米ドル本格動意を待つ中でユーロ高リスクに警戒=外為どっとコム総研

ドル/円をはじめ、主要通貨ペアの値動きが乏しく、外国為替市場全般に「様子見」の機運が強まっている。外為どっとコム総合研究所の取締役調査部長兼上席研究員、神田卓也氏は、当面の外為市場の見通しとして「全体的に方向性を見極めようともみ合っているのは、米ドルの先読みが難しいからだ。米ドルの方向感を確認するためには秋口まで待つ必要があるだろう。その間、ユーロ高のリスクを警戒したい」と語った。(写真はサーチナ撮影)
――ドル/円は、株価の動きに連動する傾向が強かったのですが、最近では株価との関連性が薄れてきているようにみえます。今後のドル/円を見通す上で、何を注目すれば良いのでしょう?
ドル/円と株価との連動が言われるようになったのは、ごく最近のことです。リーマン・ショック後の世界同時金融緩和によって、先進国間の金利差がほとんどなくなってしまったためだと思います。
ドル/円の値動きは、歴史的には米国の金利に連れて動く傾向があります。米国の利上げのタイミングが話題に上るようになって、いよいよ、本来の姿に戻ったというか、金利や金利差に注目する環境になってきたのだと思います。その点では、これからは米国の金利の動きがドル/円を左右する場面が増えることになるでしょう。
米国の金利を見通す上では、消費者物価指数(CPI)が前年比2.1%にまで上昇していることに注意が必要です。FRBは低インフレが続いている限りは、ゼロ金利が継続できるという見解でした。年率2%を超えるようなインフレとなってきたことで、今後、インフレ率は利上げのタイミングに影響してくると思います。
――基本的には米国の景気回復で、米国金利は上昇という見通しでしょうか?
基本的な見方は、米国が量的緩和の終了を経て、利上げに向かっていると考えて良いと思います。
ただし、今年は、猛烈な寒波の影響で、1-3月のGDP成長率がマイナス1%になるという異常値が出ました。悪天候による一時的な停滞とみなされていますので、4-6月の経済指標は、高い数値が出るのは当たり前と捉えられています。したがって、米国の景気の実態を確認するためには、7-9月の経済指標を見極めたいという動きになっています。7月の数値が出てくる8月までは、現在のような、上下ともに大きくは動きにくい展開が続くのではないでしょうか。
――ドル/円の予想レンジは?
1ドル=101円-103円で予想しています。
昨年末に米国の長期金利が3%台に乗せていた時に、1ドル=105円台でした。この水準にトライするのは、米国の景気回復が続いていることを前提に、秋以降になると思います。それまでは、ドルが大きく下押すことはないものの、上値は限られる展開に終始すると考えています。
――最近、豪ドルの上昇が目立ちますが、イラクの緊迫化によって原油価格が値上がりするなど、資源・エネルギー価格が上がっていることが材料視されているのでしょうか?
豪ドルの上昇には、資源国として原油やコモディティ価格の上昇がポジティブに受け取られているという側面も無視はできません。しかし、豪州経済の現状は良いとはいえず、中国からの強力なサポートも期待しにくい中で、ここから一段と買い進められるほどに、豪ドルが魅力的には見えません。
豪ドルは、高金利・資源国通貨として世界の主要株価に連れて動く傾向が強いため、むしろ、イラク問題が早期に終息して世界の株価が上昇に転じた方が、豪ドルの値上がりにつながると思います。
もともと米国が世界経済の中心として意識される局面では、豪ドルの活躍余地は小さくなります。豪州の輸出相手国は、中国をはじめとしたアジアが8割近くを占め、次いで欧州、その次にアメリカ・カナダです。米国経済回復の恩恵が及びにくい貿易構造になっています。
当面の豪ドル/円は、1豪ドル=93円-98円程度を予想します。世界の株価が大きく崩れる心配がなければ、豪ドルの下値は大きくないと思います。ただ、2013年4月に105円台を付けたような高値に進むには、豪州経済が力不足とみています。
――その他、注目の通貨ペアは?
オススメするという訳ではないのですが、これからのユーロ/ドルの動きには注目していきたいところです。
ECBが中銀預金にマイナス金利を適用し始めたことに対し、米国は量的緩和を脱して金利の正常化に向けた動きに転じるなど、欧米の金融政策の方向性は真逆を向いています。政策面だけで判断すると、ユーロ売り・ドル買いということになります。
しかし、ドイツの貿易収支が大幅な黒字にあるように、実需でのユーロ買い圧力は相当強いものがあります。そもそもECBのマイナス金利は、実需の根強いユーロ買いに対して、ユーロ買いの勢いをなくそうという意図で始められたものです。
このような、ユーロ安とユーロ高の勢力がぶつかり合う構造にあるため、ユーロ/ドルは比較的値動きが大きくなりやすくなっています。当面は、1ユーロ=1.33ドル-1.41ドルという範囲での値動きになると見ます。
ただし、実需が「買い」である場合、投機などの仮需が売り向かっても、最終的には実需に軍配があがるものです。仮需は、最終的に売り買いがバランスするものですが、実需は一方通行だからです。このため、ECBがマイナス金利によって、ユーロの価値を低下させても、簡単にはユーロ買いの力をそぐことはできないでしょう。
まして、ECBは次の一手として検討している「量的緩和」には、EU条約違反との批判があることから、なかなか踏み込めないと考えられます。次の一手への対応が遅れるたびに、通貨高が進むというのは、一昔前の日銀が経験したことです。ドル高の材料も少なくはないのですが、当面は、ユーロ高の方向にリスクが高いと思います。(編集担当:徳永浩)
ドル/円をはじめ、主要通貨ペアの値動きが乏しく、外国為替市場全般に「様子見」の機運が強まっている。外為どっとコム総合研究所の取締役調査部長兼上席研究員、神田卓也氏は、当面の外為市場の見通しとして「全体的に方向性を見極めようともみ合っているのは、米ドルの先読みが難しいからだ。米ドルの方向感を確認するためには秋口まで待つ必要があるだろう。その間、ユーロ高のリスクを警戒したい」と語った。(写真はサーチナ撮影)
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2014-06-25 10:45