成長戦略発表で6月は今年最大の好機に=外為オンライン・佐藤氏

 いよいよアベノミクス第3の矢である成長戦略の概要が発表される。米国でもテーパリング(金融緩和縮小)の行方が気になるところだが、これまで続いた停滞相場が6月には改善されて、活発な動きとなるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏に6月相場の行方を伺った。(写真はサーチナ撮影) ――6月は日本国内のイベント目白押し。その影響は?   6月はいよいよアベノミクスの成長戦略の概要が発表されることになっており、これが最も大きなインパクトを与えることになると考えられます。たとえば、法人税引下げは、早ければ2015年にはスタートさせる予定といわれています。アベノミクスの経済政策は、金融市場では「株買い、円売り」ですから、成長戦略の中心となる法人税率の引き下げは株価の上昇と円安を期待できるでしょう。  法人税率引き下げ以外では、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法会人)の運用方針の変更などがあります。現在のGPISは、株式投資は総資産の12%程度を限度に投資していますが、最終的には20%程度にまで増やし、現在の国債偏重投資から転換する方向で動いています。どの程度、具体的なスケジュールが出てくるかによって、株式市場や為替市場が大きく動くと思われます。 ――その他には、どんな成長戦略が予想されていのでしょうか?  女性の雇用をもっと活性化することで、日本経済全体に刺激を与えるという方向性も今まで以上に具体的な施策が出てくるのではないかと予想されています。いわゆる「骨太の方針」の中に盛り込まれてくるのではないでしょうか。  それ以外では、「カジノ構想」や「プロ野球球団の増設」といった構想があります。カジノ構想は東京都が熱心に誘致していますが、決まれば大きなインパクトになります。新しい成長戦略がどの程度市場に受け入れられるかで、為替市場の動きも大きく違ってくると思います。  さらに、「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉妥結」というニュースが6月中にも入ってくる可能性があります。交渉はかなりの段階にまで進んでいるといわれています。妥結となれば株高円安の方向に相場が動くでしょう。 ――5月は米国の長期金利が下がって市場は膠着状態でしたが、6月の米国経済は?  米国経済の経済指標は、どれも調子がよく米国株も高いのですが、同時に米国国債も買われており、長期金利はいまや2.41%にまで下落。「株高、債券高」が進んでおり、本来市場の常識である「株高、債券安」とは矛盾した動きが続いています。円相場も100円台から102円台を行ったり来たりする膠着相場になっています。  米国経済は、1-3月のGDPがマイナスになったものの、これは悪天候の影響であり、雇用状況などは順調です。この状態が続けば、テーパリングも年内には終わることになりそうです。とはいえ、イエレンFRB議長が就任当時に示唆した金利引き上げのタイミングは、早くても2015年末あたりに後退してしまいました。  景気がいいわけですから、もう少し長期金利が上昇してもいいのですが、今のところ上昇する気配を見せていません。とりわけ、米国債券市場はずっと高値を続けていることになり、債券バブルになっているのかもしれません。目標としているインフレ率2%の達成が難しくなっており、最近の指標でもコアデフレーター(食品・エネルギーを除いた個人消費支出の一種)は0.2%(2014年4月)にしか届いていません。  ひょっとしたら、6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)ではテーパリングの見送りがあるかもしれません。6月6日の雇用統計だけでなく、17-18日のFOMCは要注目です。  ドル円の6月の予想レンジは1ドル=100円-104円とみています。 ――政策金利の利下げを宣言したドラギ総裁ですが、ユーロはどう動くでしょうか?  ドラギECB総裁は、前回のECB理事会で次回の利下げを宣言しましたが、6月5日のECB理事会では、おそらく0.125%の金利引き下げになるのではないでしょうか。プラスして「マイナス金利」とか「長期金利債券の安定供給」を絡めてやってくると予想されています。  デフレ傾向が続いている経済を、何らかの形で活性化させることで、EU経済の不安を取り除くのが目的です。ウクライナ情勢が懸念材料になっていますが、情勢の悪化がすぐに天然ガスの供給ストップ、エネルギー問題に発展するというものではなく、ウクライナについてはそれほど心配する必要がないのではないかと思っています。  ユーロを取り巻くレンジとしては、ユーロ円では1ユーロ=136円-141円、ユーロドルが1ユーロ=1.34ドル-1.39ドルと予想します。 ――豪ドルなどクロス円の状況はどうでしょうか?  オーストラリアに関しては、利上げのタイミングがいつになるのか、という点に注目が集まっていますが、もうしばらくはないかもしれませんね。豪ドルに大きな影響を与える中国経済が相変わらず停滞しており、ベトナムや日本との地政学リスクや国内のテロ事件の勃発で混乱している印象があります。  そういう意味では、6月の豪ドルのレンジとしては1豪ドル=92円-96円というところでしょうか。  豪ドル以外では、ニュージーランド(NZ)ドルの人気が高いようです。利上げも2回実施され、現在の政策金利は3.0%。スワップポイントもついてニュージーランドドルに資金が集まり始めているようです。NZドルの今後の政策金利の動向には、素早く対応する努力をしておくことです。 ――6月相場のポイントと注意点は?  最近の傾向として、小さな材料であっても動くときにきには瞬時に動き、またすぐにもとに戻る傾向が強いことです。相場は、時間との勝負とよく言われますが、最近はさらにその傾向が強まってきています。  6月相場は、アベノミクスの成長戦略の発表やTPP、米国のテーパリングの停止といったビッグイベントが続きます。ひょっとしたら、今年最大のチャンスかもしれません。ニュースが出たのと同時に動くぐらいの「時間との勝負」になりそうです。ニュースには常時、アンテナを張っておきましょう。(取材・文責:サーチナ・メディア編集部)
いよいよアベノミクス第3の矢である成長戦略の概要が発表される。米国でもテーパリング(金融緩和縮小)の行方が気になるところだが、これまで続いた停滞相場が6月には改善されて、活発な動きとなるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏に6月相場の行方を伺った。(写真はサーチナ撮影)
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2014-06-02 13:30