中国は景況感の改善で、本格的な景気対策は望み薄=大和総研

 中国の景況感は最悪期を脱しつつある。5月のHSBC製造業PMIは49.4と、4月の48.1から大きく改善し、4月以降に中国当局が矢継ぎ早に発表した景気下支え策によってセンチメントが改善していることがうかがえた。大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は、2014年6月20日に「中国:景況感改善もいつか来た道?」というレポート(全9頁)を発表し、「今後も景気が大きく下振れない限り、小出しの景気『下支え』策で乗り切るつもりなのだろう」という見通しを示した。レポートの要旨は以下の通り。 ◆5月のHSBCの製造業PMIは49.4と、5カ月連続して拡大と縮小の分岐点である50を下回ったとはいえ、4月の48.1からは大きく改善。5月の国家統計局の製造業PMIは50.8と、こちらは2月の50.2をボトムに改善傾向にある。これは4月以降、当局が矢継ぎ早に発表した景気下支え策によってセンチメントが改善したためであろう。 ◆しかし、景気下支え策のメニューは豊富だが、実際の景気押し上げ効果が期待できるのは、鉄道投資の増額修正くらいであろう。6月16日には一部金融機関限定で預金準備率引き下げを実施したが、凍結が解除される資金は1000億元程度であり、2013年の人民元貸出増加額8兆8917億元の1.1%にすぎない。金融「緩和」効果を期待するにはあまりに小さい。諸政策の目的はあくまでも景気「下支え」であり、景気を持続的に回復させていくようなものではない。今後も景気が大きく下振れない限り、小出しの景気「下支え」策で乗り切るつもりなのだろう。 ◆「偽輸出」の影響が一巡し、5月の輸出は前年同月比7.0%増と、1月-4月の前年同期比2.3%減から大きく改善した。今後について、2つのポイントを指摘したい。1つは輸出堅調が景気の下支えとなる可能性である。中国の輸出に3カ月-4カ月程度の先行性がある先進国・地域の景況感は高い水準で推移しており、少なくとも秋口までの輸出堅調を示唆している。もう1つは当局が元高誘導を再開する可能性である。輸出統計が悪化するなかでの元安誘導は、2005年7月以降の持続的な元高で価格競争力低下に苦しむ輸出企業への配慮ではある。しかし、「偽輸出」の影響が一巡すれば輸出統計が正常化し、対外的にも元安誘導の言い訳は苦しくなるのは明白である。今後は、持続的元高をテコに、輸出製品と産業構造の高度化を進めるという、従来の方針に回帰する可能性が高いとみている。(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)
中国の景況感は最悪期を脱しつつある。5月のHSBC製造業PMIは49.4と、4月の48.1から大きく改善し、4月以降に中国当局が矢継ぎ早に発表した景気下支え策によってセンチメントが改善していることがうかがえた。
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2014-06-20 13:15