サムソナイト、革新の素材を使った旅行カバン「ファイアーライト」を拡充

　旅行カバンのグローバルブランド「サムソナイト」は、その革新性を示す素材「カーヴ」の開発とカーヴを使った軽量・高強度のスーツケース「コスモライト」を２００８年に発売し、業界に新風を吹き込んだ。そして、２０１２年に登場した「ファイアーライト」のヒットによって、「軽くて丈夫」というスーツケースの機能を極めた究極のブランドとしての地位を一層強固なものにしている。サムソナイト・ジャパンのマーケティング部アシスタントディレクター、杉山知樹氏に、急成長を遂げている「ファイアーライト」の商品特性と今後の展開を中心に、同社のブランド戦略について聞いた。 ――サムソナイト・ジャパンは、順調に売り上げを伸ばしていると聞きますが、現状は？ 　サムソナイトでは、日本において主にトラベルラゲッジとビジネスバッグの２つのカバン事業を展開しています。２００４年の日本法人設立以来、売上は右肩上がりで順調に拡大しています。特に、この５年間の平均伸び率は３０％以上の増収が続いています。 ――「サムソナイト」が日本で支持を集める理由は？ 　日本のカバン市場の全体は、緩やかな縮小傾向にあります。その中にあって、サムソナイトの強みである旅行カバン分野は、近年の旅行者増を受けて、横ばいから微増という状況です。 　そのような中にあって、サムソナイトが高い成長を続けられているのは、いくつか理由があると考えます。ひとつには、グローバルで展開している商品ラインナップの中から、日本市場に合った仕様の商品を導入し、また、日本向けに独自開発した商品を投入するなどローカライズしていることがご支持いただいていること。 　そして、店舗数を徐々に増やしていることも売上増に直結しています。現在、「サムソナイト」のブランドで展開している取扱い店は、全国に１００店舗ほどになります。主に百貨店やショッピングモールに出店していますが、店舗には商品特性をわかりやすく伝えることができるスタッフを揃え、丁寧な接客に努めています。 　さらに、新素材や新機能など、革新的なカバンを提供し続けているというサムソナイトの姿勢が、日本の消費者の方々に受け入れていただいているのだと思います。 ――そもそも「サムソナイト」が提供する独自の価値とは？ 　サムソナイトは、トラベルラゲッジを中心に提供しているカバンメーカーです。「ライフ・イズ・ア・ジャーニー」という考え方で商品開発を行っています。旅行だけではなく、たとえば、日々の通勤も小さな旅と言うことができます。そのような様々な旅において、最高のパートナーと思っていただけるような旅行カバンを作るというのが、１００年以上にわたる歴史を貫いている姿勢です。 　ですから、まずは、旅のパートナーとしてパッキングしやすいなど機能的であること。そして、丈夫であること。旅行ではカバンを他人に預けるということが少なくありませんので、どのような扱い方をされても壊れにくいという丈夫さは必須の条件です。 　また、持ち運んでも疲れないように軽いこと。さらに、旅が楽しくなるように、デザイン性も大切な要素になります。 ――サムソナイトの商品の中でも、特に人気の商品は？ 　「ファイアーライト」、「コスモライト」など、サムソナイトが独自に開発した素材「カーヴ」を使ったスーツケース類です。軽くて丈夫という旅行カバンに求められる機能を、徹底して追求した商品として人気があります。 　「コスモライト」は２００８年の発売ですが、今もって売上高は右肩上がりです。また、２０１２年に発売の「ファイアーライト」は、昨年は前年比数倍という大変な伸び率になりました。 ――革新的な素材「カーヴ」とは？ 　特許技術で作られた特殊な合成樹脂（プラスチック）素材で、硬質プラスチックの素材のひとつであるポリピロピレンを原材料に、軽くて丈夫というスーツケースに求められる機能を追求して開発されました。旅行カバンの素材として「カーヴ」を使用できるのはサムソナイトだけです。 　一般に合成樹脂は、低温下では強度（衝撃耐性）が落ちるのですが、「カーヴ」はマイナス１２度Ｃという環境下でも、ポリプロピレンやポリカーボネートなどの合成樹脂素材を大幅に上回る強度を発揮します。このマイナス１２度Ｃというのは、飛行機の貨物室の気温に相当します。もちろん、常温下での強度試験でも大変優れた耐性を示しています。 　また、独自の波型形状によって強さと、圧力に対する強い復元力を確保しました。たとえば、スーツケースの上をトラックが走行しても、ほぼもとの状態に回復することができることを確認しています。 ――「コスモライト」と「ファイアーライト」の違いは？ 　「コスモライト」は、発表時にスーツケースの歴史に革新をもたらしたと驚かれた商品で、指１本でも持ち上げられる軽さに加え、衝撃にも強いという機能を追求しました。タテ型の波模様が貝殻（シェル）を連想させる丸みを帯びたデザインも特徴です。５サイズ、４色で提供しています。 　「ファイアーライト」は、「コスモライト」の機能を引き継ぎ、ヨコ型の波模様を採用し、強さを表現したマスキュリンなデザインと、止水ジッパーを採用しています。３サイズ、４色の展開です。 　ともに、サムソナイトブランドの中では、最軽量・最強の商品で、業界でも常にこの２つのブランド間で「最軽量」を競い合っているくらいです。 ――今後の展開は？ 　「ファイアーライト」について新色の投入を予定しています。現在は、「チリレッド」、「ディープブルー」、「チャコール」、そして、限定店舗での「オフホワイト」の４色ですが、ここに新しいカラーを投入する計画です。 　また、６月１９日からテレビＣＭの放映が全国で始まりました。ＣＭでは、「ファイアーライト」の「火のように軽く、強い」というイメージを印象づけるため、両手に「ファイアーライト」を持って綱渡りをするという映像を使っています。手に持っていることが気にならないほどに軽いということを視覚的にお伝えし、さらに、高所から落としても形がもとに戻るという復元力の強さをアピールする内容です。 　「ファイアーライト」は、特許素材「カーヴ」を使った最軽量・最強をめざす商品として極めてユニークな特性があります。このような特徴のある商品をアピールすることで、旅行カバンの分野では、最初に思い出していただけるようなブランドとして「サムソナイト」の普及に努めていきたいと考えています。　（編集担当：徳永浩）