野村證券、日本株で最大レバレッジ「3.5倍」のブル・ベア取扱開始

野村證券の非対面取引専用口座「野村ネット&コール」で、2014年6月12日から「野村日本株3.5倍ブル・ベアファンド」の取り扱いが始まった。日本で初めて3.5倍のレバレッジ(テコの作用)で基準価額が変動する商品だ。同ファンドを企画し、運用する野村アセットマネジメントの投資信託ビジネス戦略部企画チームシニア・マネージャーの吉川龍也氏<写真:左>と同チームのマネージャー、大澄好成氏<写真:中央>、そして、野村證券のネット&コール部 課長の梅津乾三氏<写真:右>に、新ファンドの特徴について聞いた。
――新たに「野村日本株3.5倍ブル・ベアファンド」を設定する狙いは?
吉川 ブル・ベア型のファンドは、以前から多数設定されています。2012年の年末ごろから「アベノミクス」が話題に上るようになり、日本株が上昇してきたことを受けて、ブル・ベア型のファンドへの注目度が急速に高まりました。
ブル・ベア型のファンドは、ETF(上場投資信託)も含めて、投資判断を自分でできる方々の投資手法のひとつとして幅広く活用されています。日々の価格の変動率に対して2倍など大きな変動率で動く「ブル型」、また、日々の価格の変動に対して逆の方向に動く「インバース型(ベア型)」がセットで提供されるのが一般的です。
大澄 たとえば、日経平均株価の2倍の値動きをするETF「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」の時価総額は、2012年12月には160億円程度でしたが、2013年6月に1000億円を突破し、2014年2月には2500億円を突破しました。
この「日経レバレッジ指数ETF」の日々の売買代金は、トヨタ自動車やソフトバンクなど日本市場で人気の株式を上回るほどに活発に売買される日が珍しくありません。
――今回は、日本株の値動きに対して3.5倍程度の値動きになる新しいファンドを設定したということですが、その狙いは?
吉川 インターネット取引などの場において、レバレッジがより高いブル・ベア型ファンドが人気を集める傾向が顕著に見られます。これまで国内公募投資信託で日本株に投資するファンドの最大レバレッジは、3倍の値動きになるブル・ベア型ファンドでした。2.5倍程度の倍率で動くシリーズでは、「野村ハイパーブル・ベア」がブル型、ベア型、マネーファンドの合計で1000億円を超え、レバレッジ型としては大きなシリーズですが、ネット専業証券が公表しているファンド人気ランキングでは、レバレッジ3倍型のファンドがレバレッジ2.5倍型のファンドを上回っております。
――なぜ、「3.5倍」なのですか? 「4倍」や「5倍」などという選択肢はなかったのですか?
吉川 商品を企画するにあたって、過去の様々な市況変動を振り返り、また、売買シミュレーションを繰り返すことによって、レバレッジ倍率の品質を検討しました。理論的には、「4倍」、「5倍」のブル・ベア型を企画することはできます。しかし、例えば「5倍」のレバレッジにしますと、株式市場全体の値動きが前日比で20%以上変動すると、ブル・ベアいずれかの基準価額が理論上100%以上のマイナスに動いてしまうことになります。
また、今回の「3.5倍」を実現するためには、日々大量の先物取引を行わなければならないのですが、商品性を保つためには、急激な価格変動が起こった場合にも、その先物取引を狙い通りに実行する必要があります。あらゆるケースを想定した上で、提供できるレバレッジ倍率として「3.5倍」にいたしました。
――野村證券では「野村ネット&コール」の専用商品として取り扱うということですが、「ネット&コール」で「野村日本株3.5倍ブル・ベアファンド」を導入する狙いは?
梅津 「野村ネット&コール」は、通常の対面取引口座にセットされているネット取引「ホームトレード」とは別口座で、対面サービスを一切行わず、ご自身の判断だけで証券売買をしていただく口座です。対面サービスを行わないことで、売買手数料などを割安に設定しています。
この「野村ネット&コール」での日本株に投資するファンドでは、ブル・ベア型のファンドの人気が高く、最近では販売上位ファンドの1位、2位をレバレッジ3倍型のブル・ベア型が占めることも珍しくありません。
ネット取引のお客さまの傾向は、レバレッジ2倍で投資されていた方が2.5倍に移り、さらに3倍へと、より高いレバレッジにニーズが移っているようです。株価の日々の値動きが安定化し始めると、なおのこと、小さな値動きでも大きな成果が期待できる高レバレッジの商品が注目されるようです。今回、お客さまの幅広いニーズにお応えするため、商品の選択肢を増やすという観点から、「2.5倍」、「3倍」に加えて、「3.5倍」を揃えました。
――今回は「野村ネット&コール」の専用商品ということですが、他の販売会社が追加される予定は?
吉川 当面は「野村ネット&コール」専用になります。これは、先ほどのレバレッジ倍率を「3.5倍」にした話にも通じるのですが、レバレッジ3.5倍を実現するために、先物取引を実行しなければならないのですが、この調整は複雑ですし、慎重に対応する必要があります。そこで、「野村ネット&コール」には、当日の先物取引時間内に間に合うよう、当日14時30分で注文を締め切っていただいております。
「3.5倍ブル」、「3.5倍ベア」ともに、販売証券会社が1社であることによって、厳格なファンドの運用が可能となるのです。
――ファンドの手数料は?
梅津 販売手数料は、1%(税抜)です。既に販売している3倍のブル・ベア型ファンドと同じ手数料水準に設定しました。また、ファンド間のスイッチング手数料は無料にしています。これまでは、「ハイパーブル・ベア」でマネー ポートフォリオにスイッチする際には手数料を取らないという仕組みはありましたが、「ブル」から「ベア」、「マネー」から「ブル」などあらゆるスイッチングで手数料を徴収しないのは、初めての取り扱いになります。
――ファンドのリスクは?
吉川 ファンドの基準価額は、日経平均株価の1日の値動きに対して概ね3.5倍相当の値動きをします。「日本株3.5倍ブル」は、株価が上昇した場合は、基準価額が株価指数の値上がり率の概ね3.5倍程度の値上がりとなりますが、反対に、株価が下落した場合は値下がり率に対して概ね3.5倍程度の値下がりになります。日々の価格変動が非常に大きくなることが特徴です。
また、「3.5倍」という倍率は、日々の基準価額の値動きが株式市場全体の値動きの概ね3.5倍程度になるように運用するということです。したがって、2日以上離れた日との比較では「概ね3.5倍程度」にはなりません。特に、長い期間になると、「概ね3.5倍程度」からかい離した結果になることが予想されます。(取材・編集担当:徳永浩)
野村證券の非対面取引専用口座「野村ネット&コール」で、2014年6月12日から「野村日本株3.5倍ブル・ベアファンド」の取り扱いが始まった。(写真は、野村アセットマネジメントの吉川龍也氏<左>と大澄好成氏<中央>、そして、野村證券の梅津乾三氏<右>。サーチナ撮影)
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2014-06-12 11:00