野村證券、NISAをきっかけに「インフレに備えた資産運用」を提案

野村證券は、NISA(少額投資非課税制度)の口座開設件数において圧倒的な存在感を発揮している。同社の提供しているどのようなサービスが多くの人々の支持を獲得しているのだろうか? 野村證券常務執行役員の新井聡氏(写真:右)とモーニングスター代表取締役社長の朝倉智也氏(写真:左)が2014年6月、NISAの現状と展望を巡って対談した。
朝倉 2013年はアベノミクスで日本株が大幅に値上がりしましたが、2014年になって株価は落ち着いています。現状の株式市場をどのように見ていますか?
新井 2013年の前半は、アベノミクス発動を受けて日本株マーケットに対する期待感の表れとして大きく上昇したと考えられます。2014年に入ってからは、企業業績を見極めたいという動きになってきたようで、本格的な上昇を迎える前の状態とみています。
そして、向こう3年くらいを見通すと、現状の水準よりかなりの米ドル高・円安になることを予想しております。投資家の方々は、インフレに備えた対応が必要な場面を迎えていると思います。
朝倉 2014年5月に発表された消費者物価指数は前年比3.2%の上昇となり、消費増税の影響を除いても実質1.5%のインフレでした。ヒタヒタとインフレが迫ってきているようですが、今までの考え方を変える必要があるのでしょうか?
新井 変えていかなければならないと思いますし、私どもが実施しているセミナーに参加されるお客さまからも、「インフレについて真剣に考えなければいけない」という思いが既に伝わってきております。
朝倉 2014年1月からNISAが始まりました。NISAに対する投資家の意識は、変わってきていますか?
新井 野村アセットマネジメントが定期的に行っている調査からも、(1)NISAに対する認知度が着実に上がってきている、(2)NISAを使ってみようと考えている方が増えてきている――ということがわかります。
また、NISAがスタートした当初は、株式投資でNISAを使う方が多かったのですが、最近では、半数以上の方が投信でNISAを使われるようになっています。
朝倉 NISAについては金融業界をあげて、投資家のすそ野を広げたいという思いが強いようですが、その中で、野村證券の取り組みの特徴は?
新井 2つあります。1つには、NISAが中長期投資を前提とした投資に適しているということから、投資信託を中心にご案内していきたいと思っています。もう1つは、特に資産形成層のお客さまに対して「積立による投資」をご案内しています。
投資信託には、少額から分散投資ができるというメリットがあります。そして、積立投資には、時間を分散して投資できるというメリットがあります。お客さまは投資信託に毎月積立投資していく「ファンドるいとう」を使っていただくだけで、知らず知らずの内に、資産分散、時間分散ができます。
朝倉 投資信託は、国内には4500本以上の種類があります。また、投資先が分散されているために個別銘柄に投資するよりも、投資の内容がわかりにくいという指摘もあります。そこで、野村證券が用意された「NISAハンドブック」の診断チャートは、自分に相応しい運用スタイルにわかりやすく導いてくれるなど、初めて投資をする方にはわかりやすいツールが揃っていますね。
新井 当社も長く投信の販売に携わってきて、結果的に現在では700本以上の商品を取り扱っています。700本もあると、その中から自分に合った投信を選ぶということは難しいと思いますし、まして、初心者の方は自分にとって何が良いのかがわからないと思います。今回、NISAのご提案にあたっては、初めて投資される方にも、ご自身に合った商品を簡単に探し出すためのツールをご提供するところから始めています。
朝倉 商品についても「ワンダフル・シリーズ」は、インデックスファンドに加えてアクティブファンドもあり、グローバル株式に1本で投資できるものもあれば、個別の国に投資するファンドもあるなど、かなり考えて絞り込まれた商品ラインナップになっていますね。
新井 NISAという仕組みについて議論が始まった数年前から、NISAに相応しい商品について考えてきました。「ワンダフル・シリーズ」の15本は、「債券」「バランス」「株式」といった主要投資対象ごとに選定しております。外貨建資産については実質円建てとなるように為替ヘッジを行ったファンドを、また、制度の特性を考えて分配頻度の少ないファンドを選んでラインナップしております。
また、それぞれのファンドは、主要投資対象の中で優れた運用実績のあるファンドを選んでいますし、運用会社については今回選定したファンド以外でも優れた実績のある会社ばかりです。個々のファンドは、どれも自信をもってご案内できるファンドですし、ラインナップとしても本当に自信をもっておすすめできるものになっています。
朝倉 NISAは年上限100万円ですから、運用資金が100万円ないと始められないと考えてしまう方もいるようですが、少額で投資することができます。少額投資のメリットを活かすサービス提案は?
