TACは5月安値から切り返して底打ちの可能性、収益改善基調を評価

  「資格の学校」を運営するTAC <4319> (東1)の株価は地合い悪化も影響して水準切り下げの軟調展開が続いたが、5月21日安値230円から切り返して足元では250円近辺まで戻している。底打ちの可能性があり、収益改善基調を評価して出直り展開だろう。   財務・会計分野(簿記検定・公認会計士など)、経営・税務分野(税理士・中小企業診断士など)、金融・不動産分野(宅建・不動産鑑定士・FPなど)、法律分野(司法試験・司法書士など)、公務員・労務分野(社会保険労務士・国家総合職など)といった幅広い分野で「資格の学校」を運営し、法人研修事業、出版事業、人材事業も展開している。   13年12月には増進会出版社と資本・業務提携した。増進会出版社は子会社のZ会を通じて通信教育事業などを展開している。当社の教室運営ノウハウや資格系コンテンツ開発力などと、増進会出版社の通信教育ノウハウや教養系コンテンツ開発力などを融合させて、新たなソリューションの提供を目指している。   5月15日に発表した前期(14年3月期)の連結業績(4月2日に増額)は、売上高が前々期比2.2%減の205億26百万円、営業利益が同7.6倍の10億34百万円、経常利益が同3.4倍の12億99百万円、純利益が同16.5%減の8億16百万円だった。配当予想は復配で年間1円(期末一括)とした。   会計系主力講座の不振が続いて減収となり、純利益は前々期計上の移転補償金が一巡して減益だった。しかし事業構造改革による営業費用の減少が寄与して4月2日の増額修正値を上回る大幅営業増益、大幅経常増益だった。売上原価での講師料・教材制作外注費・賃借料の削減、販管費での人件費・広告宣伝費・賃借料の削減などで売上総利益率は同2.7ポイント上昇した。販管費での人件費などの圧縮も寄与した。   セグメント別(発生ベース、内部取引消去・全社費用等調整前)に見ると、個人教育事業は売上高が同4.2%減の136億63百万円、営業利益が5億36百万円(前々期は3億57百万円の赤字)だった。3月中旬以降に消費増税前の駆け込み申込が発生したが、資格試験申込者数の減少傾向を背景に税理士講座や法律分野の各講座が低調で減収だった。しかし事業構造改革の効果で営業損益が大幅に改善し、3期ぶりに黒字化した。   法人研修事業は、売上高が同2.5%増の42億39百万円、営業利益が同8.7%増の12億13百万円だった。自治体等の委託訓練、地方の提携校事業などが低調だったが、景気回復を受けて企業研修が好調に推移した。専門学校に対するコンテンツ提供は宅建・公務員・情報処理が好調だった。   出版事業は売上高が同0.9%増の22億38百万円だったが、営業利益は在庫処分などが影響して同40.6%減の2億59百万円だった。人材事業は売上高が同2.0%増の4億30百万円、営業利益が同56.2%増の97百万円だった。会計業界の人材ニーズが活発化して、夏・冬の就職説明会などイベント収入が増加した。人材紹介成約件数も増加した。   分野別の売上動向(前受金調整後)を見ると、増収は公務員・労務分野が公務員講座の好調で同7.6%増収、金融・不動産分野が宅建やFPの好調で同6.6%増収、情報・国際分野が同1.0%増収、一方で減収は財務・会計分野が公認会計士や簿記の低調で同13.0%減収、法律分野が司法試験や司法書士の低調で同10.9%減収、経営・税務分野が税理士の低調で同5.3%減収、その他が同1.4%減収だった。なお受講者数は合計で同0.4%増加の20万2643人となり、4期ぶりに前期比プラスに転じて下げ止まり感も強めている。このうち法人受講者数は同2.3%増加と好調が続き、個人受講者数は同0.5%減少だったが減少幅が縮小した。   今期(15年3月期)連結業績見通しについては、売上高が前期比1.1%減の203億円、営業利益が同1.5%増の10億50百万円、経常利益が同16.9%減の10億80百万円、純利益が同24.7%減の6億15百万円としている。配当予想は前期と同額の年間1円(期末一括)とした。   前期3月中旬以降に発生した消費増税前の駆け込み申込の反動などで減収、事業構造改革の効果一巡などで営業微増益、投資有価証券運用益の一巡などで経常減益、最終減益見通しとしている。ただし受講者数の下げ止まり傾向を強めていることなどを考慮すれば、会社見通しには保守的な印象も強く、上振れ余地があるだろう。   今期の重点的な取り組みとしては、新講座の開発(教員試験対策講座の本格開講、建築士講座のさらなる拡大)、増進会出版社との共同事業の推進、新規ビジネスとして連結子会社オンラインスクールによる新たな資格学習者層の開拓・囲い込み、持分法適用関連会社プロフェッションネットワークによる実務家向けビジネスの拡大、そしてコスト削減への継続的取り組みを推進する方針だ。収益は改善基調だろう。   株価の動きを見ると、1月高値499円から反落後は地合い悪化も影響して水準切り下げの軟調展開が続いた。しかし足元では5月21日安値230円から切り返しの動きを強めている。6月3日と6月5日には251円まで戻す場面があった。5月21日安値で底打ちした可能性があるだろう。   6月5日の終値250円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS33円24銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間1円で算出)は0.4%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS224円46銭で算出)は1.1倍近辺である。週足チャートで見ると52週移動平均線を割り込んで調整局面だが、13年の上値フシだった250円近辺が下値支持線に転化する形だろう。また日足チャートで見ると25日移動平均線に接近している。これを突破すれば収益改善基調を評価して出直りの動きが本格化しそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
「資格の学校」を運営するTAC<4319>(東1)の株価は地合い悪化も影響して水準切り下げの軟調展開が続いたが、5月21日安値230円から切り返して足元では250円近辺まで戻している。
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2014-06-06 09:30