SBIアセット、「トリプル・プレミアム」運用1周年で分配金が累計2520円

 投信市場でオプション取引等を使ってプラス・アルファの分配金を出す「プレミアム戦略」を採り入れたファンドの人気が高まっている。従来は、「ハイ・イールド債」や「グローバル・リート」など、組み入れた資産から得られるインカム収入を原資として高い分配金を出していたが、投資する資産に「カバード・コール戦略」を組み入れ、投資資産から得られるインカム収入に、「プレミアム収入」を上乗せして高い分配金を出している。  SBIアセットマネジメントが運用している「グローバル・リート・トリプル・プレミアム・ファンド(毎月分配型)(愛称:トリプル・プレミアム)」は、グローバル・リートに投資することによるインカム収入以外に、3つの「プレミアム収入」を得る仕組みを採用し、1万口あたり210円の分配金を毎月安定的に出している。同社商品企画部部長の清水暁氏に、「トリプル・プレミアム」の商品の仕組み等について聞いた。(写真はサーチナ撮影) ――「トリプル・プレミアム」など、毎月、高額の分配金を出す仕組みを取り入れたファンドに人気が集まっているようです。今年1月にNISA(少額投資非課税制度)が始まって、「分配頻度を低くして資産の内部成長を図るファンドに人気が出るだろう」という予測もありました。高い分配金を毎月出すファンドが人気を集める背景を、どのように受け止めていますか? 清水 投信を購入されるお客さまには、多様なニーズがあるということだと思います。NISAのスタートにあたって、分配頻度を低くして「複利の効果」を活かした資産形成型のファンドに人気が高まるだろうという期待が持たれ、NISA口座では実際に年1回分配のファンドが一定の人気を獲得しています。  ただ、退職された高齢の方々が、年金にプラスαの定期収入を加えるため、投信の毎月分配を利用されるニーズは根強くあります。たとえば、NISA口座で毎月分配を利用された場合でも、収益に20%課税される配当・売却益への税金が免除されるメリットがあります。もちろんこれまでも特別分配金に対しては非課税でしたが、NISA口座で普通分配金に対する課税が非課税になるメリットを感じている方が少なくありません。  仮に、「トリプル・プレミアム」を基準価額8500円の時に100万円分購入し、1万口あたり210円(税引前)の普通分配金を受け取ると、普通口座では受取金額が税引後で約1万9700円になりますが、NISA口座では約2万4700円がまるまる受け取れることになります。この分配金に対する非課税メリットを強く感じたというお客さまの声は小さくありません。 ――「トリプル・プレミアム」のプレミアム戦略とは? 清水 外国投資信託証券「CSグローバル・リート・トリプル・プレミアム・ファンド」への投資を通じて、「グローバル・リート・カバード・コール戦略」、「為替取引・プレミアム戦略」、「通貨・カバード・コール戦略」の3つのプレミアム戦略を採用しています。ファンドの運用の仕組みを簡単に説明しますと、「グローバル・リート」と「高金利通貨」という2つの魅力的な資産に投資し、それぞれにカバード・コール戦略を採り入れ、2×2で4つのインカム収入手段を持つ運用を行っています。  基本的なインカム収入としては、日本を含む世界のリート(グローバル・リート)ETFから得る相対的に高い配当利回りがあります。そして、通貨選択型ファンドと同様に、グローバル・リートETFの投資通貨である米ドルよりも、金利が高い通貨に投資することによって米ドルとの金利差の獲得をめざします。  カバード・コール戦略とは、原資産のコール・オプション(買う権利)を売却することで、一定水準以上の値上がりによるキャピタル・ゲインを放棄する代わりに代金(オプション・プレミアム)を得るというオプション取引です。このオプション取引を、グローバル・リートと高金利通貨に対して行います。  なお高金利通貨の選択において、通貨専門の運用会社であるミレニアム・グローバル社からの投資助言を活用し、原則として毎月、選択通貨の見直しを行います。ミレニアム社が独自に開発した戦略モデルを活用し、市場環境を総合的に考慮した上で、米ドルに対して想定的に金利差の大きい1通貨を選んで米ドル売り選択通貨買いの為替予約取引を行います。 ――プレミアム戦略を採用したことによって、ストレートにグローバル・リートに投資することと比較して、どの程度の上乗せ利回りが期待できるのですか? 