【投資戦略2014】東洋証券、中国株は生活・消費関連に注目

  東洋証券投資調査部シニアストラテジストの奥山要一郎氏は、2014年の中国株式市場について「緩やかな右肩上がりの上昇が期待できる」とする。2012年11月に発足した習近平体制が2年目を迎え、「政策は出揃って、政策実行の年になる」という。経済政策の後押しを受け、個人消費関連や、生活インフラの向上に寄与する「都市化」「環境」に絡む銘柄に注目している。 ――2014年は中国経済にとって、どのような1年間になるとみていますか?   習近平体制が発足して1年が経過し、政策の方向性が定まってきました。全国人民代表大会(全人代、3月開催)、中央委員会第3回全体会議(3中全会、11月開催)、中央経済工作会議(12月開催)を経て、経済政策のメニューは出揃ったといえます。習体制の1年目は、「薄熙来問題」に代表されるような汚職の粛清といったこともありましたが、全体的には、政権がめざす政策を実行しやすくするための“地ならし”の期間だったとみています。   2014年を一言でいえば、「実行の年」と位置付けられるでしょう。「量から質への転換」ということが強く意識され、「所得格差の是正」「都市住民と農村住民の格差是正」「保険制度改革」「賃金の引き上げ」「インフレ抑制」などをめざした具体的な政策が動き出します。   注目されている経済成長率目標は、未だに正式な発表はありませんが、2013年はGDPが7.7%前後の成長となる見通しにあり、2014年についても7.5%成長を目標に掲げ、7.5%以上の経済成長を実現するものと予想します。依然として高い経済成長が続いていると評価できるでしょう。 ――中国株市場の見通しは?   中国は、上海市場と香港市場を分けて考える必要があります。上海市場は、中国の個人投資家の売買比率が高い市場です。上海総合指数は2007年10月に付けた6000ポイント台の高値から2200ポイント前後まで3分の1の水準に落ち込み、数年にわたって低迷を続けています。中国国民の関心は、株式市場から遠ざかり、回復の兆しがありません。   上海市場には、ここ1年間途絶えているIPO(新規株式公開)の再開、信用取引市場の拡大、海外投資家の参入拡大・市場開放など、様々な話題がありますが、それが株価押し上げにつながるかというとまだ疑問符がつきます。この他の何らかのサプライズ政策が出てくる可能性はあるものの、現在の低迷を脱するには大きな力が必要です。上海総合指数は2200ポイントを挟んでもみ合い、10-15%の上昇が見込まれる程度だと考えます。   一方、香港市場は国際的に開かれた市場で、以前は米国市場に連動して動く傾向がありました。現在は、米国と中国の両方に影響を受ける市場になり、2013年のハンセン指数は6月に一時2万ポイント割れまで売られましたが、年後半には米株高につられて右肩上がりとなり、2万2000-4000の高値もみ合いが続きました。現在の株価は、米国の量的金融緩和によるホットマネーでかさ上げされた水準と見ることもできます。もっとも、米国の景気回復などによって香港上場企業の業績は改善傾向にあると見られ、ゆるやかな右肩上がりの上昇を予想します。   ハンセン指数は、2万1000-2万6000ポイントで予想しています。4月-6月に安値を付け、10月-11月に高値を付ける展開になるでしょう。 ――注目する業種や投資テーマは?   中国は、GDPよりも「1人あたりGDP」を重視する政策に転じているため、市民生活に密着した企業に注目しています。これまでは、中国の株式市場では石油や鉄鋼などインフラ整備に伴うオールドエコノミーが人気を集めてきましたが、これから、消費関連や環境関連など、生活の質を高めることに資するニューエコノミー企業が中心になってくると思います。「国有企業」から「民間企業」への流れと言い換えることもできます。   具体的には、「都市化」をテーマに全国で建設が進んでいる地下鉄やモノレール、LRT(次世代型路面電車)に関連する企業。また、「都市ガス」の供給に関わる企業、「環境」をテーマにした大気汚染対策、汚水処理などに関連する企業も活躍するでしょう。   さらに、消費全般の拡大で恩恵を受ける企業も成長します。Eコマースなどネットビジネスの活躍が期待できます。また、「一人っ子政策の緩和」に絡んだベビー用品関連、さらに、医療サービスや製薬関連も有望だと考えます。   また、金融市場の自由化という流れでは証券会社にも注目できます。国有企業の民営化の促進に絡んで企業の買収や合併も活発化する見通しで、M&Aに絡むアドバイザリーフィーの拡大も見込めるからです。(編集担当:徳永浩)
東洋証券投資調査部シニアストラテジストの奥山要一郎氏は、2014年の中国株式市場について「緩やかな右肩上がりの上昇が期待できる」とする。2012年11月に発足した習近平体制が2年目を迎え、「政策は出揃って、政策実行の年になる」という。(写真は、奥山要一郎氏。サーチナ撮影)
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2013-12-26 14:15