トマトにバジルやガーリックなどで味付けしたノンオイルのソースで、基本的には料理に「かける」、「添える」だけで、家庭における料理の世界が味や見た目、栄養面などでグッと広がる“すぐれもの”。予想以上の大人気に、一時は生産が追い付かなくなったほどだ。カゴメは「さらに多くの人に、新たなトマトの楽しみ方として『かけトマ』を広めたい」として、今後も力を入れる考えだ。(画像提供:トレンド総研)  まず、「かけトマ」ヒットの背景には、カゴメのブランド力がある。1899年創業の同社が長年の歴史でつちかった技術力や知名度、商品開発力などにより、消費者の信頼は絶大だ。そして日本人、特に主婦層に根強い健康志向、ナチュラル志向、おいしさ志向などを、同商品はがっちりとつかんだ。とかく「時間との闘い」になりがちな家庭における料理づくりで、「かけトマ」は“強い味方”になってくれる商品だ。  カゴメ・マーケティング部の川口浩司氏によると、「かけトマ」の企画が持ち上がったのは2011年ごろだった。同社ではその前からトマトソースなどは発売していたが、料理初心者の方からは「使い方が難しそう」、「上級者向け」と敬遠されがちだった。そのため、もっと手軽にトマトを楽しんでもらおうと「かけるだけ」の商品を開発することにした。  結果は、同社にとっても「想定外」の大人気だった。発売は2013年2月だったが、3カ月後の5月下旬には販売数が100万個を突破。当初の販売計画をはるかに上回る売れ行きで、売り場では品切れの事態が続出。ついには生産が追いつかず、販売休止をせざるを得ない状況になってしまったという。  川口氏によると、同社のトマト調味料の中でも、異例の大ヒットだった。改めて生産ラインを拡大し、安定供給を実現したが、発売から1年経った現在でも、主婦層を中心に大きな人気を維持している。  もともとは30-40代の主婦をメーンターゲットと考えていた。ところが実際には、「世代を問わない愛用者の輪」が広がった。日常生活では、料理に時間を使えず、出来あいの惣菜を買って並べるだけのこともあるが、「家族に申し訳ない」という気持ちが働く。そのような際には「『かけトマ』という1つの工程をはさむだけで、スーパーで買ったお惣菜に手料理感が生まれる」との評価も寄せられたという。  川口氏は「かけトマ」について、「他の食材との相性がよいのも魅力」と説明。野菜料理、たまご料理、パスタなどだけでなく、から揚げやトンカツなど、スタミナたっぷりの肉料理との組み合わせも「お勧め」で、“がっつり”食べたいという気持ちを満たしつつも、ヘルシーでさっぱりとした食事を楽しむことができるという。  日本最大級の料理ブログポータルサイト「レシピブログ」編集長の久永千恵氏によると、トマトは年間を通じて手に入りやすい食材だが、特に旬の6ー8月にかけては投稿されるレシピが増え、読者からの検索数も大幅に上昇する。同サイトでは今年(2014年)2月に「『かけトマ』レシピコンテスト」を実施したが、「応募レシピが450点以上という大反響」だったという。  生活者の意識・実態に関する調査をおこなっているトレンド総研(本社・東京都渋谷区)は、2014年の「食」トレンドのひとつとして、「かけトマ」に注目。20-50代の主婦500人を対象に3月31日から4月2日にかけてアンケート調査を実施した。  「あなたはトマトが好きですか?」という質問に対しては88%が「好き」と回答。さらに「最も好きな野菜」を尋ねたところ、「トマト」を選んだ人が20.0%で、2位以下の「ジャガイモ」(9.0%)、「サツマイモ」(7.8%)、「ナス」(7.8%)などを大きく引き離した。  「トマトの好きなところ」を聞いたところ、「おいしい」、「彩りがキレイ」、「調理の手間がない」、「栄養価が高い」、「他の食材との相性がよい」といった点が評価されていることが分かった。  一方で、トマトの問題点としては、食べ方や調理法がワンパターンになりがちとの指摘があった(回答者76%が「そう思う」)。そこで「トマトを食べる上で、簡単なアレンジ方法や食べ方があれば取り入れたいと思いますか?」と聞いたところ、86%が「取り入れたい」と回答した。  さらに、「かけるだけのトマト(かけトマ)を普段の食事に取り入れたいと思いますか?」と尋ねたところ70%が「今後取り入れてみたいと思う」と答えた。「すでに普段から取り入れている」という人の13%を加えると、8割以上の主婦が『かけトマ』に関心を持っていることが分かった。  トレンド総研は「かけトマ」を「旬を迎えるトマトの新しい楽しみ方として、『かけトマ』は主婦を中心にますます注目されていくのでは」と評価した。  販売元のカゴメは、今後も「『かけトマ』という新しいトマトの楽しみ方を、より多くの方に知っていただきたい」との考えで、今年はテレビCMやWEB広告にも力を入れる。さらに「かけトマ」の特設ページを開設し、「かけトマ」レシピの紹介などもおこなっていく。  さらに「かけるトマト」のヒットを受け、「カゴメ サルサ」など、“かけるだけ製品”のラインナップを拡充させることも視野に入れている。調理・アレンジが手軽に楽しめる「かけるだけ」製品を通じて、日本人の食生活において新たなトマトの楽しみ方を定着させていきたい考えだ。(編集担当:中山基夫)
カゴメ(本社・東京都中央区)が2013年2月に発売した「かけるトマト(かけトマ)」が好調だ。(画像提供:トレンド総研)
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2014-05-21 14:15