中国で企業が経営範囲を超えて締結した契約の効力について

 中国において、企業は原則として登録している経営範囲内において経営活動に従事し、対外取引を行わなければならない。しかし、実務上では、企業がある程度経営範囲を超えた取引を行っている現象が多く見られる。では、企業が取引先と経営範囲を超えた契約を締結した場合、果たして当該契約の法的効力は認められるだろうか。  経営範囲を超えて締結された契約の効力は、有効又は無効の可能性が共にある。その契約に規定された業務に関連しているため、一概に言うことはできない。契約ごとに分析を行い、異なる状況に応じて、その法的効力の有無を判定すべきとなる。  「最高人民法院(中国最高裁)による『中国人民共和国契約法』の適用に伴う若干の問題に関する解釈」の第10条においては、以下のとおり規定されている。 **********  当事者が経営範囲を超えて契約を締結した場合、人民法院は、これによる当該契約の無効性の認定を行わない。ただし、国の制限に違反した経営、フランチャイズ経営及び法律又は行政法規により禁止されている経営を行っていた場合は、この限りでない。  この規定に基づき、経営範囲を超えて締結された契約は、主に有効と無効の2とおりの状況に分けられれる。 **********  上述の規定によると、企業は経営範囲を超えた契約を締結しても、国の制限に違反した経営、フランチャイズ経営又は法律若しくは行政法規により禁止されている経営を行っていない限り、その契約は有効となる。  例えば、A社をアパレル卸売業への従事が可能な一般的な貿易会社とし、B社へコンサルティングサービスを提供し、同社と「コンサルティングサービス契約」を締結したと仮定する。  A社は契約書中において、自社の従業員をB社へ派遣して行う被服の生産及び販売の指導、並びにそのコンサルティング料金を約定した場合、自らの経営範囲を超えていたとしても、国の制限に違反する経営、フランチャイズ経営又は法律若しくは行政法規により禁止されている経営は、行ってはいないため、この契約は有効となる。  一方、企業が経営範囲を超えて締結し、かつ、国の制限に違反した経営、フランチャイズ経営又は法律若しくは行政法規により禁止されている経営を行う場合の契約は、無効となる。  例えば、かんがい産業、エネルギー産業、交通・運輸業、電気通信産業、郵便事業等の情報産業、鉄鋼業、非鉄金属等の原材料産業、自動車・路面電車等機械の製造業、たばこ産業、都市建設業、教育産業、衛生産業などの、国民の生活、国の経済、国益及び公益に密接にかかわっている事業は、国の制限の対象となる経営に属しており、これらへの従事の際は、特定の厳格な承認審査を経る必要がある。企業が許可を取得せずして、これらの経営を行った場合、関連する契約は無効となる。  例えば、A社を、アパレルの卸売業への従事が可能な一般的な貿易会社とし、たばこをB社へ販売し、B社と「たばこ売買契約」を交わしたと仮定する。このとき、A社は自らの経営範囲を超えており、かつ、国の制限に違反する経営を行っているため、契約を締結しても無効となる。(執筆者:賈 剛 提供:中国ビジネスヘッドライン)
中国において、原則として企業は登録している経営範囲内において経営活動に従事し、対外取引を行わなければならない。しかし、実務上では、企業がある程度経営範囲を超えた取引を行っている現象は多く見られる。では、企業が取引先と経営範囲を超えた契約を締結した場合、果たして当該契約の法的効力は認められるだろうか。
china,column
2014-07-31 09:30