清水 過去のシミュレーションを踏まえて運用で目標としている利回り水準は、グローバル・リートで年4.5%、リートのカバード・コール戦略で年9.0%、通貨選択で年7.1%、通貨のカバード・コール戦略で年8.0%という水準です。単純に目標利回りを積み上げると年28.6%ということになります。  「トリプル・プレミアム」は、2013年6月28日に設定し、約1年間の運用実績がありますが、2013年7月から毎月1万口あたり210円の分配金を継続して出しています。この実績を残すことができたのは、プレミアム戦略においてほぼ想定したとおりの利回りを得られているためです。 ――過去1年間の運用を振り返ると、2013年8月頃に基準価額が8000円台に下落するという経験をしています。その後、基準価額の推移は、ほぼ横ばいとなりました。昨年8月の基準価額の下落の原因は? 清水 2013年7月-8月には、米国で量的金融緩和の縮小という話題が出て、“リスクオフ”ということがいわれ、新興国通貨が大きく下落するということが起こりました。ファンドの選択通貨として、当時はインドネシアルピアに投資していたのですが、この際に、インドネシアルピアの下落分だけで基準価額が900円のマイナスになってしまいました。  また、当時は、世界各国の証券市場全般が動揺し、リスク性資産から資金が逃避する中で、グローバル・リートも下落しました。このような市場環境になると、カバード・コール戦略によってオプション・プレミアムを得ていても、基準価額のマイナスをカバーすることはできませんでした。  しかし、その後の基準価額は概ね安定的に推移し、現在では基準価額こそ8441円ですが、設定来の分配金累積2520円を加味したトータルリターンでは、設定来1年間の収益率がプラス12.72%になっています(2014年6月27日現在)。 ――ファンドの取り扱い状況は? 清水 現在、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、立花証券で取り扱っていただいています。6月30日からカブドットコム証券での取り扱いも開始され、大手ネット証券で揃って取り扱っていただくことになります。  ファンドの仕組みが複雑ですので、対面販売の銀行や証券会社で取り扱いを開始するのには、ややハードルが高いところがあると感じます。ただ、カバード・コール戦略を採り入れたファンドが、対面販売の窓口で徐々に取り扱われるようになってきていますので、これから対面窓口でも取り扱いが増えていくと期待しています。  ファンドの仕組みについては、わかりやすい資料を充実させています。ネット証券では特集ページを設けて詳しく説明し、また、動画コンテンツなども提供しています。1年間の運用を通じて投資家の方々からのお問い合わせも様々に受けてきていますので、お客さまの声を活かして、より分かりやすい説明資料になるように、今後も説明資料に工夫をしていきたいと思っています。 ――当面の運用環境は、「トリプル・プレミアム」にとって追い風になるのですか? 清水 米国をはじめ、世界経済が緩やかな回復基調に戻りつつあるというのが、現在の市場の見方の主流になっていると思います。回復の足取りは決して軽快とはいかずに、疑心暗鬼を抱えつつ、発表される経済指標を慎重に見極めて、徐々に回復への確信を強めているという状況ではないでしょうか。  このような景気回復が期待されつつある状態は、「トリプル・プレミアム」にとっては、非常に良い運用環境であるといえます。カバード・コール戦略を採用しているため、バブル期のような大きな値上がりが期待される環境では、市場の値上がりに運用成果が追随できないというマイナス面が際立ってしまうと思います。ところが、市場がどっちつかずで落ち着かない間は、過去1年間がそうであったように、安定して高い分配金を出していくことができると思います。  安定的な分配収入を目的に投資なさる方々に、是非、検討していただきたいと思います。(編集担当:徳永浩)
SBIアセットマネジメントが運用している「グローバル・リート・トリプル・プレミアム・ファンド(毎月分配型)(愛称:トリプル・プレミアム)」は、グローバル・リートに投資することによるインカム収入以外に、3つの「プレミアム収入」を得る仕組みを採用し、1万口あたり210円の分配金を毎月安定的に出している。同社商品企画部部長の清水暁氏に、「トリプル・プレミアム」の商品の仕組み等について聞いた。(写真はサーチナ撮影)
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2014-06-30 12:00