中国の景気の実情は「下振れ」ではなく「低空飛行」=大和総研

 中国の景気の先行きに関する懸念がぬぐえない中、大和総研の経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は2014年5月21日、「中国政府は大掛かりな景気刺激策ではなく、的を絞った景気下支え策を実施し始めている。これは、景気が大きく下振れせず、低空飛行が続いているためである」という見方を示した。齋藤氏のレポート「中国:景気下支えのための微調整が始まる」の要旨は、以下の通り。(グラフは、「中国の鉄道向け固定資産投資(1月からの累計、前年同期比)」。出所=大和総研)  2014年4月、もしくは1月~4月の統計は、内需が低空飛行を続けていることを示している。こうしたなか、中国政府は大掛かりな景気刺激策ではなく、的を絞った景気下支え策を実施し始めている。旧鉄道部から分離独立した中国鉄路総公司の2014年の当初投資計画は6300億元であったが、その後7000億元→7200億元→8000億元へと増額修正された。計画通りであれば、2014年の鉄道投資は前年比22.8%増となる計算であり、2014年1月~4月の前年同期比8.6%増からの大幅加速が意図されている。最大の難所は資金調達であり、4月2日の国務院常務会議で示された鉄道発展基金の早期設立と稼働が不可欠であろう。  不動産(住宅)市場のテコ入れについて、中国人民銀行は、5月13日に商業銀行に対して、家計の1軒目の一般住宅購入の際の住宅ローン審査を迅速に行い、優先的に供与する旨の窓口指導を行った。少なくとも実需のテコ入れは始まろうとしている。景気下支え策ならびに民生改善のための保障性住宅の建設加速と合わせて、今後の動向に注目したい。  ただし、足元の政策が、鉄道投資計画の増額修正や1軒目の住宅ローンの優先貸出といった微調整で済んでいるのは、景気が大きく下振れしていないためである。例えば、今後、固定資産投資が急低下するようなことがあれば、より本格的な景気刺激策発動の可能性は否定できない。  結局のところ、当面の頼みの綱は先進国景気改善に伴う輸出増加である。「偽輸出」とみられる水増しの影響が一巡する5月以降の輸出は、データとしても改善していくとみられる。内需は力強さに欠けるが、年後半は純輸出が久しぶりに(水増しのせいではなく)成長に対してプラスの寄与となることで、通年では7.5%程度の成長を確保する可能性が高まろう。(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)
大和総研の経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は2014年5月21日、「中国政府は、的を絞った景気下支え策を実施し始めている。これは、景気が大きく下振れせず、低空飛行が続いているためである」という見方を示した。(グラフは、「中国の鉄道向け固定資産投資(1月からの累計、前年同期比)」。出所=大和総研)
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2014-05-21 16:30