エストラストは下値支持線に接近して反発のタイミング
山口県や福岡県を中心に展開する不動産デベロッパーのエストラスト <3280> (東マ)の株価は、7月10日発表の第1四半期(3月~5月)業績を嫌気する形で水準を600円台後半に切り下げた。消費増税の反動影響が警戒されているようだ。ただし7月25日発表の新株式発行・売出しによる希薄化懸念に対する反応は限定的のようだ。今期(15年2月期)の分譲マンション契約進捗率は高水準のため業績面の不安は小さい。600円台半ばの下値支持線に接近して反発のタイミングだろう。8月15日予定の市場変更も支援材料だ。
山口県および福岡県を地盤とする不動産デベロッパーである。一次取得ファミリー型の新築分譲マンション「オーヴィジョン」シリーズ、および新築戸建住宅「オーヴィジョンホーム」の不動産分譲事業を主力として、連結子会社トラストコミュニティが展開する「オーヴィジョン」マンション管理受託の不動産管理事業や不動産賃貸事業も強化している。
九州・山口エリアでのNO.1デベロッパーを目指し、福岡県および九州主要都市への進出加速、九州・山口エリアでのマンション年間供給500戸体制構築、山口県での戸建住宅年間供給100戸体制の構築、ストック型ビジネスとなる建物管理受託戸数の拡大、優良賃貸物件のポートフォリオ構築などを推進している。
重点エリアである福岡県での事業展開加速に向けて、13年6月には第三者割当増資によって、ふくおかフィナンシャルグループ <8354> 傘下の福岡銀行との関係を強化した。また14年3月には、山口県内最大のオフィス街に立地する下関第一生命ビルディング(山口県下関市)を取得した。優良賃貸物件のポートフォリオ構築で事業収益を向上させる方針だ。
7月10日に発表した今期(15年2月期)第1四半期(3月~5月)の連結業績は、売上高が前年同期比75.9%減の3億60百万円、営業利益が2億12百万円の赤字(前年同期は11百万円の黒字)、経常利益が2億88百万円の赤字(同12百万円の赤字)、純利益が1億77百万円の赤字(同12百万円の赤字)だった。分譲マンションの竣工がなかったため、前年同期との比較で大幅減収となり、営業赤字だった。
通期の連結業績見通しは前回予想(4月10日公表)を据え置いて売上高が前期比16.7%増の120億円、営業利益が同11.1%増の10億90百万円、経常利益が同9.0%増の9億70百万円、純利益が同10.4%増の6億円としている。
第1四半期は分譲マンションの竣工がなかったため大幅減収だが、通期ベースで見れば分譲マンション総引き渡し予定戸数430戸(前期比56戸増)に対して、第1四半期末時点での契約締結は395戸、契約進捗率は91.9%に達している。分譲戸建住宅は42戸(同25戸増)の引き渡しを計画し、不動産管理事業のマンション管理戸数(期末)は2139戸(同429戸増)の計画だ。
消費増税後の反動影響については、新税率適用の13年10月~12月に契約がやや落ち込んだが、14年1月以降は順調に回復しているようだ。反動影響は限定的だろう。通期ベースでは分譲マンション・戸建住宅の引き渡しが順調に進み、プロジェクト先行費用などを吸収して経常最高益更新の見込みだ。不動産管理事業の管理戸数増加や、不動産賃貸事業のポートフォリオ充実も寄与して好業績が期待される。
中期経営計画では目標値として16年2月期の新築分譲マンション引き渡し戸数494戸、売上高130億円、営業利益12億50百万円、経常利益12億円、純利益7億20百万円を掲げている。事業展開の重点エリアとしている福岡市は13年5月に人口が150万人を突破した。国家戦略特区に指定されたこともあり、さらに人口増加傾向を強めることが予想される。成長市場への事業展開を加速して中期的に収益拡大基調だろう。
なお7月25日に、東証1部市場または東証2部市場への市場変更、配当予想の増額修正、新株式発行および売出しを発表した。東京証券取引所の承認により、8月15日付で東証1部市場または東証2部市場へ市場変更する。
配当予想については、東証1部市場または東証2部市場への市場変更記念配当2円を第2四半期末の中間配当で実施する。年間ベースでは前回予想から2円増額の年間10円(第2四半期末4円、期末6円)となり、前期との比較では2円増配となる。
新株式発行・売出しについては、公募による新株式発行(一般募集)100万株、オーバーアロットメントによる売出し15万株で、発行価格決定日は8月4日から8月6日までの間のいずれかの日としている。今回の新株式発行・売出しで発行済株式総数は最大で22.9%増加する。調達資金(手取概算額上限)6億96百万円は新築分譲マンションプロジェクトおよび新築分譲戸建の事業用地取得・建設代金に充当する。
株価の動きを見ると、概ね700円台前半の小幅レンジでモミ合う展開だったが、第1四半期業績を嫌気する形で水準を600円台後半に切り下げた。依然として消費増税の反動影響が警戒されているようだ。ただし7月25日発表の新株式発行・売出しによる希薄化懸念に対する反応は限定的のようだ。7月28日は665円まで売られる場面があったが、終値では680円に戻した。5月21日の年初来安値646円水準まで下押す動きは見られず、売り一巡感を強めている。
7月30日の終値678円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS119円60銭で算出)は5~6倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.5%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS420円19銭で算出)は1.6倍近辺である。週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形だが、600円台半ばの下値支持線に接近して反発のタイミングだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
山口県や福岡県を中心に展開する不動産デベロッパーのエストラスト<3280>(東マ)の株価は、7月10日発表の第1四半期(3月~5月)業績を嫌気する形で水準を600円台後半に切り下げた。
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2014-07-31 09:00