【投資戦略2014】みずほ証券、環境次第で日経平均2万円期待も

今年の日本株はアベノミクス効果もあって活況になり、主要国の株価指数と比べても上昇率は際立ったが、みずほ証券投資情報部長の倉持靖彦氏は、日経平均株価はいまだに出遅れているとの認識を示し、上値余地はあるとした。また、「これまでが失われた20年ならば、今年は再生の10年のスタート地点だった」とコメント。来年も基本的には回復基調であると指摘する。
――来年の日経平均株価の想定レンジと動向は?
日経平均株価の予想レンジは、1万5000円-2万円を想定しています。その要因として、まずは世界景気の回復が挙げられます。米国景気は好調で、欧州も持ち直し気味にあり、中国も足元では悪くなく、世界景気は3%台半ばの成長が想定されます。こうした中、構造改革を進める先進国では、緩和的な金融政策から過剰流動性の継続が見込まれることや国内ではNISAに伴い株式への資金流入が期待されることもサポートとなるでしょう。消費税引き上げの影響や、今2014年3月期のリストラ効果のはく落などもあり、企業業績の増益率は鈍化するため、今年ほどの上昇率は難しいとは思います。とはいえ、増益率とリスクプレミアム低下分が原動力となり、株価の上昇基調は続くとみています。
米欧の企業収益がリーマン・ショック前の利益水準を超えてきた、あるいは並んできて、株価指数も当時の水準を更新してきています。一方、日本の企業収益も今期になってようやくリーマン・ショック前に並んできた段階ですが、日本株は2007年頃の株価水準をまだ下回っており、この企業収益を評価して上値を追えると考えています。流れとしては、年初から上値を試し、春ごろに高値を形成。秋まで調整しますが、年末にかけて再び高値を取りに行くような展開をイメージしています。
米国が量的金融緩和を縮小させる一方で、日本では金融緩和の強化が想定され、さらには日本の貿易収支の悪化などを背景に、ドル高・円安になりやすい状況です。春に向かって1ドル=105円程度に、年後半には110円に向かって円安が進んでいくとみています。ドルについては、シェール革命の影響など米国の底力への評価もあって、円だけでなく、全体的に強い見通しです。また、日本株、為替ともに、日銀の追加的な金融緩和が前倒しで実施されるかどうかも注目材料になるかと思われます。
春以降は、消費税引き上げの影響がどれだけ出てくるのかに関心が向かいます。経済対策は打たれていますが、実際に影響がどの程度カバーできるかを見極めることになるでしょう。円安が見込まれるものの、増税の影響を考えると期初段階の会社側の2015年3月期企業業績予想は慎重なものになると想定され、一旦材料出尽くしになる可能性があります。
夏以降では、マクロ指標の影響で調整することになりそうです。米国の景気は春から秋にかけては季節要因で押し下げられる傾向が強く、来年もこのパターンとなれば、夏にかけては米国の景気回復に一服感が強まり、株式市場でもリスクオンの色彩が弱まるでしょう。
消費税は3%から5%に引き上げられた97年とは違い、今回は反動減を念頭に経済対策が打たれている。足元では株価の上昇や不動産の下げ止まりで資産効果も高まり、賃金も大幅ではないにしろ、徐々に上がっていくことを考えると、内需が腰折れする公算は低いとみています。従って、いったん調整したとしても、秋以降になれば内外景気の回復が再確認され、株価は戻りを試すとみられます。また規制緩和など構造改革が加速すれば「再生の10年」に向けた展開が補強されることになるでしょう。
――注目のテーマやセクターは?
政策からみると設備投資関連に注目しています。法人税の大幅な引き下げはすぐに期待できるものではありませんが、研究開発減税や設備投資減税など政策減税が触媒になって更新投資や生産性向上投資のニーズが、大企業だけではなく、中小企業でも増えると思われます。また、新興国では賃金の上昇が懸念され、工場の自動化投資も進むでしょう。米国経済の好調などで期待が根強い外需とともに、設備投資関連は来年の相場のけん引役になりそうです。
このほかでは、輸出関連で電気機器、機械などがあげられます。また、設備資金需要による貸し出しの増加や資産市場の活発化により手数料収入が期待される金融セクターも注目されます。不動産も空室率が低下基調にあることや、2020年の東京五輪に向け都市基盤拡充が期待されることもあって環境は良いでしょう。
また、グロース株に目が行きやすいと思います。ROEの高さはもちろんですが、競争力の高さや経営力の高さ、株主還元への積極性などを比べて選別色が強まりそうです。業種では、スマートフォン向けゲームやeコマース、O2O(オンライン・ツー・オフライン)、シニア関連、観光関連、再生医療関連などが注目です。また、新興国向けの生活必需品や一般医療なども関心を払っておきたいところです。
――海外の動向については?
米国の財政問題は予算案を巡って与野党が合意しましたので、来年早々の暫定予算の期限切れに伴う政府機関の閉鎖は回避される見込みです。予算案は2015年度まで合意に達していますので、中間選挙前の政府機関の閉鎖などの心配もなくなりました。2月には債務上限問題が意識される可能性はありますが、場合によってはいったん上限を引き上げて棚上げということもあるでしょう。そもそも財政管理法や景気拡大による税収増により米国の財政赤字は想定以上に改善しています。歳出自動削減もやや緩和される方向であることも見逃せません。
欧州は循環的な持ち直しの方向を想定しています。財政の引き締めも緩和していることや外需が回復していることに加え、2012年に策定された国債買い入れプログラム(OMT)、欧州安定メカニズム(ESM)などのセーフティネットによる債務国の金利低下、家計・企業のセンチメントの改善もサポート要因です。来年は銀行同盟に向け各種施策が進展する見通しであり、一部の銀行は影響も出てくるでしょうが、全体としては欧州の金融システム強化の第2ステージに入っていくことでしょう。
一方、新興国ですが、曲がり角に差し掛かっているのではないかと思います。内需は人口増などを背景に中長期的には底堅い成長が見込まれますが、米国の量的金融緩和の縮小の影響で、金利上昇や通貨安の圧力が継続する可能性があり、政策対応は難しい舵取りを強いられるとみられます。また、トルコ、ブラジル、インドネシア、インドなど主要な新興国では大統領選挙や議会選挙を控えており、政権や政策を見極めたいところでもあります。新興国市場に活気が戻ってくるのは来年の後半になるとみています。(編集担当:宮川子平)
今年の日本株はアベノミクス効果もあって活況になり、主要国の株価指数と比べても上昇率は際立ったが、みずほ証券投資情報部長の倉持靖彦氏は、日経平均株価はいまだに出遅れているとの認識を示し、上値余地はあるとした。(写真は、倉持靖彦氏。サーチナ撮影)
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2013-12-27 11:00