日本企業が中国撤退に際して想定すべき難問とは

日本経営管理教育協会が見る中国 第312回--宮本邦夫(日本経営管理教育協会会長)   中国における人件費の高騰、円安などの経済的理由に加えて、日中間の政治的冷却によって採算が悪化し、中国から撤退する企業が少なくない。しかし、中国からの撤退は、そう簡単にはいかないようである。というのも、撤退に当たっては、さまざまの難問をクリアしなければならないからである。以下で、その難問について取り上げてみよう。 1.容易ではない撤退手続き   中国から撤退する場合、まず問題となるのは、撤退の手続きである。撤退するときには、国や地方政府に対して、法人登録抹消を認めてもらうための手続きをしなければならない。その際、税金の未納があったり、未払いの罰金や課徴金があると、なかなか処理が進まないばかりか、最悪の場合は、旅券を取り上げられることもありうる。 2.公的補助金などの返還   地方政府によっては、企業誘致に当たって土地使用料を無料にするなど、さまざまな優遇措置を採ったところが少なくない。撤退に当たって、こうした優遇措置から得られた利益の一部を返還するよう要請されることがある。したがって、撤退に際しては、進出時に地方政府とどのような契約を交わしたのかについて、よくチェックすることが重要である。 3.従業員への補償金支払   撤退する際は、当然のことであるが、従業員に対して補償金を支払わなければならない。補償金の額に関しては、企業が勝手に決めるわけにはいかないのが実状である。一方的に決めてしまうと、問題がこじれることになり、解決までに多くの時間とエネルギーを費やすことになる。したがって、従業員と交渉を重ね合意のうえ決めることである。 4.納入先の代金支払拒否   撤退に当たっての問題の1つに、納入先の代金支払拒否があることも覚悟しておくべきである。代金支払拒否は、撤退が決まってからとは限らない。撤退の噂が流れたときから始まるものと思わなければならない。代金支払拒否を回避するには、日頃からの信頼関係を築いておき、撤退について早い時期から事情をよく説明し理解を得ることである。 5.取引先からの違約金請求   撤退に際しては、納入先の代金支払拒否の問題のほか、部品などを提供している取引先から違約金を請求されるという問題がある。契約期間の途中で撤退する場合には、違約金を支払うのは当然であるが、不当な違約金を請求されないためには、やはり日頃から信頼関係を構築しておき、早めに撤退の事情を説明し理解を得ることが大切である。(執筆者:宮本邦夫・日本経営管理教育協会会長 編集担当:水野陽子)    
中国における人件費の高騰、円安などの経済的理由に加えて、日中間の政治的冷却によって採算が悪化し、中国から撤退する企業が少なくない。しかし、中国からの撤退は、そう簡単にはいかないようである。というのも、撤退に当たっては、さまざまの難問をクリアしなければならないからである。
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2014-06-25 11:00