「燃料電池車祭り」は「サイバダイン祭り」に似て第2のヤマ形成も期待=浅妻昭治
<マーケットセンサー>
美空ひばりが、かつて歌ってヒットした懐メロ『お祭りマンボ』をご存知だろうか?一種のコミック・ソングで、そのストーリー性が、現在の株式市場を象徴しているようで、思わず口ずさんでしまう。ご存知出ない方々は、ぜひ、ネットででもこの楽曲にアクセスして投資の参考とすることをお勧めしたい。
このヒット曲の歌詞には、お祭り騒ぎの好きな隣のおじさん、そのまた隣のおばさんが登場する。雨が降ろうと、槍が降ろうと、おじさんは、お神輿をワッショイ、ワッショイとかつぎ、おばさんはおかぐら見物をピーヒャラ、ピーヒャラと続けるのである。おじさんは、自宅が家事になろうとお構いなしで、おばさんも、留守宅に空き巣が入っても一向に気に掛けない。
株式市場も、このおじさん、おばさんと同様にお祭り騒ぎが大好きなところがうり二つである。つい前週も、週を通じて新規株式公開(IPO)株に買い物が殺到する「IPO祭り」でワッショイ ワッショイとやり、週末には「燃料電池車祭り」でピーヒャラ、ピーヒャラと踊り群がったばかりだ。これは今回ばかりに限ってことではない。昨年来、全般相場が膠着感を強めると、必ずといっていいほど「ガンホー祭り」だの「サイバダイン祭り」だの、さらに「ミクシィ祭り」だのの急騰相場が演じられたことは記憶に新しい。
『お祭りマンボ』の歌詞には、聴いてみれば分かるように落ちがある。お祭りが済んで日が暮れてあと、自宅を焼かれたおじさんとへそくりを盗られたおばさんは、ため息をつくばかりで、いくら泣いても「あとの祭り」と終わるのである。何だか、昨今、隆盛の「お祭り相場」の先行きを示唆しているのではないかといささか心配にはなる。
さてその前週末に盛り上がった「燃料電池車祭り」だが、一過性の急騰に終わり早くも賞味期限切れとなったのかを、後講釈的になって恐縮だが検証してみたい。このお祭り騒ぎの発端は、トヨタ自動車 <7203> にある。同社は、6月25日にセダンタイプの燃料自動車(FVC)を日本国内で2014年度中に700万円程度の価格で販売開始すると発表、この発表会の模様が、「究極のエコカー」の鳴り物入りでテレビ各社のニュースで報道されたことが引き金となった。
トヨタの発表を受けた株式市場の反応だが、主役のトヨタの株価は、続伸したものの小幅高にとどまったが、それより小型の低位値ごろの関連株にストップ高が続出し、まさにお祭り騒ぎとなった。「燃料電池車」の普及には燃料となる水素供給のインフラ整備が不可欠となるとして、関連株買いが広がったものだが、この関連株には、早くも週末の27日に急反落した中国工業 <5974> や新コスモス電機 <6824> (JQS)なども含まれていた。
ただ今回の「燃料電池車祭り」は、トヨタが牽引役となったことで、今年3月、6月と2つの大きなヤマを形成した「サイバダイン祭り」に似ていないこともない。このお祭り騒ぎは、ロボットスーツを研究・開発・販売するサイバーダイン <7779> (東マ)が、今年3月26日にIPOされるのを先取りして、菊池製作所 <3444> (JQS)が、年初来安値から4倍化するなどロボット関連株が急騰して最初のヤマを形成し、サイバダインのIPOとともに、材料出尽くしでほぼ往って来いの調整となり、お祭り騒ぎはほぼ終焉したと思わせた。
それが、第2のヤマが到来したのである。キッカケは、ソフトバンクが、パーソナルロボット「Papper(ペッパー)」の発売を発表したことにあり、その発表会のデモンストレーション映像が、トヨタの燃料電池車と同様にテレビニュースで大写しされたことにあった。株価の反応はどうかといえば、これもトヨタと同じで、主役のソフトバンクは、3%程度の上昇と限定的にとどまったが、菊池製は3割高、サイバダインに至っては5割高して上場来高値を更新するなど2回目のお祭り騒ぎを演じた。
これは、「燃料電池車祭り」が、一過性の循環物色で終わってしまうかどうかは、今後の後続材料次第ということを示唆していることになる。燃料電池車関連株の急騰とともに、市場には関連材料が観測されるとともに、思惑材料も取り沙汰されている。ホンダ <7267> が、トヨタと前後して燃料電池車を市販すると報道され、6月24日に閣議決定された安倍内閣の新成長戦略では、燃料自動車を含む次世代自動車の新車販売に占める割合を2030年までに5~7割(2013年23.2%)にアップさせる目標値が盛り込まれたことなどが、この代表である。とくに政策支援は、サイバダインの介護用ロボットと同様に開発支援、補助金交付などがフシ目、フシ目で発動され、材料出尽くしとなるか、後続材料となるか注目されることになる。
こうした周辺材料をリサーチして見極めれば、第1回目の「燃料電池車祭り」のお神輿をかつぎそこなった投資家も、第2回目の「燃料電池車祭り」には余裕を持って対処可能であり、少なくとも隣のおじさん、そのまた隣のおばさんのようには「あとの祭り」とはならないはずだ。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)
美空ひばりが、かつて歌ってヒットした懐メロ『お祭りマンボ』をご存知だろうか?一種のコミック・ソングで、そのストーリー性が、現在の株式市場を象徴しているようで、思わず口ずさんでしまう。
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2014-06-30 14:30