【投資戦略2014】大和証券、中国株は「改革」見極めでもみ合い

  大和証券投資戦略部副部長のシニアストラテジストの由井濱宏一氏は、2014年の中国株式市場について「大きな期待が感じられない」と語った。2007年に上海総合指数が6000ポイントを付け、3分の1の水準まで下落した後遺症を引きずる展開が続くという。その中で、「都市化」に関連する銘柄が個別に物色されるだろうと見通している。 ――2014年の中国株の見通しは?   中国株式市場は2013年も大きく動かなかったのですが、2014年も強気になれません。上海総合指数で年末2400ポイント程度を予想しています。アジア・パシフィック圏の株式市場では平均PER(株価収益率)は12~13倍程度のところ、中国株では9倍程度で予想をしています。   これは、ちょうど日本株式が1989年の高値から長年にわたって後遺症に悩まされていたことに等しいような状況に、現在の中国が置かれていると感じられるからです。2007年に付けた6000ポイントの高値は、それほど大きな影響を残していると思います。   ただ、日本の銀行が巨額の不良債権処理に悩まされたような状況は、今の中国にはないので20年にわたって低迷したという日本の状況が、そのままあてはまるわけではありません。これは、中国の不動産価格が実需に支えられて、しっかりしていることが安心材料になります。   不動産バブルなどと報道されることもありますが、年率20%以上も値上がりしているような地域は、北京や上海の高級住宅地など一部にとどまります。全国で調査すると前年比5%程度の値上がりになってきているので、このまま落ち着いた動きになると思います。   万が一にも不動産価格が崩落するような事態が起きた場合は、中国経済も深刻な影響を被り、上海総合指数は2000ポイントを割り込むほどの急落にみまわれるでしょう。   また、中国市場の需給面の懸念材料として、1年程度にわたって中断しているIPO(株式新規公開)が再開されることがあります。すでにIPOを待っている企業が、700社とも800社とも言われていますので、これら待機企業が一斉にIPOに動いたら、需給関係を崩して市場の上昇力を削いでしまいます。 ――中国の政策のポイントは?   「成長か、改革か」という議論では、どうやら「改革」に軸足をおいた政策運営を進めていくようです。経済工作会議で2014年のGDP成長率見通しが示されなかったので、来年の目標が「7.5%」か「7.0%」のどちらだということが注目されています。3月に開催される全人代まで、GDP目標の発表は待たなければなりませんが、「7.5%」という成長目標が示されれば、市場は歓迎すると期待できます。   また、金融制度改革は粛々と進むでしょう。人民元の自由化、資本規制の緩和、預金金利の上限規制の撤廃など、徐々に進展すると思います。 ――米国の量的金融緩和の縮小(テーパリング)によって新興国市場から投資資金が流出するという懸念がありますが、中国市場に与える影響は?   中国本土市場に対する影響は、ほとんどないでしょう。そもそも、本土市場には外国人投資家の資金はほとんど入っていません。   むしろ、米国の量的緩和によって投機資金が香港経由で流れ込み、中国の不動産価格を押し上げたという効果があったと思われますが、それらの資金の流入が小さくなれば、不動産の価格上昇を抑え、不動産市場のソフトランディングにつながるプラス効果があります。 ――注目できるセクターや投資テーマは?   「都市化」は、依然として投資テーマになり得ます。セメントや鉄鋼など素材関連。また、都市化にともなって需要が増えるサービス関連も伸びるでしょう。所得の向上によって生活必需品やぜいたく品消費も拡大すると期待されます。   一部で注目されている「一人っ子政策の緩和」については、その効果に疑問を感じています。中国では晩婚化が進み、かつ、夫婦共稼ぎが一般化しています。政府が規制を緩和したからといって、国民が2人目の子供をほしがる夫婦が急増するかどうかはわからないと思います。   一方、PM2.5の問題など、環境保全が社会的な関心事になっていることは事実ですが、環境に配慮した企業経営は、成長率を抑制する力に働きます。環境保全によって個別の企業で潤うところは出てきますが、全体を見れば成長を抑制する効果になると思います。   外国人投資家は、現在のところは、中国の改革の行方を見守っている状態といえます。中国で金融制度改革が進展し、ある程度の成長も確保できるということになれば、香港市場では株価が大きく押し上げられる可能性が高いと思います。   香港株式市場は、ハンセン指数で2万8000ポイント程度まで、現在の水準から20%程度の上昇の可能性があるとみています。先進国市場の上昇に比べ、出遅れ感が強くなっていますので、その水準訂正の動きも期待できます。  
大和証券投資戦略部副部長のシニアストラテジストの由井濱宏一氏は、2014年の中国株式市場について「大きな期待が感じられない」と語った。2007年に上海総合指数が6000ポイントを付け、3分の1の水準まで下落した後遺症を引きずる展開が続くという。(写真は、由井濱宏一氏。サーチナ撮影)
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2013-12-26 14:15