【投資戦略2014】マネックス、中国株は出遅れの見直し買いも

  マネックス証券のチーフ・エコノミスト、村上尚己氏は2014年の中国経済について「モデレートな景気拡大が続く」と見通す。米国経済の拡大をけん引役として世界経済が回復に向かえば、中国の輸出企業も息を吹き返してGDP成長率が8%台に乗せる可能性もありうるとして、先進国株価に対して出遅れが顕著な新興国株に見直し機運も高まろうと語った。 ――2014年の中国経済の見通しは?   中国経済は一時の停滞から持ち直してきていると感じています。鉱工業生産は4-6月がボトムで、7-9月で伸び、10月以降の数字も悪くありません。2013年の夏場には、李克強首相が「景気が減速しても、GDP成長率が7%を下回らなければよい」と言っていると伝わってきて、中国経済の先行きが懸念されたのですが、実際には安定した経済運営がとられていると思います。   ただ、GDP成長率については、今の政策スタンスを考えると、2014年に年率8%を超えて成長するようなことはないと思います。2013年と同じように7%台後半が来年も続くでしょう。もっとも、世界の景気回復によって中国の輸出が拡大すれば、8%台に乗せるような成長もあり得ると考えています。   中国では現在、いろいろな構造調整を進めているので、成長が加速するという状態は想定しにくいと思います。3中全会でも、構造改革を進め、国有企業のビジネスを少しずつ民間に開放していくということが確認されました。国有企業の解体には抵抗はあるでしょうが、安定成長に向けて必要なことなので、推進していくものだと思います。   リーマン・ショックの後で、4兆元の対策をしてしまって、2ケタの経済成長を持続させたのが間違いだったということです。その後、成長率を7%台に下げ、インフレ率を3%台で落ち着かせようとしている。そこに、構造改革を合わせて行おうとしているので、いろんな情報が錯綜して、結果的に、政府が何をしようとしているのか分からないということになっているのではないのでしょうか。   中国経済への懸念材料として、一時期クローズアップされたシャドーバンキングの話も、今のマクロ環境で解消可能だと思います。この問題は、金融の自由化について、4大銀行を自由化する過程にあって、その調整に時間がかかっているということで、日本のようにバブルが崩壊するようなことではないと思っています。したがって、中国は大きな波乱もなく、モデレートな景気拡大が続くと思います。 ――米国のテーパリング(量的金融緩和の縮小)の影響は?   テーパリングで、リスクを取るお金が、新興国から引き戻される可能性は低いと思っています。2013年の夏に、そのような懸念が持たれましたが、下落したのは、個々の経常赤字が要因で、経済力が弱い国の通貨が売られたということでした。既に一度経験しているので、懸念するリスクにはならないと思います。   一方、アメリカは2010年以来の3%成長に復帰すると思います。経済の足を引っ張るリスクファクターがなくなっていっています。テーパリングも引き締めというより調整といった意味合いが強いので、経済的に大きな影響はないでしょう。一歩先に正常化が進んでいたアメリカで、一段と正常化が進んでいって、緊縮財政でなくなるというのが一番大きい変化です。米国経済の復調が、世界経済を引っ張る1年になると思います。   中間選挙によって政治混乱が拡大するリスクは小さいと思っています。米国の景気拡大を阻害するリスクは和らいでいて、経済は緩やかに拡大し、インフレ率も2%に戻っていく方向です。2013年は、アメリカ株が上がっても、経済の成長率は高まらなかったものが、2014年は名目成長率が4-5%に高まって、中国や新興国にはポジティブな影響を与えると想います。   このように世界経済が復調するという恩恵で、一番出遅れているのが新興国です。ブラジル、中国など、不安がぬぐわれるだけでお金が入ってくるでしょう。そして、消費増税の景気下押しリスクの懸念が払拭されれば日本、または、先進国の中では出遅れたヨーロッパなどにもお金が回っていくと思います。アメリカ株は既に高値にあるので、10%程度の上昇にとどまると見ています。 ――中国の投資テーマは?   投資主導から消費主導へという政策に乗った銘柄が良いと思います。社会保障をきちんと制度化し、都市と農村の格差を固定化している戸籍の問題が変わってくると、家計全般に底上げがされるようになると期待はしているのですが、2014年は、そこまで踏み込んでやれるかどうか疑問があります。長い目で見て注目するところです。   反対に、既存の国家権力に近いところは、これまでは既得権益で収益がかさ上げされているので、銀行株を中心になかなか株価が上がらない状況が続くでしょう。
マネックス証券のチーフ・エコノミスト、村上尚己氏は2014年の中国経済について「モデレートな景気拡大が続く」と見通す。米国経済の拡大をけん引役として世界経済が回復に向かえば、中国の輸出企業も息を吹き返してGDP成長率が8%台に乗せる可能性もありうるという。(写真は、村上尚己氏。サーチナ撮影)
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2013-12-26 14:45