久世は調整一巡、今期営業損益改善見通し評価で出直り
業務用食材卸の久世 <2708> (JQS)の株価は、全般地合い悪化や前期(14年3月期)の利益減額修正が影響して水準を切り下げた。しかし5月23日安値611円から、足元では650円~660円まで切り返して調整一巡感を強めている。今期(15年3月期)の営業損益改善見通しを評価して出直り展開だろう。
首都圏を中心にファーストフード・ファミレス・カフェ、居酒屋・パブ、ディナーレストラン・ホテル・会館、惣菜・デリカ・娯楽施設・ケータリングなど、外食・中食産業向けに業務用食材の卸売事業を展開し、大手飲食チェーンも主要顧客としている。子会社のキスコフーズは国内(静岡市)とニュージーランドで業務用高級ソース・高級スープの製造販売、久世フレッシュワンは東京都内で生鮮野菜など農産品の卸売を展開している。
中期経営計画では20年3月期売上高1000億円、営業利益20億円を目指し、重点戦略として首都圏・関西圏・中京圏での販路拡大、全国物流ネットワークの強化、中食市場や高齢者施設給食市場の開拓強化、PB商品の拡販や製造利益の拡大、海外事業の基盤確立などを掲げている。中国・成都の子会社は15年3月期に単年度黒字化の見込みとしている。
M&Aやアライアンス戦略も活用して販路拡大を推進している。12年6月には中京圏で酒類販売大手サカツコーポレーションと業務提携した。14年4月には水産物取引の強化を目的として、高級飲食店向けに強みを持つ水産物中卸会社の旭水産を完全子会社化した。
5月12日に発表した前期(14年3月期)連結業績(5月9日に売上高を増額、利益を減額修正)は、売上高が前々期比11.1%増の622億68百万円だが、営業利益が同92.4%減の41百万円、経常利益が同65.8%減の2億38百万円、純利益が同72.8%減の1億円の大幅減益だった。配当予想は前々期と同額の年間12円(期末一括)とした。
売上面では、新規顧客開拓や既存顧客への拡販など営業強化策が奏功して期初計画を上回る増収だった。約62億円の増収のうち新規顧客開拓が約35億円、既存顧客への拡販が約27億円の増収要因となった。販売チャネル別に見ると、ファーストフード・ファミレス・カフェが好調で売上構成比は同3.7ポイント上昇して35.3%となった。
利益面では、円安進行や原料高に伴う商品仕入コスト上昇と販売価格への転嫁遅れ、さらに増収や遠隔地配送の増加に伴う物流費の増加が想定以上となった。売上総利益率は16.7%で同0.3ポイント低下した。売上高販管費比率は16.6%で同0.5ポイント上昇した。販管費・一般管理費の増加13億29百万円のうち運賃の増加が9億20百万円を占めた。売掛債権の貸倒引当金繰入や2月の大雪なども影響して大幅減益となった。
なおセグメント別に見ると子会社の食材製造事業は、自社ブランド商品の販売強化や原価低減などの効果が寄与して売上高が同12.0%増の46億32百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同6.8%増の3億44百万円と好調だった。
今期(15年3月期)連結業績見通しは売上高が前期比9.2%増の680億円、営業利益が同5.3倍の2億20百万円、経常利益が同67.6%増の4億円、純利益が同2.1倍の2億10百万円としている。配当予想は前期と同額の年間12円(期末一括)とした。
売上面では、首都圏・関西圏・中京圏を中心とする販路拡大、既存顧客の底上げ(インストアシェアアップ)、独自性のある新商品の投入など営業強化策の効果で増収見込みだ。約57億円の増収のうち新規顧客開拓で約23億円を計画している。4月に完全子会社化した旭水産も寄与する。
利益面では、商品仕入価格上昇や物流コストを意識した採算性重視の営業活動、商品仕入価格上昇に対する販売価格への転嫁、高付加価値商品の提案による粗利益率改善、物流の採算改善・精度向上・イレギュラー配送の抑制、物流効率化に向けた新システム導入などの効果で営業損益が改善する見込みだ。
株価の動きを見ると、3月期末配当権利落ち後は概ね安値圏700円近辺で小動きだったが、5月9日発表の前期利益減額修正を嫌気する形で水準を切り下げた。地合い悪化も影響して5月23日には611円まで調整した。ただし足元では650円~660円まで切り返して調整一巡感を強めている。
6月5日の終値655円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS54円14銭で算出)は12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.8%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS1235円43銭で算出)は0.5倍近辺である。週足チャートで見ると700円近辺のモミ合いから下放れの形となったが、日足チャートで見ると5月安値から切り返して25日移動平均線突破の動きを強めている。調整一巡して出直り展開だろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
業務用食材卸の久世<2708>(JQS)の株価は、全般地合い悪化や前期(14年3月期)の利益減額修正が影響して水準を切り下げた。
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2014-06-06 10:00