新井 NISAでおすすめしている「ファンドるいとう」は、5000円以上1000円単位で投資信託に投資していくことができます。初めて投資をするお客さまには、大きな資金をまとめて投資するという判断は難しいと思います。毎月少額でもスタートできるサービスをご用意することは重要なことだと思っています。
朝倉 ラインナップの中には、インデックスファンドといった販売手数料が安いファンドがあり、また、毎月の積立投資など販売する側にとっては手間のかかる方法をすすめられています。日本とアメリカの投信残高の差は大きいのですが、野村證券がそういう姿勢で投信を提供していくことは、日本でも投信残高が大きく伸びることにつながるのではないかと期待しています。
新井 アメリカと日本では、個人金融資産に占める有価証券と現預金の比率が逆転しています。日本では有価証券が15-16%で、現預金が50%を超えるのですが、アメリカではこの二つの比率が逆転しています。ただ、これは単純にアメリカの人たちがリスクを取りやすいということではなく、アメリカが長い間、普通にインフレの状態を経験してきたということが背景にあると思います。
日本では20数年間にわたってデフレが続いてきたので、日本の方々が資産の多くを現預金として保有していたことは、ある意味では正しい行動だったと言えるのだと思います。
ただ、これから日本がインフレの時代を迎えるとすれば、今までのような資産の配分では、個人の将来の生活を守ることができなくなるのではないかと感じています。金融資産を守りながら殖やしていくということを真剣に考えていかなければならないと思います。
朝倉 なるほど。デフレからインフレへという流れへの対応では、投資信託以外の投資もあると思うのですが?
新井 もちろん、個別の株式に投資するということも一つの方法です。個別の企業については、アナリストによるリサーチ情報などは過去から充実させてきています。また、企業の中でも株主優待を充実させ、個人の株主を増やそうという取り組みが活発に行われています。NISAでも、株式の積立投資である「るいとう」が利用できますので、株式に投資する流れもつくっていきたいと思っています。
朝倉 資産運用については、人それぞれに目的や目標があって、自ずと運用の仕方は個々人によって異なるものになります。そのような多様なニーズに対する野村證券の取り組みは?
新井 一人ひとりに、資産運用の目的は異なります。教育、住宅、豊かな老後など、その目的によって資産運用のやり方は違ってきます。そして、当社では資産運用だけではなく、新しい動きとして、豊かな生活を送っていくための提案に取り組み始めています。
豊かな生活を送るために、どのような資産運用をしていくのかという視点にたって、たとえば、支店で開催している「ハッピーライフセミナー」では、豊かな老後を送るための様々なアイデアの提案を行っています。投資をなさっている方も、これから投資を考える方も、多くの方々に野村證券の支店にお越しいただいて、セミナーをはじめとした様々なサービスを体験していただきたいと思っています。(編集担当:徳永浩)
野村證券は、NISA(少額投資非課税制度)の口座開設件数において圧倒的な存在感を発揮している。野村證券常務執行役員の新井聡氏(写真:右)とモーニングスター代表取締役社長の朝倉智也氏(写真:左)が2014年6月、NISAの現状と展望を巡って対談した。
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2014-06-27 10:00