【投資戦略2014】東洋証券、中国の構造改革で浮上する成長産業

  東洋証券マーケット支援部の課長代理、井上博行氏は、2014年の中国株式市場について「中国経済が構造改革を進める中で、中国株式市場の2極化の傾向が鮮明になっていく」と見通している。国有の重厚長大産業に代表されていた中国株式市場にあって、近年、インターネット関連企業やカジノ、環境関連など、新しい市場を開く民間企業の株価が大きく値上がりして注目を浴びるようになってきている。 ――米国が量的金融緩和の縮小(テーパリング)に動き始めました。テーパリングによって新興国市場から投資資金が引き揚げられ、新興国の株価や通貨が下落するという見方がありますが、中国市場への影響は?   米国のテーパリングの影響は、懸念されるところではありますが、現在の中国株価の水準は、先進国と比較しても割安な水準にあり、テーパリングを材料として株価が一段と下がることがあれば、そこはむしろ、投資のチャンスと考えられると思います。   たとえば、過去10年平均のPER(株価収益率)を調べると、日経225、米国ダウ工業30種、NASDAQ指数などは、ほぼ10年平均に等しく、S&P500は10年平均よりも高い水準にまで株価が上昇しています。ところが、ハンセン指数は過去10年平均の13.4倍に対して現状は11倍程度、中国企業で構成されるハンセンH株指数においては同12.0倍に対し、8.0倍の水準です。   株価が上昇している局面であれば、テーパリングによる資金流出が問題視されるでしょうが、現在のように割安に放置された市場には、相場を崩してしまうようなインパクトにはならないと考えます。むしろ、景気回復を背景にしたテーパリングの実施ですので、世界の景気が回復に向かうのであれば、中国企業の業績を押し上げる効果が期待できるので、過度に不安視することなく、押し目は買えると考えてよいでしょう。 ――中国株の見通しは?   現在の中国では、構造改革の推進と経済成長をいかに両立させるかが課題となっています。このような環境下では、株式市場全体が上昇するというよりも、より政策や構造改革の恩恵を受けるセクターや銘柄が物色される動きが強まるのではないでしょうか。   たとえば、2013年の年末の相場でも、株価指数は横ばいであっても、環境関連やカジノ、ネットビジネスに関係する銘柄が大きく値上がりする局面がありました。このような動きが、2014年も続くと考えた方が良いと思います。 ――注目セクターや注目する投資テーマは?   環境関連は、ひとつのテーマとして来年も引き続き注目されると思います。大気汚染や水質汚染は社会問題になっていて、暮らしやすい環境を整備しなければ、経済成長とはいえないという世論になってきています。脱硫脱硝装置に強みのある企業や、排水処理などを手掛ける企業は、息の長い成長が見込まれます。   一方で、先端産業育成の動きにも注目しています。最近、「4Gネットワーク整備」が話題になりましたが、このような環境整備の動きは、産業構造の変革を確実に後押しすると考えています。今では中国の若者の消費はネットを介して行われるのが主流になっています。一般の小売業態でも、リアルの店舗とネットの融合を志向する企業が業績を伸ばしていくのではないでしょうか。4Gの設備投資で恩恵を受ける企業、ネットサービス会社などが注目されます。   また、医療も投資テーマになります。人口ピラミッドの変化によって高齢化が進む中、医療の充実は不可欠です。病院ネットワークを展開する企業が、香港市場に初めて上場しましたが、この他にも医療機器メーカーや製薬会社なども、長期的に成長するでしょう。   同じような視点で、「食の安全保障」ということも注目されます。農業関連や食品セクターなどブランド力のある企業は、今後の消費拡大と生活の質向上という大きな流れに後押しされるので注目です。
東洋証券マーケット支援部の課長代理、井上博行氏は、2014年の中国株式市場について「中国経済が構造改革を進める中で、中国株式市場の2極化の傾向が鮮明になっていく」と見通している。(写真は、井上博行氏。サーチナ撮影)
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2013-12-26 14:30