DC(確定拠出年金)は知ってるだけで退職準備の資産形成にプラス効果=フィデリティ

 フィデリティ退職・投資教育研究所所長の野尻哲史氏は2014年7月25日、メディア向けの説明会で「勤労者3万人の退職準備状況に関する調査結果を、雇用形態とDC(確定拠出年金)加入の影響について分析したところ、DCについて知っているだけで資産形成と投資には良い効果がありそうなことがわかってきた」と語った。野尻氏が分析に用いたのは、フィデリティ投信が2014年3月27日-4月8日に実施した勤労者3万人調査(回答総数3万2494人)の調査結果。  野尻氏は今回、性別、年代別、正規・非正規雇用、DC加入・非加入、DCについて知っている・知らないなどの切り口で、平均年収と保有金融資産、退職後の生活に向けた準備状況などについて分析した。  調査結果から、女性の平均年収は20代から50代まで各年代を通じて200万円台であった。女性の非正規雇用比率は年代が上がるほどに高まり、20代では43.4%だが、50代では56.8%になっている。男性20代の平均年収は312.9万円だった。  また、雇用形態別(雇用形態は自己申告)に年収と世帯金融資産を調べると、正規雇用会社員の平均年収は477.6万円。非正規雇用では188.2万円だった。公務員は609.5万円。また、世帯の金融資産は、正規雇用会社員が903.8万円(うち、退職後の生活のために準備できている金額は630.9万円)、公務員は1101.9万円(同798.5万円)だったが、非正規雇用会社員は692.6万円(同376.8万円)だった。  そして、雇用形態別に定年後の資産形成として行っていることを聞くと、非正規雇用の会社員は58.5%が「特に何もしていない」という。このような結果から、「非正規雇用の会社員は、年収が低く、資産の残高も少ない中、退職後の準備も遅れが目立つ」(野尻氏)という実態がわかった。退職後の準備については、公務員は「積極的に貯蓄をしている」という回答が20.1%(正規雇用会社員では16.0%)、「できる範囲で貯蓄している」が33.1%(同30.0%)と積極的に貯蓄に取り組む姿勢が目立った。  一方、DCへの加入状況と退職準備の進捗という視点で分析すると、非正規雇用で企業型DC加入者の平均保有金融資産残高は798.1万円、また、個人型DC加入者は1055.0万円の金融資産があり、正規雇用でDC非加入者の608.4万円を上回る結果になった。さらに、DCについて知っている人と知らない人の平均保有資産残高を調べると、知っている人の残高は1293.1万円で、知らない人(695.4万円)を大幅に上回った。  調査によると、DCに加入しているのは全体の18.0%、非加入が82.0%。DCについて「知っている」は31.6%、「知らない」は68.3%という回答だった。  野尻氏は、「DCに加入していなくても、知っているだけで、保有金融資産残高は大きくなり、NISA(少額投資非課税制度)口座開設率、投資を行っているという回答者比率も高くなっている。DCを知っているだけで、資産形成と投資には良い効果がありそうだ」と調査結果を読み解いている。  このような調査結果の分析に基づいてフィデリティ投信では「若年層向けの包括的なDCマーケティングに力を入れていく」(執行役法人/年金ビジネス本部長の小泉徹也氏)としている。DCについての認知度を高めることが資産運用ビジネスの望ましい発展に寄与するとの判断からだ。既に「Think老後」をスローガンにした若年層向けのコミュニケーションを開始。「DCマーケティングは、これまでも継続的に取り組んできている。今回、若年層に近い場面での情報提供や意見交換に注力することで、NISA制度の施行で高まっている投資への関心からDCへの興味喚起へとつなげていきたい」としている。(取材・編集担当:徳永浩)
フィデリティ退職・投資教育研究所所長の野尻哲史氏は2014年7月25日、メディア向けの説明会で「DCについて知っているだけで資産形成と投資には良い効果がありそうなことがわかってきた」と語った。
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2014-07-25 18:00