日中韓の関係改善は「三方一両損」の知恵を働かせて解決へ!

日本経営管理教育協会が見る中国 第309回--水野隆張(日本経営管理教育協会営業部長)
● 中国版・大岡越前の物語
数年前に中国の安徽省合肥市を訪れたとき、地元の知人に北宋時代の包拯(ほうじょう)という人物の肖像が安置されている包公祠に案内された。千年ほど前の人物だが、中華圏では知らない人はいないといわれるほど有名で人気のある清廉潔白な官僚であり、名裁判官として知られているということだった。
演劇や講談、小説の題材となって長い間民衆の人気を博してきており包拯が青空のように曇りの無い心で判決を下したことから、人々が彼を尊んで「包青天」と呼んだといわれている。日本では殆ど知られていないようだが、彼のことを説明するとき、日本における大岡越前のような存在だといわれており、事実大岡越前の物語にも影響を与えているそうである。
公平無私な態度で弱き民を助け、悪人どもを挫いていく中華圏で絶大な人気を誇った「勧善懲悪」物語が、日本の大岡越前物語にも影響を及ぼしたという、日中文化交流の歴史をひしひしと感じた次第であった。
● 大岡裁きで有名な「三方一両損」
包拯の物語は日本のテレビドラマ「水戸黄門」や「大岡越前」のように人々に親しまれているが、これらのドラマは日本でも中国でもほとんどが史実とは異なるフィクション物語のようである。「大岡越前物語」のなかにも有名な「三方一両損」の物語がある。
「左官金太郎が3両拾い、落とし主の大工吉五郎に届けるが、吉五郎はいったん落とした以上、自分のものではないと受け取らない。大岡越前守は1両足して、2両ずつ両人に渡し、三方1両損にして解決する」。この物語は、職人気質の頑固者の間に入って大岡越前守が妥協点を提示して解決した大岡裁きとして知られている。
● 「三方一両損」の発想で日中韓の関係改善を
今、日中・日韓関係は歴史認識や領土問題などで最悪の関係に陥っている。貿易会社勤務時代から日中・日韓との貿易取引を通して、また退職後も日中・日韓の経済文化交流を通して両国には多くの知人友人がいるだけに、一日も早い両国との関係改善と人的交流の再開を願っている者の一人である。そこで思いついたのが、「三方一両損」の発想で日中韓の関係改善が図れないものだろうかということである。
現在、中国を発生源とする微小粒子状物質「PM2.5」による、国境を越えた大気汚染は日本・韓国にも懸念を与えている。深刻な大気汚染を克服した日本の経験や技術を積極的に活用し、三国連携の成果を挙げることは不可能ではないであろう。技術協力をテコに成果が上がれば、健康不安を深めている中国の国民にも評価され、冷え込んだ日中関係の修復にも寄与する可能性がある。
尖閣諸島と竹島の領土問題、閣僚の靖国神社参拝などをめぐり、日中・日韓関係はギクシャクし続けており、ナショナリズムの高まりから首脳同士の直接対話が遠のく状況は、経済面でも外交面でも不利益しかもたらさない。そこで、「三方一両損」という知恵を働かせて局面打開に向けて環境問題で連携を深めていくべきではないだろうかと考える次第である。
また、日本は日中・日韓関係の悪化から、日中韓のFTA交渉から離れてTPP交渉へと鞍替えした。しかし中国と韓国の二国だけのFTAではどうしても利害がぶっつかりあってしまいがちであり、交渉は難航しているようである。ここでも「三方一両損」で、それぞれがそれぞれの意見を譲歩することによって成り立つものではないだろうか。中国の経済力が上昇し、米国が軍縮に向かっており、東アジアにおけるパワーバランスが激変しようとしている現在、日本の長期的な進路が問われているようだ。
写真は合肥市包公祠の包拯像。(執筆者:水野隆張・日本経営管理教育協会営業部長 編集担当:水野陽子)
数年前に中国の安徽省合肥市を訪れたとき、地元の知人に北宋時代の包拯(ほうじょう)という人物の肖像が安置されている包公祠に案内された。千年ほど前の人物だが、中華圏では知らない人はいないといわれるほど有名で人気のある清廉潔白な官僚であり、名裁判官として知られているということだった。
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2014-06-04 16:15