【2014年後半の見通し】野村證券、日銀の追加金融緩和なくても年末1万8000円

野村證券エクイティ・リサーチ部チーフ・ストラテジストの田村浩道氏(写真)は、日銀の追加金融緩和の有無にかかわらず、年末に日経平均株価が1万8000円に達するとの見解を示した。2015年のTOPIX-EPS(1株当たり利益)を100ポイント、PERを15倍とし、TOPIXは1500ポイントまで上昇すると想定。NT倍率は12倍で算出している。
――2014年後半のポイントは?
今年前半は4月の消費税率引き上げで業績の先行き懸念が重しになり、日経平均はボックス相場で動きの鈍い展開が続きましたが、今後は成長戦略や15年3月期第1四半期の決算、GPIF改革、日銀の追加金融緩和期待などが相場を支えていくと思われます。
このなかで特に重要なのは四半期決算でしょう。懸念材料だった消費税引き上げの影響は、97年の消費税引き上げ(3%から5%)の時と比べると業種によっては限定的でした。例えば97年の自動車販売台数は6月までマイナスでしたが、今年は6月にプラスへ転じています。一部の指標は弱い動きが続いていますが、全体として消費が弱かったとは言えず、小売の決算などを見ても順調だったと思われます。
企業側は消費税率引き上げの影響を懸念して期初で保守的な見通しを示しましたが、この懸念が払しょくされるか否かが注目されます。野村証券では第1四半期の時点で経常利益前年同期比10%増を予想しており、(足元では業績の観測報道も多いが)現状の株価水準が織り込んでいるとはみていません。株価は決算をきっかけに急伸するイメージではなく、決算発表を通過してジワジワと上昇していく展開を想定しています。
一方、今後の材料としてあげた日銀の追加金融緩和ですが、これは来年の4月を想定しています。年初は追加金融緩和が今年の4月ごろに発表されるとの見方が多かったのですが、いまもそれは実現しておらず、すでに期待感も薄まっていて、追加緩和がない可能性も指摘され始めました。もし追加緩和がないということになっても、必要性がないほどの経済状態といえますし、相場にとってネガティブではありません。追加緩和が実施されなくても、マーケットへのインパクトはないと考えており、年末に日経平均が1万8000円を試す展開は変わらないと思われます。
――日本株のリスクは?
米国株の下落や米国景気のモメンタム低下、安倍内閣支持率の低下、第3四半期の日本経済の鈍化、成長戦略に対する失望の5点があげられます。このうち、足元では米国株の下落と安倍内閣の支持率低下が懸念されます。米国株は史上最高値圏で推移しており、バリュエーションも高めです。強すぎるとの懸念もあり、米国株が下落すれば日本株の下げ要因になります。
また、内閣支持率の低下は、金融市場に直結する話ではないのですが、集団的自衛権や原発の問題が現在の低迷の一因になっていると考えられます。内閣が想定以上にごたつくようであればアベノミクスへの期待はく落し、日経平均も急落の恐れが生じるでしょう。
――後半にかけて注目の業種は?
マクロ面では金融で、ファンダメンタルズ面では機械など設備投資関連です。
金融株は割安ということもありますが、米景気の回復で年後半には米金利の上昇も見込まれます。日銀の緩和期待が後ずれしていることも考えれば、日本の長期金利も上がりやすくなってくるため、金融機関の収益も改善に向かうと考えています。
ファンダメンタルズでは日本経済の回復を背景に設備投資関連が長期的にも上昇しやすいと思われます。
――下期に上場が予定されているリクルートHDなど大型IPOの影響は?
リーマンショック後に資本が足りなくて無理やり資金を調達してきた時代とは異なります。5月に3000億円超の大型増資を発表した三井不動産も下落したのは一時的で、株価は回復基調にあります。ヒートアップして価格が高くなってしまえば注意しなければならないかもしれませんが、成長企業がIPOで資金を集めて新規投資に役立てるということであれば、望ましい資金のサイクルであり、需給悪化などを必要以上に警戒することもないでしょう。(編集担当:宮川子平)
野村證券エクイティ・リサーチ部チーフ・ストラテジストの田村浩道氏(写真)は、日銀の追加金融緩和の有無にかかわらず、年末に日経平均株価が1万8000円に達するとの見解を示した。
japan,economic
2014-07-25 15:30