改正安衛法のストレスチェックで新たな可能性=アドバンテッジリスクマネジメント

 「労働安全衛生法(安衛法)」の一部改正が2014年6月19日に成立したことで、従業員50名以上の職場で年1回の「ストレスチェック」の実施が義務化された。改正安衛法は、ストレスによる自殺者対策、メンタルヘルス対策として議論されてきたもの。ストレスチェックの実施機関として年間約24万人を調査するアドバンテッジリスクマネジメント <8769> の調査研究室室長の宗澤岳史氏は、「ストレスチェックをもとに、企業の生産性の向上や離職率の低下など、組織の課題解決に結び付ける活用が期待される」と語っている。  宗澤氏は、厚生労働省研究班・職業性ストレス簡易調査票の新版で「エンゲージメント(仕事熱意度)」の概念が導入されたことに着目し、「ストレス反応とエンゲージメントのチェック結果を併せて分析することによって、単なる仕事に基づく心身の障害を予防するという安衛法の義務を満たすだけでなく、発展的に職場改善につなげることが可能」と解説する。  今回、安衛法で義務化されたストレスチェックは、医師・保健師等がストレスチェックを実施し、労働者に結果を通知するとともに、必要に応じて産業医等の相談、事業者を通じた医師による面接指導の実施などが求められている。宗澤氏は、改正安衛法によるチェックを事業者が遵守すべき最低基準として、組織分析や職場改善に結びつけていくことで、企業の成長につなげることが可能になるという。  たとえば、ストレス反応の「高い」「低い」と、エンゲージメントの「良い」「悪い」という指標を組み合わせることで、4つの象限ができる。「ストレス反応:高い」+「エンゲージメント:良い」象限を「いきいき状態(心身ともに健康で、熱意を持って自主的に仕事に取り組んでいる状態)」と定義できる。対極にある「ストレス反応:低い」「エンゲージメント:悪い」象限は「へとへと状態(心身の不調が見られており、頑張りたくても頑張れない状態)」とされ、退職や離職リスクが高く、組織改善の必要がある。  また、「ストレス反応:高い」「エンゲージメント:悪い」象限は「燃え尽き注意状態」で仕事への熱意が高いだけにサポートやコミュニケーションなどで改善を図ることで「いきいき状態」に移行させやすい。「ストレス反応:低い」「エンゲージメント:良い」象限は「マイペース状態」とされ、組織としての生産性の改善が可能な状態といえる。  宗澤氏は、同社が2013年に実施したストレスチェックの中で、「タフネス度」(ストレス耐性)に加え、「エンゲージメント」についても調査した約4万5000人のデータを分析した結果として、「ストレスとエンゲージメントは、年代、性別、職種、企業規模、業種などによって異なる。たとえば、ストレス反応は、20代、30代が高く、エンゲージメントは50代、60代の方が良い。また、IT・通信業のストレス反応は高くでるが、エンゲージメントでは運輸・物流業が良い結果になるなど。調査結果を詳細に分析することによって、職場環境を変えることができる。また、従業員のストレス耐性を強化するための研修も可能になる」と語っている。(取材・編集担当:徳永浩)
「労働安全衛生法(安衛法)」の一部改正が2014年6月19日に成立したことで、従業員50名以上の職場で年1回の「ストレスチェック」の実施が義務化された。
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2014-06-25 13:15